閑話、授業:双属性魔法
俺たちは、近くの空き地にやってきた。俺たちは軽装で、俺と、ヒカリちゃんと、イバラ先輩の三人が、空き地の上に立っている。
「キョウゲツのために、言葉の説明を最初からしよう。“双属性魔法”とは、簡単に言うと二つの異なる“属性”を掛け合わせて発動するものだ。キョウゲツ、魔法の形状の操作については、もう習っているか?」
「あ、はい。中級魔法ですよね」
魔法をただ起こすのが初級魔法、魔法の形を、球や壁、槍の形など、魔法の形状を操作して撃つのが中級魔法。だったはず。通りすがりのアサノコ先生に教えてもらった。
「その『形』を、『別の“属性”の形状』に変えるのが“双属性魔法”だ」
「べつの“属性”の形状に、変える?」
「そうだ。例えば、燃える“炎”の性質を宿し、“水”の形状を取る、『炎の水』。“雷”のように疾く走り、触れれば“冷気”を振り撒く『氷の雷』。そう言った、一つの属性の“性質”と、他の異なる属性の“形状”を持った一つの魔法。それが“双属性魔法”だ。技術としては、高等魔法に分類される」
一つの性質、一つの形状、異なる二つの“属性”のそれらを合わせて放つ、一つの魔法。それが双属性魔法。操作としては、“魔法の形状を変化させる”ことの延長上にあるのだろうか。“炎”を、球体や壁の形に操作するのと同じように、“炎”を水のような形状に変化させる。
「理論は分かりました」
「そうか。では早速やってみるか。前提として、双属性魔法の習得には二種類以上の“属性”が使えることが必要だ。お前は二つ以上、使える“属性”を持っているか?」
俺が魔石なしで使える魔法は、“風”と“雷”。俺が今から習得したいのは、“引力”の“属性”も関わってくるから、それを習得するにはまず“引力”の属性を習得しなければならない。
「いえ、ちょっと微妙なので、こっからはヒカリちゃんが習得するところを見させていただきますね!」
え……と、ヒカリちゃんが隣で微妙な表情をしている。
「分かった。じゃあヒカリ、お前の魔法の習得に移ろうか。ヒカリが覚えたいのは、“雷”の性質を持ち、“氷”の形状を持つ魔法、だったな?」
「は、はい」
二人の注目がヒカリちゃんに集まり、彼女は若干身を強張らせる。
「練習方法は簡単だ。“氷”の魔法と“雷”の魔法、同時に一か所で発動させる。それを何度も何度も繰り返しやっていると、たまに合体して現れたり、変な風に発現したりする。ヒカリの覚えたい現象が現れたら、その感覚を覚えて、また同じことを繰り返す。そのうち出来るようになる」
丁寧に理論を説明していたと思ったら急にごり押しの練習方法が出てきたな。なんだ、頭がバグるんか? 同時に魔法撃ってたら。そんな偶然の産物なの? 双属性魔法は。まぁでも、魔法を使う際はどうしても感覚的な、直感的な操作が重要になってくる。魔法の練習は総じてこんなものかもしれない。
「練習方法は分かったか? 俺もここで見ている、ヒカリの覚えたい魔法に近いものが出たら俺も教えよう。まずはやってみるといい」
と、後はヒカリちゃんに主導権が移された。
ついでに俺も隣で“引力”の魔法の習得をやってみている。自分の身体属性でない魔法を覚える時は、覚えたい先の属性の魔石を用意し、それに魔力を流し込み発動させることで魔法を使う感覚を覚えていく。
この感覚を覚えられるかどうかは完全にセンスであり、すんなりとその場で覚えられる者も居れば、変換器なども用いて魔法を使い続けた上でようやく覚えられる者もいるし、中には一生覚えられないような者も居る。
俺は習得魔法として、第一属性の“風”、ついで“雷”が使える。今日は三つ目の“引力”、別名“土”魔法を覚えようというわけだ。
“引力”の魔石に力を込めれば、そこから、によによと透明な空気のにじみ、みたいなのが生まれ出てくる。このうにょうにょは俺の意識で動かすことが出来、例えばそこに落ちている石にくっつけ、宙に浮かすことが出来る。透明なうにょうにょは動いて石にくっつき、ぐににと頑張って小石を持ち上げていく。“引力”の使い方にしてはこんなもの。
使えれば、いろいろと便利な魔法である。ただ、この“引力”は魔力消費が重く、普段使いするには使えるものが限られる。俺の魔力じゃその辺の石を浮かせるだけでも一苦労。今までは“俺が使える”実用的な魔法として見ていなかった。今回のこれがなければ、もうずっと触れることもなかったかもしれない。
やはり魔力消費が重いな……。特に魔力消費の軽い“風”と比べると、その差を重く感じる。“雷”も、その攻撃性能に対してコスパのいい属性だった。これは、“引力”の習得でちょっと手間取るかもしれないな。
「どうだ、何か感覚は掴めてきたか?」
傍らでは、イバラ先輩とヒカリちゃんが双属性の魔法を続けている。




