表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-【幻想巡りのネコと弟子】-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

234/525

第六話、手作り温泉

「先生! モンスターの群れですよ! 倒したい放題です!」


 幌車を連れ、海沿いの道を歩いていると、向こうの脇の森からモンスターたちの群れが飛び出してくる。銀髪の少女はそれを、まるでデザートの山でも前にしたかのように、目を輝かせて指さしている。


「ヒメトラ、出番だよ」


「この中でわたしじゃないでしょ」


 キョウゲツはヒメトラを繰り出した! しかしヒメトラはボールから出てこなかった……。


「先生、私行ってきていいですか?」


 と、銀髪の少女がうずうずと体をさせながら俺に聞いてくる。砂浜の上を走っている、敵の数は十二、全員同種、サイズは中型。めんどくさいなぁ……。


「まぁいいか。やっちゃおう」



「おつかれさまですー」


 討伐を終えて帰ってくると、和装の娘が幌車の端に座って、こちらへひらひらと手を振ってくる。ぴょんと、彼女はそこを跳ねて、荷物を漁りこちらへと、いや、ツバキの方へと歩いてくる。


「ツバキー、これ食べますー?」


「これ? これはなんだ?」


「運動後に良いお菓子ですー」


 ツバキはヒメトラから差し出されたそれを、促されるままに一粒摘まみ口に入れている。


「すっぱ……」


 銀髪の少女は分かりやすく額に皺を寄せる。ヒメトラはけらけらとそれを見て笑っている。それを見てツバキがまた顔をしかめる。


「でしょー? この酸っぱいのが疲労に効くんですよー」


「おみず……」


「はいはい、お水ですねー」


 と、ヒメトラに渡された水筒をごくごくと彼女は飲んでいる。ヒメトラはツバキの反応を面白がって見ている。


「ごしゅじんさまも要りますかー?」


「いいの? じゃあ俺も一つ貰おうかな」


 と、彼女が俺にも差し出してくる、小さな袋の中には、ラムネみたいな、白いタブレットがころころ入っている。一つ取って匂いを嗅ぐ、柑橘系の強い匂い。口に入れ、舌に乗せ、噛み砕くと、それはしゅわしゅわと泡立ち、途端に強い酸味が効いてくる。


「すっぱぁ……」


「あはは、ごしゅじんさま変なかおー」



「二人ともだいぶ汗かきましたねー。今日は早めに体流した方がいいんじゃないですかー?」


 浜の森の手前に幌車を止める、日はもうすぐ沈みゆくところ。周囲は薄暗く、風の向きが変わり、砂浜から見えている森の木々がゆっくりとざわめいている。潮の音は絶えず鳴っている。


「そうだな。近くに海水もあるし、適当に貯めてお風呂にするか」


「お風呂?」


 俺たちは協力して、波の届かないところに穴を掘った。掘っても掘っても砂が出てくる。穴の上から広めの防水シートを広げる。バケツを使って浜と穴とを往復、穴に水を貯めていく。水が溜まったら後は“炎”の魔石と燃料用の魔石で水を温めていく。


 そのうち地面に湯舟が出来た。


 と、穴の脇でぽいぽいとツバキが服を脱ぎ捨てている。


「おおおおおつつつツバキ何してるんだ」


「……? 何って、今から風呂に入るんだろう? 普通の水に濡れたら、服は簡単に乾かない」


「ひひ人前でそんな肌を簡単に見せてはいけません!」


「心配しなくても下着は脱がない。露出は水着と一緒だろう、ちょうどそこも海だ。それに、ほかに誰も見てない」


 と、彼女はさっさと地面の穴の水の中に足を入れていく。ふぅと、背中を見せて彼女はひと心地。ぜんぜんちょうど海じゃないが? 誰も見てないって俺がここに居るんですけど! おお俺か? 俺が反応しすぎなのか?


 俺は料理の準備をしているヒメトラの脇に寄り、こしょこしょと話しかける。


「ひ、ヒメトラ……俺はどこまで脱ぐべき……?」


「知りませんよそんなの。適当に目の毒にならない程度に脱いでください」


 俺は迷ったが、確かに厚地のズボンなどは濡れると乾かすのが面倒だ。洗う時は“魔法水”で洗うからすぐに乾くが、これを海水に漬けると洗濯が面倒だろう。


 俺も彼女にならい、下着以外を脱いで、そろそろと彼女の隣に入っていく。温かい、じんわりと温度が肌の表面から伝わってくる。俺は不格好な穴に沿って座り、体をお湯の中へと沈めていく。海水だが、出る時に“魔法水”で流せばべたつきは残らないだろう。


「先生はそういう下着なんだな」


 ぎょっとしてそちらを見れば、俺はそちらを見ないようにしていたのに、ツバキは俺の体を見ている。ガン見。


「入浴中に人の体をじろじろと見るのは失礼ですよツバキちゃん」


「これも勉強だ。先生は、ごりごりの筋肉の塊ってわけでもないのに、先生の一撃は重い。どこの筋肉を使ってるんだ?」


 そういう興味か。確かに、どこの筋肉使ってるんだろうな。別に、筋トレとかしてるわけじゃないけど。筋肉の伸ばし方……。


「それはまぁ、体の使い方と、あとは体幹じゃないかな」


 筋トレとかはあまりしてないが、冒険者は山道を登ったり、人の道でないハードな道を進んだりする。得た重い成果を背中に背負ったまま、そこらを走り回ったりもする。体は依頼で勝手に鍛えられている。というか、武器用の筋トレとかは面倒なのでしてない。


「体幹? どこ?」


「体の内側の、姿勢を支えるための筋肉……お、おい近づくな、触ろうとするな」


 湯を乱し、屈んでこちらに迫ろうとしていたツバキを手で制止する。


「しかし先生、確かめてみないと分からない。先生の体を触るのがだめなら、じゃあ、私の体のどこに当たるのか教えて」


「俺だって人体の先生じゃないし、詳しいことは分からないから」


「大体で良いから」


「わ、分からないから!」


 むぅと、彼女は不満げな顔をして、向こう側の壁に背中を戻して付けた。


 少しの乱れがあったが、温かいお湯が俺たちの体をほぐしていく。歩き通しで疲れた足も、流した汗も、緊張した心も、闘争の疲労も、温かいお湯の中にみんな溶けていく。


 風が吹いていた。日は落ちて、夕焼けの光ももうすぐ消えるだろう。張られたお湯は、水面が静かに風に揺れている。


「そろそろ上がろう」


 と、ざばんと彼女が立ち上がった。俺は咄嗟に目を瞑った。


「……どうした? 先生。まだ慣れないのか?」


「……早く乾かして服を着なさい」


 俺に言われて、彼女は自分の体を見直したらしい。


「なるほど。普通の服は水に濡れることを想定していないから、水に濡れると透けるし、張り付いて体の形が浮き出―」


「早くして!」

カイギュウ

 海辺近くで見られる、真っ黒な大型の牛。頭部には立派な角があり、通常群れで生活している。泳ぎが得意であり、また海水に潜れるため、諸島などでも生息域を広げている。獰猛な性格のため家畜には向かない。泳げるとはいえ、水上での戦闘は不利なので、海上で船とすれ違う時はにこやかな顔をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ