休み時間、地下商店街
「ねぇねぇ知ってる? どっかの地下の通りに、冒険者にお得な品物を揃えてる市が開かれてるらしいよ! そこでは、個人が風呂敷を広げて商売してるような店もあって、だから掘り出し物が見つかるって!」
今日の授業が終わり、教室の中は自然とばらけ始める。モモモが、俺の席にやって来て手を付き、興奮気味にそんなことを言ってくる。闇市? 闇ってほどでもないだろうけど、商品の信頼性は低そうだなー。その分上振れもあり、的な場所? まぁでも楽しそうか。
「面白そうだね。俺も一緒に行っていいの?」
「うん! 付いて来て! 用心棒に!」
「お兄さんは?」
「お兄ちゃん弱いから要らない!」
表通りから地下へと伸びていく通行口、それは意外と明るい場所にあった。ここは人通りの多い街の中央部、すぐ横の広い道路を、魔法で動く魔導車や、モンスターが引く荷車などが通っている。道の脇に暗い入口があり、階段は下へと伸びていく。魔法の光がぽつぽつと中を照らしている。
「じゃあ行こっか」
「武器とか要らなかった?」
「さすがに。人の街だよここは」
「じゃあお兄さんでも良かったんじゃない?」
「お兄ちゃん押しに弱いから無理。でも、女一人だと舐められそうだし」
俺たちは暗い土の階段を話しながら降りていく。俺は値段交渉的な用心棒か。じゃあ、そこまで気を張って付いてくる必要はなかったかな。
その日は、地下に伸びていく穴の中を歩き、地下の通りに並ぶ店、店先に並ぶいろんな品を眺め、見回りながら楽しんだ。俺達にはお金がなく、凄そうに見える大きなお宝を買って試す余裕もなかったが、あれは良さそう、これは外れだなと、商品を矯めつ眇めつ口々に言いながら、彼女と店を回るのは楽しかった。
その日買って、俺たちの手元に集まったのは、なんかの爪、なんかの種、なんかの小石。それはどれもよく分からない値段の付かない、小さながらくたばかり。とある店で、得体の知れない、お守りのようなものも見つけ、効果は分からなかったが、お揃いのを二つ、自分たちのお土産にと、それも買って帰った。




