閑話、授業:対人・キララ
「はー、いやヒカリちゃん小さすぎたからなー。練習にならんかったわーまじでー」
俺は独り言で自分のプライドを保っていると、ギルドハウスの扉が開き、誰かの顔が現れる。
「お、キョウゲツじゃねーか」
鮮やかな短い金髪、見慣れた勝気な笑顔。現れたのはキララさんだった。
「こんなとこで何やってんだー?」
“何やってんだ”とはなんだ。ここは俺がリーダーのギルドハウスだぞ。彼女はずかずかと入り込み、俺の方へとやってくる。まぁ、彼女たちが借りてきたギルドハウスでもあるが。
「キララさんこそ何しに来たの? こんな所に」
「こんな所とはなんだ。オレらで借りてるギルドハウスだぞ」
彼女は俺を通り過ぎ、一角に置いてある荷物の山を探り出す。俺は彼女の背中を眺めながら、ぼーっと考える。
「キララさーん」
「なに?」
「暇なら闘技場行かない?」
俺たちは近くの闘技場へとやってきた。
「お前がこのオレさまに喧嘩売ってくるとは、お前も度胸付いて来たじゃねーか」
「いやいや喧嘩じゃないから。競技だから」
暗いトンネルをくぐると、そこは広いグラウンド。すでに何人もそこらで戦っている。
「剣の練習がしたいんだけど、良い練習相手が見つかってなくてね」
「剣の相手ならミナモに頼めよ。あいつはそっち系だろ」
「……いや、ミナモさんを殴るのはちょっと」
「そうかそうか、オレの顔なら殴れるってか。今日は容赦はしなくていいんだよな?」
キララさんが、にこにことこちらを見てくるので慌てて顔を逸らす。
「いやいや、“武器破壊”とかのルールもあるからね、ここは」
「武器破壊? オレは、言っても最近武器使わねーけどな」
「そうなの? じゃあ“的破壊”とかにする?」
「普通の“全身破壊”とかじゃダメなのか?」
「“全身戦闘”ね。いや……俺が、まだ対人に慣れてないからねー。“的”の方がやりやすいかなー」
「ふーん?」と、キララさんは再び逸れた俺の顔をじっと見ている。
「まぁいいや。的はどこに付けんだ?」
「別に任意でいいんじゃない? 合わせる?」
「胸、胸、股とかでもいいのか?」
「無敵やめろお前。写真撮られて晒されたりしても知らねーからな」
「んじゃ、肩とかでいいか」
俺たちは、グラウンドの脇に置いてある木箱の中から紅白の的を取り、体にくっ付ける。両肩、額の三つだ。
俺たちは距離を取って向かい合う。
「準備いいかー?」
「いいよー」
俺は胸元のお守りを外し、手元に武器を呼び出した。手元に翡翠の曲刀が握られる。
「“決闘”」
「“決闘”」
ぞわと、悪寒が走る。金髪の彼女は、ただそこに立ってこちらに手を向けていた。黒い煙のような何かが、彼女の鮮やかな金色の目や、髪や、その白い手から漏れ出し、彼女の体を隠す。
「“ブレイカー”」
強力な引力を感じ、気づけば俺は闘技場の外に出されていた。俺は、ぼーっとそこで放心していると、中からキララさんの方からやって来て、俺の顔を見つける。
「おーい、負けたのなら戻って来いよー。こんな所で何やってんだー?」
「……俺って弱いな、って」
「そうだなー。なんだ、自覚がなかったのか?」
うっ……うぅ……。
「お、おいおい、泣き出すなって、悪かったよ、次はもっとお前でも楽しめるように手加減してやるから、もっかいやろうな……?」
彼女の魔法は速攻、防御貫通、座標指定で、非常に強力であり、何度挑戦してもせいぜい初めの一回を避けるのが限度だった。




