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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep4.蟻の神兵

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閑話、お茶会

 アリの“神性”の騒動後、俺は反動からか、三週間ほど寝ながら過ごしていた。ヒメトラは「ご主人様がずっと家に居る!」と喜んでいたが、さすがにずっと寝てばかりいては体が鈍る。俺はそろそろ起き出すかと、ヒメトラに(物理的に)体を引っ張られながら、部屋を抜け出した。


 前までは……そう、対人を鍛えようと思っていたのだ。今日はどうするか……闘技場にでも行くかな。俺はそんなことを考えながら、都市ホワイトベルの宿屋を出て、同じ都市の中にあるギルドハウスへと顔を出す。


「おや?」


 と、ギルドハウスの建物の前には、見知ったくせっ毛の赤髪が立っていた。


「アルミラ? どうしてここに?」


「遊びに来ちゃいました」


 そう言って、彼女は、にひっと、いたずらっぽく笑顔を浮かべる。



「へー? 対人戦闘の経験を積みたい、ですか」


 中はごちゃっとしていて他人を入れられたものではないので、俺は近くのカフェに招待して、彼女と話をする。


 暗く落ち着いた喫茶店。暗い室内からは、窓の外の通りが明るく映る。俺たちはケーキやお茶を頼み、席に座ってそれを突いている。話している内に、議題が俺の最近の悩みに移る。


「私がいろいろと、教えて差し上げましょうか?」


 手取り足取り、と、赤毛の少女は手をわきわきとさせている。


「いらない。それより、初心者ってどこで戦ってんの?」


「面白くない反応ですね。私のような強者と関わる機会は貴重なんですよ?」


 だって絶対ぼこぼこにしてくるじゃん。今は勝てる場所に行きたいんだよ、勝率は半々でもいいから。と、俺の問いに「ふむ……」と、彼女は考えている。


「普通は、最初は同期とかと揉み合うものじゃないですか? 居ません? キョウゲツくんには、そういう相手」


「居るけど……あんまり、知り合いの顔に手を出せなくて」


「向いてないんじゃないですか? そもそも、対人戦。人と戦えなくても、対モンスターの仕事はたくさんありますよ。無理にそちらの能力を身に着ける必要はありません」


 と、俺の話を聞いて彼女はバッサリとそう切り捨てる。


「……なんか、人同士で楽しく試合! みたいなのは無いの?」


「あるにはありますが、結局やることは、魔王軍の人型相手なんかを想定した、実戦形式の模擬戦闘です。鍛えれば、いつかその刃は模擬でない相手の元へ向けることになるでしょう。その覚悟がないのなら、最初から鍛える必要なんてないです」


 人を斬れないなら人を斬る剣を鍛える必要はない、か。確かにその通りだが。


「……対人でも、相手を殺さない、制圧とか捕縛とか、あるじゃん」


「技能が相手を上回れば、その余裕でそういった選択肢を取れる、ですね。最初から不殺を縛っているときついですよ。相手はこっちを殺しに来る時、それでもキョウゲツくんは手加減しながら戦えますか? 自分が死ぬことになっても?」


 アルミラは、ケーキを片手間に頬張りながら話してくれる。ケーキが小さく崩され、それが彼女の小さな口に吸い込まれていく。ついじっと見ていてしまったのか、「あまり人が食べてるところを見ないでください」と諭された。絵面のわりに物騒な話をしている。


「人を相手にしたくない甘ちゃんは、モンスター相手の冒険者とかの方が向いていますよ。今は戦時中でもないですし、あなたが無理にそうなる必要はありません」


「……アルミラは、俺が“そっち側”に行くことに消極的だね」


「私は事実を言っているだけです。あなたの能力に一部不都合があるだけ」


 彼女は、唇に付いたクリームを、舌でぺろりと舐め取る。


「ごちそうさまでした。いいんですか? ほんとうに、奢ってもらっても」


「うん。ただのお茶の席くらい俺が出すよ。アルミラが会いに来てくれて俺は嬉しかったし、有意義な話もしてもらったしね」


「ふん。私としては、もっと下心を見せて動いてくれた方が、嬉しいんですけどね」


 と、彼女は小さく舌をのぞかせながら、俺を咎めるようにそう言ってくる。


「下心? 向上心とかじゃだめ?」


「だめです」


 下心って何すんの?


「……この場は俺が払う代わりに、アルミラの下着の色を教えてもらおうか」


「へたくそですね……それしかないんですか?」


 アルミラは、ごみでも見るかのような目で俺を見てくる。


「……じゃ、じゃあ……チュー……とか?」


「お茶代一つでしてあげるほど、私は安い女じゃないですよ」


「いくら?」


「いくらとかじゃないです」


 はぁ、と、彼女は諦めたように息を吐いた。


「まぁいいです。多少は暇つぶしになりましたし。今日はこれで良しとしましょう」


「かたじけない」


「どこの言葉ですか?」


「アルミラは、もう帰るの?」


「おや、この後の私をどこかに誘いますか? キョウゲツくん」


 席を立ちあがった彼女は、テーブルに片手を付いて身を乗り出し、にひと、試すような表情で俺を見下ろしてくる。


「じゃあ闘技場に」


「はい不正解」


 アルミラは気に食わなかったのか俺の脛あたりをげしげしと蹴ってくる。


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