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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-【幻想巡りのネコと弟子】-

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第五話、浜辺で稽古

「先生、私に武器の稽古を付けて欲しいです」



 きらきらと隣には海が輝いている。砂浜の上に、乱雑に激しい音が鳴っている、足音に合わせて砂が飛び上がる。


「先生がケガしないように殺す気で来てねー」


「先生っ、どっちも難しいですっ」


 銀髪の少女は、長い棒を槍のように構えてこちらへと向かってくる。俺の手には、彼女より太めで短めの木の棒が握られている。俺は突き出された槍を掴んで手前に引っ張り、そのままよろけて突っ込んできた彼女の首の下に、木の棒を添える。


「はい終わり」


 はぁ、はぁと、ツバキは取られた槍を構えたまま、肩で息をしている。その体が徐々に屈んでいって、こつんと、俺が構えた棒に、降りた彼女の喉が当たった。


「まだ足腰が出来てないねー、砂に足を取られて上体がふわふわ」


 ツバキは長い棒を手放し白い砂浜の上にそれを置いた。両ひざに手を付きながら息をして、徐々にその息が整っていく。


「どうすれば……いいでしょうか」


「どうだろうね。そもそもツバキは小柄で体重が軽いし。武器の一撃もあんまり怖くない。まぁ武器がただの木の棒なのはそうなんだけど……」


 これは、ツバキがまだ子供だからという理由だからだろうか? ツバキが大きくなったら、体がでかくなってその一撃は強くなる? 彼女は技術的な部分を鍛えたいのだろうか? 先生は考えることがいっぱい……子供は可能性の塊だ。まぁ、俺が今思い付く選択肢を彼女に示そう。


「ツバキは、自分の体を動かす筋肉は足りてるんだけど、攻撃の威力を高めるような重い体がないね。なら、これからより強靭に筋肉に鍛えるか、あるいは火力は武器の性能に頼って、自分は技術を伸ばすか……あとは、足元に重りでも巻いてみる?」


「重り、ですか?」


「俺と体重の押し合いしても、簡単に押されちゃうでしょ。体を重くしたら少しはましになるかな」


 俺は、草の上に停めてある幌車に戻って、中から荷物を漁る。ちょうどいいのは今手持ちにないが、金属のインゴッドと“錬金”の魔石があったので、適当に輪っか型に成型して量産する。


「先生、何作ってるんですか?」


 砂浜の上、屈みこんで、オレンジの魔石を握って砂の上でインゴッドをこねこねしていると、隣から銀髪の少女がのぞき込んでくる。今しがた激しく動いていたので多少服が汗ばんでいる。彼女の濡れた銀髪が隣に垂れる。


「いったん休憩してきな。水とか飲んでていいよ」


「では、いただいてきます」


 俺はわっか型の金属重りをいくつか作った。


「これを、足に通してみて。動きやすい、好みの量でいいよ」


 ツバキは、砂の上の金属輪の一つを手に取り、興味深そうにそれを眺めている。やがて、彼女は靴を脱いでそれに足を通し、俺は連なったそれらを、白い布で結んで彼女の足に固定した。


「こんなもんかな。動ける?」


 ツバキは、かかとを後ろに上げて、変わった体の調子を確かめているようだった。


「このまま蹴ったら強そうですね」


「格闘家でも目指してみる?」


「いえ」


 俺たちは幌車の近くを離れ、再び砂浜の上へ。隣で絶えず波が打ち、押し寄せては引いていく。明るい海、青空の下、潮風が吹く。波の音がする。


「俺からはいかないから、そっちから掛かって来ていいよ」


「お願いします」


 ツバキは順応が早い、素早い踏み込み、重い足が地面を貫いた、そのまま素早く槍先が俺の体へと突き出される。


「さっきより速くなったけど……上手く腕まで重さが伝わってない」


 俺は彼女の棒先を、こっちの棒で軽くいなしながら彼女の動きを眺める。


「修練不足ですかっ……?」


「かもね。腕にも重りを付けるか、筋肉が足りてないか、動きが足りてないか」


 と、見ているうちに徐々に彼女の動きが良くなっていく。彼女の長い棒の先が、俺の木の棒の側面を打った。べきょ、と、彼女の方の棒が折れた。俺の持ってるものは太く、彼女のそれは長くて細かったから、まぁ当然。


「あ……折れちゃいました。……これからだったのに」


 はぁ、はぁと、彼女は息をしながら、折れて砂の上に落ちた棒の先を眺めている。


「でも、良くなってたね動き」


「本当ですか?」


「ほんとほんと。動きも速くなってたし、一撃も重くなってた。ただ、踵だけだとバランスが悪いから、腰あたりと、あと武器の重さも重くしたいかな」


「そんなに色々付けたら、もう私じゃないみたいですね」


「まぁちっちゃい女の子が同じように戦うにはね。重り付けてたとこは? 擦れてない? ちょっと見せてみて」


 彼女が足をずらして、その輪っかが付けてる所を持ち上げて見せてくる。彼女の白い太ももの素肌がある。今のところ赤くなっているような跡は見られない。


「大丈夫そうかな。ツバキ自身は? 痛いとか感じてない?」


「先生は、私のことを心配しすぎです。これでも冒険者ですよ。これくらい何ともありません」


 と、ツバキは若干不満げな顔をしながら、しゃがんだ俺の顔を見下ろしている。彼女の顔は太陽の陰になっていて、また、俺の体は彼女の日陰に入っている。俺は立ち上がって続きを言う。


「言うほど人間の体は丈夫じゃないよ。それより、この重りは気に入った? 気に入ったなら、もうちょっと丁寧に作るか……あるいは近くに鍛冶屋があれば、ちゃんとしたものを作ってくれるかもね」


「これで大丈夫です、先生。ずっと使うかは分かりませんが、しばらく付けながら試してみたいです」


「ほんと? じゃあ腰に巻き付けるようなタイプも作るか。あと、練習用の棒にも金属混ぜて重くして……」


 俺たちは白い砂浜の上、汗を流しながら棒を打ち合った。

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