-仲間集め ーII
俺がツバキを連れてギルドハウスに帰ってくると、ヒカリちゃん以外にまた顔が増えている。青髪褐色の少年、に一見見えるが、中身は少女。
「あ! ワカナ! なんでここに居んだてめぇ」
ワカナは壁に寄りかかって座り、「ん」と、壁際の転移陣を黙って指さす。その転移先の転移剣は宿屋の部屋の中に置いてあるだろ。……さては、ホテルの管理人が勝手に通したな……? もうずっと同じところに部屋を取っているし、以前にワカナが押し掛けてきたこともある。顔を覚えられているのだろう。
「おめーこそどこほっつき歩いてんだ。あっち行ってもこっち行っても居ねぇじゃねーか。なんだその猫」
「……いや、ごめん。ワカナは何か用事あった?」
「べつに」
青髪の少女はふいとそっぽを向く。
「つーかそこのガキはなんだ。そんでまた一人ガキ連れてきやがって」
ワカナは仏頂面でそう言う。おまガキ。ギルドハウスにはワカナとヒカリちゃんの二人が居たはずだが、二人はそれぞれ別の場所に座って待っていた。二人の仲はそれほどよくないようだ。
ここに、さらに俺とツバキが増え、場がごちゃついて来たな。連れて来たツバキと言えば、ヒカリちゃんの傍に歩いて行ってそこで留まり、なにやら二人で話している。二人の仲はまずまずのようだ。
「……まぁちょうどよかった! ちょうど俺もワカナに会いに行こうと思ってたんだよね」
「……あぁ? なんで」
「ちょっと面倒な案件抱えててさ。手伝って!」
と、ワカナは黙って俺に手を出してくる。
「金」
「ちっ……いくら欲しいんだよ」
まぁ先生に頼めばいいか。人件費は必要経費。出してもらおう。
「森林街の方に転移剣置いてるだろ? あれ持って行ってくんない? 森林街に取ってる宿は引き払って、これからは大陸側に用がある時はワカナんとこに飛んでいくからさ」
「あぁ? やだよ、片方がギルドハウスに置いてあるってことは、“ことまつろわぬものども”の連中が、俺んとこに来るじゃねーか」
うーん。まぁ、大陸側にいろいろ行くなら、確かに森林街スタートが便利なんだよなぁ。ワカナは森林街に常駐してるわけじゃないし。
というか、なんでワカナはもうギルド名知ってんだ。今来たんじゃないのか? まさかお前もか? お前ももうパーティーメンバーなのか? 他に誰が居るんだ? 俺のジャノメは?
「つーか、今からどこに何しに行くんだ?」
と、ワカナが聞いてくる。
「モンスターハウスみたいなところに突っ込んで、中のお宝を引っ掴んで帰ってくる」
「“お宝”?」
「売れないぞ。売らないぞ」
ふむ、と、俺はギルドハウスの中に集まった面々を見渡す。主戦力ワカナ、あと俺とヒカリちゃんは戦える、ツバキは多少足を引っ張る枠だが、まぁ危なそうなら手前で待っててもらう。こんなもんかな。そもそも俺が呼べる人脈がそんな無いからな。俺が今呼べる強そうなのはこんくらい。
とりあえず三人居れば、あの赤い山は攻略できる……かな? 手持ちに“神性”もあるし、あまり仲間集めに時間を掛ける方があれだろう。それでもダメだったら先生の方から強い助っ人をお願いしよう。
とりあえずここに居るメンツで行くとして。俺はずっと俺の頭にしがみついているその子に声を掛ける。
「ヒメトラ、お前はどうする? 今から、あの赤い山にまた行くけど、お前も来るか?」
寝ていたらしい、俺が話しかけると、くぁあと、大きく口を開いて、俺の頭から滑り落ち、地面に音もなく降り立つ。
「ヒメトラ、聞いてたか? あの赤い山に行くけど、お前は付いて来るか?」
「……付いて行きます。ヒメトラのことは気にしないでください」
と、場に沈黙が下りて、皆の視線が床の上の猫(小さいトラ)に集まっている。
「そいつ喋んのか。モンスターか?」
「喋る猫だ」
「先生、私も気になっていたのだが、この子は触っていいのか?」
と、周りのみんながぞろぞろと猫の周りを囲んで集まってくる。ヒメトラは毛を逆立てて動転している。
「なななんですか!? ヒメトラは美味しくないですよ!」
猫は挙動不審にきょろきょろと周りを見渡している。
「まだあんまり人慣れしてないから、ちょっとずつ触れあってねー」
「ごごごしゅじんさま! へるぷ! 巨大な人間どもに囲まれてます!」
「今の君が小さいんだねぇ」
俺は足元の猫を回収し、適当な袋に入れて背中に背負った。
俺たちはその後、魔方陣を踏み、長い時間を掛け歩いていき、再び赤い岩山の狭間の前まで辿り着いた。ツバキとヒメトラをその場に残し、俺とヒカリとワカナは、三人で内部へと突入したが、倒しても倒しても、次から次へと湧いてくる内部のモンスターの波に耐え切れず、俺たちは内部の探索を諦め撤退を決めた。




