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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep4.蟻の神兵

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-3.会敵

「敵、来ないねー。暇だし、みんなでカードゲームでもしない?」


「先輩、気を緩めないでください。何もしなくても遊ぶ時間じゃないですよ」


「あ、はい。すみません。気をひきしめます」


 ミズノ先輩は、意外と適当な先輩のようだった。変なことを言ってミナモさんに窘められている。


「森の中は静かですね。今頃、“討伐隊”さんとやらは、敵のアリ潰しに奮闘している頃なのでしょうか」


 俺が話しかけると、ミズノ先輩が答えてくれる。


「ここ広いからねー。戦ってても音聞こえないよ。遠隔撮影用の魔道具とか飛ばして、中継して見せてくれたら、わたしたちも退屈しないですむのに」


「退屈は本作戦とは関係ありませんよ、先輩」


 すくっと、ミズノ先輩の背が伸びた。続いてミナモさんが“中”の方を見る。やがて、俺もそっちからやってくる気配を感じ取った。


「ありゃりゃ。わたしの班の感知範囲は優秀だね。わたしが何も言う前から気付くとは」


 がさごそと森をかき分けて何かがやってくる。遠くに黒い光沢が見えた、心の準備を待つ間もなく、そいつはずんずんと歩いてこちらにやってくる。


 ただのアリだった。ただ、俺よりでかい。頭に生えた触角は俺の伸長を越し、その大きな顎は俺の胴体を丸ごと食いちぎる。奴がまとう黒い甲冑は、黒光りしていてその耐久度は計り知れない。


「一匹かー。基本は私が戦うから、二人は後ろで見ててもいいよ」


「私たちも戦います」


 俺たちは武器を出している、ミズノ先輩は俺たちの前に立ち、その分厚く大きい大剣を目の前に構えた。


 森の中、進軍してきたアリの一匹がミズノ先輩の元に到達する。


「“グラーヴェ”」


 ミズノ先輩が何かを唱え、黒い光が生まれてその体を纏った。


 アリは、その巨体の割に軽快に歩いてきて、その大きな顎を振り上げ、二振り一対の凶器をミズノ先輩へと向ける。


「“溜め切り”!」


 重厚な大剣が、彼女の手により真一文字に振るわれた。その頭部の黒い甲殻の上から横一文字の凹みが刻まれる。


「うわ、かった……」


「節の間から中の筋繊維を狙うんですよ、先輩」


 ミナモさんが背後からミズノ先輩へと話しかけている。


「わたしそういうの無理! ヘイトは買うから、ミナモちゃん、お願いできる?」


「そのつもりで来たので」


 ミナモさんはすっと、その剣の切っ先を地面に向ける。透き通った剣身、シンプルながらに細やかな装飾がなされた綺麗な直剣。彼女がそれを構えなおす。え、ミナモさんもう行くんですか?


 ミズノ先輩と睨みあっているアリの、側面へとミナモさんは走っていく、急転換、ミナモさんはアリへと向かう。


「お前の相手はこっちだぞ!」


 そちらを向きそうになるアリを、ミズノ先輩が大剣を振り回して注意を買う。ミナモさんが後ろ足の節目を狙い、剣が振り下ろされる。鈍い衝撃、それは断ち切れなかった。ミナモさんの狙いがずれたのではない、アリの体が丈夫過ぎて刃が通らなかったのだ。しかし切断には至らないまでも鈍いダメージを残したようで、彼女が切りかかった足はあらぬ方向に曲がり、その先は動かなくなっている。


「かたい!」


「ナイス! そのまま徐々に削っていこう!」


 俺も眺めたままでは居られないな。俺はミナモさんと反対方向のアリの側面に回る。アリは三方を俺たちに囲まれ、しかし注意はしっかりと正面のミズノ先輩が引いている。


 魔法……いや、俺が習得した半端な魔法の威力じゃこいつには通らない。小細工をしてもその強靭な体と膂力がはねのける。斬撃も、おそらく“溜め切り”でなければ通じない。今の俺が使える有効打はあれしかないか。


 俺は片方の手を剣から外し、それを相手に向ける。一筋の、風の刃が生まれ宙をくるくると漂う。


「“風刃ふうじん”!」


 アリの体は頭、胸、腹の三つに分かれている、俺は胸と腹の間、大きく膨らんだお尻がくびれた所を狙い、風の刃を打ち出した。


 ギャッ!! と、声にならない声がアリから走る、その大きいお尻が落ちた。体の一部を落とされたアリは急速に狙いを変え、こちらに顔を向けて歩いてくる。


 は、速っ―


 俺の目の前に迫るアリの体を、横からミズノ先輩がタックルで押しのける、アリとともにミズノ先輩の体が俺の隣を過ぎてもつれ込む。


「ラスト! とどめまで!」


 ミナモさんも走ってきて、彼女は“溜め切り”を発動させ反対の足の一本を断ち切った。俺も“溜め切り”を使って足を切りつけるが、狙いがずれて足を折るだけに至る。


 足は残り三本、体は頭と胸だけ。ミズノ先輩は立ち上がり体勢を立て直し、その大剣を大きく振り上げた。


「“溜め切り”!!!」


 振り下ろされる、鈍重な鉄の塊の一撃、それはアリの頭部の真ん中に、真上から振り下ろされた。鈍い衝撃、アリは頭を大剣に押しつぶされながらも、いまだギチギチとその口器を動かし足を蠢かせている。


「うそでしょ!? まだ死なないの!?」


 俺はミズノ先輩の体をすり抜け、その頭に手を当てる。


「“風刃”!!」


 生じた風の刃は、アリの体へと入り込み、中で暴れて内部をずたずたに切り裂く。手を離すと、残響のようにアリの頭がカチ、カチと、回っては元に戻っている。


 倒しても全身残るタイプか。死んだ判定が面倒そうだな。まぁ、残ったその丈夫な黒い甲殻は有用そうだが。ミズノ先輩が、大剣をアリの頭の上からゆっくりと引き上げる。


「……おつかれー。いや、思ったより強いねこいつ。……こんなだったかな?」


 ミズノ先輩が、もう動かないそれを足の先でげしげしと小突いている。


「それから、二人もね。心強い仲間だ!」


「先輩、先に討伐の報告と近況の再確認を行ってください」


「はい」


 ミズノ先輩は、小さな連絡器に何やら話しかけていた。


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