旅立ちの準備
「転移剣って、こっち側にいる間にこっちに呼び戻せないの?」
ここはギルドハウス。今日はミナモさんがここに居り、ちょうどいいので彼女に頼みごとをする。
「いいけど、呼び戻していいの? 苦労して海の向こうに持ってったんじゃないの?」
「もうすぐ、また旅に出ようかと思っててね。ワカナも、旅に出て、しばらくこっちには来ないみたいだし」
「ふーん?」と、ミナモさんは部屋の隅に置いてある魔法陣の布の所まで歩いていき、そこにずぼっと手を入れる、手を光る魔法陣から抜くと、そこには、音叉のような刃の中心がない剣が握られている。そういう使い方出来るんだ。
ん、と、彼女はそれを俺に差し出してくる。
「また旅に出るんだ」
「そうだね」
「最近先生のとこで色々してたみたいだけど、それはもういいの?」
「うん。もういいって言うか、俺が預かった」
「ふーん?」と、彼女は分かったような分かってないような声を上げて、俺のことを見ている。
「あ、ツバキだ。ヒメトラも一緒だね、いらっしゃーい」
ギルドハウスで荷物の整理をしていると、頭に小さなトラをのっけて、ツバキがギルドハウスに現れた。ぱたんと、彼女の後ろで扉が閉まる。
「先生は忙しないな。なんかの準備をしているのか?」
「うん。旅に出ようかと思ってね。ツバキも付いて来る?」
「行く」
判断が早い。まぁ、付いて来た所で、いつ離れてもいいし。
「私は最近気づいた。強い人に媚を売り、その人にくっ付き歩いて行くのが強くなる一番近道だと」
「それで俺に目を付けたのか、ツバキは見る目があるなぁ」
「先生はちょろくて優しいからな」
お、なんだぁ? 俺はツバキの両頬を挟んでぐりぐりとやっていると、澄ました顔の少女は、俺の顔を見上げたまま、なすがままにされている。
「先生は、これからは私の面倒を見てくれるのか?」
「気が向いたらな。見て学びなさい」
「まぁ先生はなんだかんだ言って私の言うことは聞いてくれるからな」
こいつ……完全に俺のことを舐め始めてるな……まぁいいか。
「ヒメトラは? 一緒に来る?」
と、話し掛けると、ツバキの頭にくっ付いているネコが喋る。
「行ってから考えます。危険な場所に近づくといつの間にか居ません」
「そうか。まぁ自由にしなー」
砂漠で拾ってから、なんだかんだヒメトラは近くに居続けている。人間界が気に入ったのだろうか。
「旅って、どこに行くんだ?」
「うん? 強くなる旅だよ」
「あては?」
「無いかも」
ここまで読んでいただきありがとうございます! これからもよろしくお願いします!
!!次章予告!!
“幻想の鍵”と呼ばれる青年が、世界を巡って旅をする。世界を救う力を探すため、噂を聞いては東奔西走。旅のお供に、自分を慕う生徒が一人、ペットが一匹。しかし、あてもなく旅をしていれば、音もなく、どこからか厄介ごとがやってくる。彼らが言うには、どうやら“幻想の鍵”に用があるらしく―
※イメージです。




