第二話、狩り狩りクエスト ーII
雑木林の中を歩いていると、真っ白なヘビはすぐ見つかった。氷の魔法を飛ばしてその場に縫い付け、一撃で頭を切り落とす。モンスターは星の粒子となって消えていく。少し可哀そうだが、こいつの存在自体が厄介を引き起こすからな……。俺は、斜面に落ちた白いヘビ皮と、大ぶりの透明な石を拾う。
「先生! 速い!」
「もう終わったぞー」
「私の分は!」
小さなヘビだぞ。分け合えるほどの体力ないだろ。銀髪の少女とネコが、遅れて背後の林の中から追い着いた。
「次はツチノコだな」
「そっちは私がやる!」
やる気があるねぇ。まぁ任せてもいいか、デスツチノコの体内の毒性は強いが、幸い表面を手で触れたくらいでは問題ない。ただ素早いからな、ツバキに捕らえられるか。まぁ追いかけ続ければどっちかがバテるか。
「ヒメトラ、近くにモンスターは居る?」
「検索結果はゼロ件です」
どこから仕入れてくるんだよその言い回し。
「じゃあ、目撃のあった方、行ってみるか。足が速いし、あんまり狭い場所に留まってはいないかもだけど」
俺たちは、山林の上を歩いて移動していく。
落ち葉に染まった地面、茜の葉を付けた木々の下を、俺たちは歩いていく。この世界には龍脈という不思議な力が流れており、これらは放っておくと無機物にも作用する。世界にはいろんな龍脈が流れ、不規則に世界を改変し、そのせいで、地上の気候や環境は、隣接する地域でも不連続でぐちゃぐちゃである。
「ぴぴぴ、モンスター、ぴぴぴ、モンスター」
落ち葉の上を歩いていくと、意外にも早くヒメトラからの反応があった。
「発見報告の仕方で遊んでないかお前」
「モンスターを発見した時の音声を設定してください」
「はいはい、後で一緒に考えようねー」
俺は今はツバキからネコを受け取り、ネコを抱えて銀髪の少女の後ろを付いていく。
「あ! 居た!」
ツバキが声を上げた、視界の端に紫色の影が一瞬よぎる。思ったより素早いな。銀髪の少女は、それを見た瞬間一目散に走っていく。
「追うことに気を取られすぎないよー、周りを見ながら……」
もう聞いてなさそうだな。俺はツバキの後ろを走って付いていく。
目まぐるしく周囲の景色が移り変わっていく。木々の根っこが自由に根を張り、石も気兼ねなく落ちているので少しでも気を抜くと足を取られてこけそうだ。木々の上に見える空は白く明るい。
ツバキは運動神経が良く、悪路も特に気にせずすいすいと地上を走って駆けていく。
「先生! なんか変なとこ入った!」
と、ツバキは少し先の地面で立ち止まっていた。彼女の見下ろす視線の先には、地面を横たわる根っこの下に、暗く小さめの穴が空いている。今、奴が掘った穴か、それともほかの自然生物が掘った穴か。
「先生! どうすればいい!」
「俺がやっていいのー?」
「だめ! 教えるだけ!」
「俺なら、“雷”の魔法でも適当に撃ち込むけど」
ツバキはどれくらい魔法の属性を取っていたっけ。天使の魔法と、彼女の武器の属性の“氷”、ほかに彼女が魔法を使っているところは見たことがないな。“氷”では、引きこもった穴にヘビを出せないだろう。
「……先生、爆弾」
魔法、使えなかったか。
「持ってないねー」
「……出すだけ出して」
お、自分が出来ない所を素直に他人に頼るのはいいね。
「その穴でいいの?」
「うん。確かにここに入っていくのを見た」
俺は、地面の小さな洞穴に向けて、手の平を構える、威力は控えめでいい。
「“ライトニング”」
俺の手からか細い電流が生み出され、それは一瞬で空気を走り穴の中へと飛び込んだ。
ぼふっ、と、背後から音がして、見ればそちらにも穴があったようだ、背後の地面の穴から白煙が漏れ出している。おそらく地中で目の前の穴と繋がっていたのだろう、ということは。
「あ! あっちに逃げてる!」
と、ツバキはまた何かを見つけ一目散に走っていく。俺は後を追いながら手元のネコに問いかける。
「ヒメトラ、周囲のモンスターの気配は一つ?」
「一件の検索結果がヒットしました」
その言い方気に入ったのか? でも微妙に冗長だし後で矯正しよう。ツチノコが周囲に複数居るパターンは、とりあえず無さそうかな。
導器
魔力を通して魔法を帯びさせることの出来る金属製の器。主に武器の形をしており、杖を始め、剣や斧、銃型のものなどいろいろなものがある。魔力の属性の変換器を兼ねており、魔力を通すと導器の属性のものに変化する。
クミテガエル
組み手の好きな、人ほどの大きさのカエル。知能はあるが話が通じず、誰彼構わず投げ飛ばす。相手が弱くても勝ったら喜ぶ。負けた時は地面を叩いて悔しがる。
デスツチノコ
丸々と太った短めの紫の蛇。体内に強い毒を持つが、牙にはなく、噛まれても(毒は)問題ない。人間が怖いので、太った体ですぐ逃げる。ネズミなどが大好物。自分より弱い生き物には強気。
コンゴウヘビ
首の下に小さな金剛石を付けた白い蛇。宝石は蛇の体表で徐々に大きく育っていき、石は取り外しても死ぬことはないが、大事に育てたその宝石を蛇から取り上げると蛇はブチぎれる。




