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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep4.蟻の神兵

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-5.会敵2

「ミナモさん、俺は先に帰るね! 俺がこんな所に残っていても出来ることはないし!」


 ミナモさんは、胡乱な目で俺のことを見つめている。


「そんなだから勇者やめさせられるんだよ」


「だまれ」


 俺はテントのある広場を抜け出し、迂回して、ミズノ先輩と別れた地点へと向かう。



 雨が降ってもいないのに、そこはひどく濡れてぬかるんでいた。彼女は泥の真ん中で、五体のアリに囲まれている。


 森の中で彼女の姿を見つけた。ミズノ先輩は、変わらず同じ場所で戦い続けていた。今も、無感情なアリどもに囲まれ、それらすべてを牽制しながら引き付け、戦い続けている。白い服や銀の鎧も彼女の顔も、泥だらけになって汚れていたが、彼女は五体満足で大剣を握って、戦いの真ん中に立っていた。


 受付の人の評価通り、ミズノ先輩は健闘しているようだった。あと、森の木陰に隠れて様子を窺っていたはずなのだが、ミズノ先輩は戦いながらこちらをちらと見て、おそらく目が合った。多分ばれてる。

 俺は青いナイフを出して彼女の元へ歩いていく。


今の俺に攻撃系の“神性チート”はない、出来るのは一時しのぎだけ。一匹に、青いナイフを振るってその全身を氷漬けにしようとしたが、その強靭な体は、難なく氷の抵抗を振り払って動いている。こりゃ、外側から氷漬けにするだけじゃダメだな。


 俺は、冒険者時代の生物知識の蓄積により、アリの心臓は背中側に管のように位置していると知っている。巨大化してもアリのままなら通じるだろう。俺はアリの背中側、体の内部に“凍結”を向ける。大きな抵抗があったが、やがて、アリはうずくまり、その場からまともに動けなくなる。


「キョウゲツくん!? どうして戻って来たんですか!?」


「いやぁ、ちょっと心配になって、様子を見に」


 俺は一匹ずつ狙って、アリに“凍結”の処理を行っていく。やがて五匹とも動かなくなった。


「まぁいいです! 応援ありがとうございます! 今から頭を落としていくのでちょっと待っててください!」


 ミズノ先輩は、“溜め切り”を発動させ、アリの頭を一匹ずつ落としていく。こいつらは、頑強なものの体の再生能力には乏しく、頭を落とせばほぼ無力化できるようだった。体は地面に落ちているが、まとめられたアリの頭はまだぎちぎちと動いている。こえぇ。


「いったん大丈夫そうですね!」


「ですね。こいつら処理したら、ミズノ先輩の仕事は終わりですか? もう帰れます?」


「そうですね……出来れば“網”の維持をしたいですが、私はもう“雨”を切っちゃったので、その内体力切れで動けなくなります」


 “雨”、なんかの魔法だろうか。確かに、空は暗いがまだ雨は降っていない、なのにこの周辺だけ、まるで豪雨に降られたかのように酷くぬかるんでいる。


「まだ一匹二匹なら引き付けられますが……私の体力を考えると、もう撤退した方がいいですね」


「良かったです! 一緒に帰りましょう!」


「それより、私の元に来ると言っていた“討伐隊”の方々が、まだ来れていないのが気になりますね……何かあったのでしょうか。キョウゲツさんはまだ戦えます? もしよろしければ、そっちの様子を見に行って貰えると……」


 アリ一匹一匹には、個体が強いのに加え、“神性”に対して抵抗のようなものを感じる。俺は手元のナイフを見下ろすと、それは一番最初に見た時より一回り小さくなっている。力の消費をこのまま続けていけば、これは溶けて無くなってしまうだろう。


 正直、この盤面をすべてひっくり返せるような力を俺は持っていない。ここに居る全部を助けるために、手持ちの“神性”をどれだけ消費するかも分からない。手持ちの“神性”を消費したとして、得られるのは恩で、目当ての“蟻の神性”は手に入らないかもしれない。


「位置はどこですか? 俺もあまり力はありませんけど、少しなら」


 俺は気が付けばミズノ先輩に聞いている。まぁ、不良の勇者は損得の勘定なんて出来ないしな。


「……“網”の中です。“中央”に向かうほど、会敵頻度は高くなると思います。キョウゲツさんは、先ほどまでとは異なる装備を手にしているようですが、行けますか?」


「一応見るだけ見て来ます。無理だったらすみません、そのまま帰って来ます。あと、ここで俺と会ったことは秘密にして貰えると……」


 俺がそう言うと、先輩はぱっと目を開き、そしてしらーと、目を細めて俺を見てくる。


「キョウゲツさん。さては命令に違反して戻って来ましたね」


「命令? なんのことだか。俺はただの迷い込んだ冒険者ですよ」

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