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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
Ep1.邪教の町

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第一話、邪教の町 3

「この度は本当に、ありがとうございました……っ!」


 村の入り口で、村長のおじいさんがさきほどから何度も頭を下げてくる。


「いえいえ、別にいいですよ。これが仕事なので」


「私の……私が拾ってきた“それ”のせいで、私は村人たちを危険な目に……!」


「強い力には誰しも惹かれるものです。あなたでなくても、通りすがりの誰かが持ち帰って同じことをしていたでしょう」


 本に青いナイフを突き刺すと、途端黒い本は霜に覆われ凍り付いた。俺が恐る恐る村人たちを解凍していくと、もう特に俺を追い回すようなことはしてこなかった。衛兵さんは己の不甲斐なさを俺に詫び、親たちは瘦せた子供を見て大慌てで家に連れ帰り、シスターは裾が破れてない服に着替えてきて、アルミラはきょとんとした顔でその場に立っていた。


 シスターに“あの飲み物はどうしたんですか”と聞くと、“そんなものはございません”と平然とした顔で返された。元からあったんかあれ。急には用意できないよな。まぁいいや他人の事情は。


 村は“反理の神性”の影響を逃れ、どうやら元に戻ったらしい。ちゃんと氷のナイフを抜いても大丈夫なままかは、帰って神様に聞いてみよう。


「……それ、どうなさるんですか?」


 俺たちは村を後にし、帰り道につく。隣には赤い神の少女と、バッグの中にはナイフを突き刺したままの黒い凍った本。


「うちの先生が“そういうの”の処理が得意だから、後は先生に任せるよ」


「……そうですか。……結局、事態の解決はあなた一人に任せてしまいましたね。私は……いまだに、あまり事態を把握し切れていないくらいですし」


「一人じゃないって良いよね。知らない村の、話すのは知らない人ばかりだったけど、君が隣に居てくれたおかげで、安心して行動することが出来たよ」


「……いいです、変な慰めは」


「本心だけどね。最近、面倒を見てた子が旅立っちゃってね。寂しいんだ」


「なんですかそれ」


 夕焼けの中に続いていく道を、俺たちは二人で歩いていく。


 *


「そのまま持ってきたんですね」


 俺が先生の部屋を訪れると、いつの間にか白い空間の中に招待されている。空間の中には、俺と神様とが二人で立っていて……今日はあっちの格好じゃないんだ……。


「いやらしい考えはやめなさい。私に不敬ですよ」


「人の考えを勝手に読み取るのは人権の侵害ですよ」


「神は法の適用外です。そんなことより、今回はお疲れさまでした」


 神様は、隣の白いテーブルの上に置かれた“それ”に目線を下ろす。


「そのナイフ刺したら村人たちは元に戻りましたけど、もうナイフ取っても大丈夫ですかね」


「このナイフは“凍結”の神性。その本質は存在の停止のみですが……停止した上でここまで離したので、おそらく彼らとのリンクはもう切れてるでしょう」


「距離的なもので切れるんですか?」


「“見えない遠くのところまで行ってしまった”という認識の方が大事ですね。おそらくは、頻繁な視認を足掛かりに無理やり信仰を繋いでいたでしょうから。もう、彼らにとってこの“黒い本”は、誰かがどこかにやってしまった危ないものです。もう信仰は離れてしまったでしょう」


 ふーん。よく分からん。


「しかし、意外と掛かりましたね。もう少し手早く終わるものと思っていました。ことはこの“本”の回収だけなので。この“黒い本”は、どこかに隠されていたのですか?」


「いや、村の広場の目立つところに置いてありましたよ」


「どうしてさっさと取ってこなかったんですか?」


 お前の寄越よこした連れが邪魔してんだよ。まぁ、


「村の様子も見て回ったので。異常や異変のない“神性”を、人々から取り上げる訳にもいきませんしね」


「この私は取ってきてと言ったんですが」


「俺が、あなたの言うことをつぶさに聞いてくれる忠実な手足に見えますか? そういうのが欲しいのなら余所を当たってください。俺は俺で考えて行動します」


 と、神様がこちらに手を伸ばしてくる。その手はそっと、俺の頬にやさしく触れた。


「問題解決能力が高いので、あなたに洗脳が効けば良かったのですが」


「怖いこと言わないでください」


「冗談ですよ。しかし、私の言うことはできるだけそのまま受け入れてくれると嬉しいですね」


 と、神様の目線が再びその黒い本へと落ちる。


「その本、どうするんですか?」


「こっちは、勢力拡大意欲が高い子なので、出来れば人気のない所に封印しておきたいですね……」


「そのナイフみたいに、武器に出来ないんですか?」


「武器にしなくても、所有者をあなたに登録すれば力自体は使えるようになりますよ。まだ人格が宿っていないし、そっちとしても信徒を増やしたいでしょうから、おそらく可能でしょう」


「……俺が、あの教団みたいになるってことですか?」


「いえ。あなたなら上手く力だけ引き出せるでしょうね。ATMみたいなものです」


 ATMみたいなものなんだ、こいつら。


「しかし、何はともあれ無事回収していただいてありがとうございました。後は私の方でやっておくので、あなたはいったん自由にしていていいですよ」


「お給料出ますかー?」


「お給料は……出しましょう。私の懐から」


「わーい神さまだいすきー」


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