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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep3.びっくり城(じょう)

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閑話、授業:双属性魔法 ーII

「どうだ、何か感覚は掴めてきたか?」


 傍らでは、イバラ先輩とヒカリちゃんが双属性の魔法を続けている。ヒカリちゃんは両手に力を込め、胸の前で雷や冷気を発生させている。それらはごちゃごちゃと混ざって発生しているが、今のところ別の二つが別のまま混ざっているだけにしか見えない。


「……わかんない」


「イバラ先輩は、その双属性魔法は使えるんですか?」


「俺か? もちろん使えるぞ。俺の専門は魔法だ」


「よければ、使っている所を見てみたいです!」


「ふむ。そうか。そうだな。“お手本”を見せたら、その感覚を掴むいい手掛かりになるかもしれない。ヒカリもそこで見ていてくれ」


 と、イバラ先輩は、何もない空き地の方へと腕を構える。ぞわぞわと、彼の周囲の魔力が動くのが伝わってくる。


「“フロスト・ボルト”」


 彼の手から放たれた水色の光弾が地面に着地、それはそこに見えていた地面を凍らせた。土の表面や、生えていた多少の雑草が青白い氷に覆われる。


「見たところ、普通の氷ですね」


「そう思うか? 見ていろ」


 と、彼は足元の小石を拾い、そこの凍った地面へと投げた。小石が地面に着弾した途端、バチンと音がして小石が高く跳ねた。小石が落ちたところの氷は薄くなり、跳ね上がった小石がこちら側に落ちてくる。


「“形態”は“氷”、“性質”は“雷”。これが『“氷”と“雷”の双属性魔法』だ」


 面白いな。雷は、コスパのいい、速攻性の高い攻撃魔法、だがその性質上、場に留めづらいという特徴もある。だが、この『“雷”の“氷”』なら、簡単にその場に置き、トラップのようにして使うことも出来る。


 イバラ先輩が軽く腕を払い、現れた炎の波が地面を這って、凍った地面を溶かしていく。その氷は、溶けていく際にぱりぱりと小さく電気をまき散らしていく。


「ヒカリ、参考になったか?」


 と、イバラ先輩はヒカリちゃんに聞いている。正直、今のを見て学ぶのは難しいんじゃないか? 外側から見れば、使ったのは“氷”の魔法だ。イバラ先輩が、どういう感覚で、どういう操作でそれを使っていたのかは視覚化して見て取れたわけじゃない。案の定、ヒカリちゃんは難渋の顔を示している。


「……」


「ヒカリちゃんは、なんでこの魔法を覚えようと思ったの?」


 俺が割って入ると、ヒカリちゃんは顔を上げた。


「今までの“ライトニング”や“ブリザード”でも、十分戦えてたんじゃないの?」


 今のこれは、攻撃魔法としては若干遠回りなタイプだ。有用ではあるが、別にそんなに必要とも思えない。し


「ヒカリは……ずっと、今まで一人で戦ってきた。一人で戦う分には、十分だった。……けど、チームで戦うには、もっと、厄介? 高度? すぐに効果は発揮されないけど、使われた時点で嫌だなぁって感じの、敵に当たらなくても、使っただけで意味が出るような、そういう感じの魔法が欲しくて。今までのわたしは、そういうの、持ってなかったから」


 確かに。今までのヒカリちゃんは、凍らせる、電撃、剣で切る、シンプルで速攻の攻撃を主体としてきた、はず。全部は知らないけど。俺が見た彼女のそれらは、当たるのが前提、当たれば効果があるけど、当たらなかったら何も起こらない、そういうものだった。


 だが、彼女が今回覚えようとしている“フロスト・ボルト”は、場に仕掛ける罠のようなタイプ。撃っただけで敵にダメージが与えられる訳ではないものの、敵がそれを見えていたら意図して避けるし、つまり相手の行動への妨害に出来る。撃っただけで何らかの効果がある。 


 100の力を使って敵に100のダメージが与えられる訳じゃないが、発動した時点で最低10程度の効果があって、外したとしても0にはならない。そういうタイプの攻撃。


 モンスターや魔物は、レベルが上がっていくごとに、知恵が回る、狡猾なタイプの敵も出てくる。そういった相手には、実直に突っ込んでいく今までのヒカリちゃんの手札だけでは、相手が難しかっただろう。今回の“フロスト・ボルト”は、そういう相手への弱点を埋められる良い手札となるだろう。


「ふーん。ヒカリちゃんもちゃんと考えてるんだね」


「……そうだけど」


「習得は、出来そう? 練習してて、何か掴めた?」


「……まだ、あんまり」


 まぁ、必要だと分かったからと言って、その必要な技術を自分で習得できるとは限らない。


「そうなんだ。まぁ頑張ってねー」


「……キョウゲツの応援は、かるいね。他人ごとだと思って」


「うーん。まぁ、そんな思い詰めて練習することもないんじゃない? 出来なかったら出来なかったでもだいじょうぶだよ」


「でも、それじゃヒカリの弱点が埋まらない」


「まぁ、どうにかなる弱点ならどうにかした方がいいけど。でも、どうにもならない弱点ってのもあるし、そういうのは、べつに他の人を頼ったっていいんじゃないかな」


「他の人を?」


 ヒカリちゃんは、素直に俺の言葉を聞いてくれている。


「うん。自分は得意なところをやって、苦手なところは他人に任せる。学校は、みんなに向けて全部のことを教えてくれるけど、ヒカリちゃんはそれを全部出来るようになる必要はないんだよ。まぁもちろん、ヒカリちゃんがそれを覚えたいっていう気持ちを邪魔する気はないし、ヒカリちゃん自身がどうしても必要だって思うんなら、ここで踏ん張って習得するべき、だとも思うけど」


 たまに、空き地の面した通りに通りすがりの歩行者が歩いていく。ペットを連れた歩行人も居て、彼の傍らを歩く犬もどきがちらちらとこちらを見ながら通り過ぎて行った。


「……つまり?」


「なるようになるから、もっと肩の力抜いて練習していいんじゃない? ってこと」


「なるようになる……」


 ヒカリちゃんは、その小さな両手を見下ろしている。


「うん。キョウゲツの言いたいことが、なんとなくわかった。ありがと」


「ほんとー? よかったー」


「つまり、キョウゲツみたいに、腑抜けた感じになればいいんだよね」


「そだよー」


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