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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep2.赤砂河(あかさごがわ)

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-強行

 夜を乗り越え朝日が昇る。夜の間に寝ずの番を任せていたヒメトラは、交代で今から眠りに入り、俺たちは起きだして朝の支度をしている。


 水色の空、世界はほんのり冷たい朝の空気に包まれ、足元を、重い空気が風に押されて流れていく。そろそろ地平線から日が昇る時間だ。広がる砂漠はまだ薄暗い、遠くの空を見れば白じんでいる。


「ねぇ、ヒカリくさくない……?」


 と、起き出した少女の一人が、くんくんとしきりに自分の腕やらの匂いを嗅いでいる。


「一日くらい大丈夫じゃない? 昨日、体は拭いたんでしょ?」


「……でも」


 俺がそう言っても、ヒカリちゃんは自分の体をまだ気にしている様子だ。別に冒険者だったら一日風呂に入れないくらいよくあることだし、俺は気にしないのだが。


「ちゃんと顔付けて直接嗅いでやれば? にーちゃん」


「変なこと言うな。お前にやるぞ」


 べー、と、青髪の少女は、桜色の小さな舌を口から出し、目の下を引っ張っている。



「突入前に、ツバキに身体強化の魔法を掛けてもらうよ。それは外から掛けるものだから、掛けたのに使った魔力分消耗したら魔法の効果は切れる。魔法の効果が切れる前に、出会う敵を押しのけながら、俺たちは渓谷の内部を探索する。目的の品を回収、あるいは魔法が切れそうになったら一時撤退だ」


 燃え尽きた焚火の後を囲んで作戦会議。俺の言葉を、ヒカリちゃんとワカナとツバキがそこに座って聞いている。


「ツバキの魔法は、掛けた時に少し体の動かし方が変わるから、突入前に一回動き方を確かめた方がいいかもね。ここまで何か質問はある?」


 子供たちは、こちらを見上げて俺の言葉を大人しく聞いている。



「“彼に天使の羽を授けん”」


 きらきらと虹色の粒子が生まれ、それは俺の体に触れ、吸い込まれていく。ツバキの片手には、きらきらの金属光沢の小石が握られている。


「おー。なんか変わった感じがする」


 腕を上げると、確かに動かすのに抵抗を感じる。まぁこちらは全体的に動作が重くなるが。


「なーワカナ、試しに腕を殴ってみて」


 ワカナが俺の体を叩くと、鋭い音がしたがほとんど痛みを感じない。だが触れられた感覚が無くなったわけじゃない。体だけ丈夫になったような、不思議な気分。


「おっけー。じゃあツバキ、ほかの二人にもお願いできる?」


 ツバキはヒカリちゃんにその魔法を掛け、そしてワカナにも同じのを掛けた。


「俺は別に必要ないと思うんだが……うん?」


 ツバキが放った光の玉が、ワカナの体に触れた途端、黒くくすんで分解されていく。


「あれ? 俺にも掛かったか?」


「……私が、失敗した? もう一回やってみる」


 もう一度やったところで、同じ結果だ。彼女の魔法の光は、ワカナの体に吸収されることなく、くすんで無くなる。


「……これ、俺が悪いのか?」


 ワカナは自分の手を広げて見ている。


「もしかしたら、ワカナの体質が邪魔してるのかもね」


 鬼の血は“干渉系”に属する魔力であり、ツバキが使う天使の力は“天理系”の力だ。四界相性というのがあり、四つの魔力の体系はそれぞれ四つ巴の関係を取っている。“干渉系”は“天理系”に対して有利を取り、逆に“天理系”は“干渉系”に対して不利となる。


「ふーん。まぁ、俺の体はそもそも丈夫だし、体を丈夫にする魔法なら無くていいんだがな」


「じゃあ……そうだね。ワカナはじゃあ、俺の護身の魔道具を持っててよ」


「あぁ? 俺は要らねーつっってんだろ」


「いいから持っとけ」


 俺は、腰元の枝豆のブローチをワカナに移した。


「これで……」


 いや待てよ、“干渉系”が“天理系”の魔法の邪魔をするなら、“天理系”の魔法が“大自然系”の魔法の発動の邪魔をするのか?


「ヒカリちゃん、いつもの魔法は使える? 少し試してみて」


「魔法?」


 ヒカリちゃんは、手の平を上げて何もない砂漠へと向ける。


「“小さな電気”」


 ぴり、と、彼女の手の平から多少の電気が漏れ出る。


「確かに。発動に若干のラグが出来てる」


「大丈夫そう?」


「これくらいならまぁ。ツバキの魔法もちゃんと残ってる」


 魔法の発動が出来るならまぁ、大丈夫か。身体強化の魔法の解除もない。


「私の魔法は力になれていない……?」


 想定外のことが続けて起こって、ツバキが不安そうな顔をしている。


「そんなことないよ、ツバキ。君が居るから今日の作戦があるんだから」


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