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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
ー氷海の地図

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閑話、青くて綺麗な石

 俺は一応事後の報告をと、教室のある建物の、先生の部屋に立ち寄ったのだ。その扉を叩くと、先生は俺を出迎えてくれた。


「おや、キョウゲツさん。先日はどうも、お疲れさまでした」


「いえいえ、俺もマコモに恩があったので、それを返す機会が出来て良かったです」


「とりあえず中に入りますか?」


 俺は、開かれた扉の中に入る。手前に応接用のテーブルとソファ、奥に執務用のデスク、部屋の両側には棚と、そこにぎっしりと詰まった本や何かしらの書類を束ねたもの。


「どうぞ、そこにお掛けください。何か飲まれますか?」


「あぁいえ、俺は一応顔を出しに来ただけですし、すぐに帰りますよ」


「まぁそう言わずに。お菓子もどうぞ」


 と、お菓子の入った籠が俺の前に、そのうち湯気の香るいい匂いのするお茶がカップに淹れられて俺の前に出される。結構熱そうだな……冷めるまで待つか。


「マコモは無事でしたよ。……とは言っても、俺が行った時には、島には何らかが原因で通信障害を起こす状態にあって、おまけにマコモは高熱を出していました。今はその熱も、島を覆う何らかも解決したみたいです。マコモが氷河海に調査に来たという異常の正体はおそらく“ダンジョン”の生成で、ついでに“ダンジョン”の攻略も終わらせてきました」


「そうですか」


 先生から帰って来たのは、いたって淡白な答えだった。


「……先生は、行く前は“マコモは大丈夫でしょうけど”なんてこと言ってましたけど、全然大丈夫な状況ではなかったでしたね。熱も出してたし、孤立してたし」


「マコモなら熱を出しているくらい大丈夫でしょう」


「先生はマコモをなんだと思ってるんですか? もっと彼女を大事にしてください」


「ぞんざいに扱っているつもりはないんですけど……そうですね。あの子は何かと有能で便利なので、私はあの子に期待を掛けすぎていたかもしれません。以後は、彼女の扱いについて見直しましょう」


「そうしてくれると俺は嬉しいですね」


 報告は一応これで終わりか。部屋は明かりが付けておらず、部屋の奥の窓から差し込む白い光が部屋全体をぼんやりと照らす程度だ。俺はテーブルの上のコップに手を伸ばし、口を近づけて液体に口を付け、その温度に俺はほとんど飲まずにテーブルに戻した。


「あぁあと、“ダンジョン”で変なもの拾ったんですよ。正体とか使い方とか分からなかったんですけど、先生なら何か分かるかなって。見てもらっていいですか?」


「どうぞ」


 先生の顔は、こちらからは逆光になっており、影が差している。俺は懐から、奥底にしまったそれを取り出した。それは青い、正八面体の冷たく綺麗な宝石。


「これ……なんですけど」


 先生が、これを見て息を飲んだのが分かった。


「なにか、分かり―」


「キョウゲツさんはそれを必要としていますか? そうでなければ、私に譲っていただけませんか?」


「え? え? いや、分かりませんけど……これ、何なんですか?」


「……人が持つには少々危険なものです。私の手元に置いていた方が安全でしょう、その石も、あなたも」


 ふむ。まぁ先生がそう言うのなら。


「まぁ、先生が欲しいなら差し上げますよ。俺も、先生には何かとお世話になっていますし」


「……本当に? 本当に私が貰っていいのですか?」


「はい。どうぞ」


 俺は布の上に乗せたそれを、先生の方へと差し出した。先生の両目が、じっと、俺の手の上の石を見つめている。


「……では―」


「こにちはー」


 後ろから扉が開かれ、光が入ってくる。振り返れば、ミナモさんもこちらにやって来たようだった。


「せんせー、ただいまー。今何してるんですかー?」


「……今は、えぇと」


「それはアオイくんの石ですよね?」


 ばたんと、部屋の入り口の扉が閉まった。


「よくないですよ。自分のものじゃないのに、勝手に自分のものにするのは」


 俺は入ってきたミナモさんに言う。


「……お前、どこから聞いてたんだ? よくないぞ、盗み聞きなんて」


「関係ない人は黙ってて」


「これ俺の関係のある話じゃないの?」


 ミナモさんは部屋の中にずかずかと入ってきて、ぼすんと、ソファの空いている俺の隣に座った。ミナモさんは勝手に籠を寄せて、そこに入っているお菓子をポリポリと食べだす。


「……そう……ですね……。……はい。それは、キョウゲツさんの……ものですね」


 先生は、非常にゆっくりと、途切れ途切れにそう言葉を紡いだ。


「……? いいんですか? 先生が欲しくて、俺が持ってるには危険なもの、なんですよね?」


「………………いえ。やはり、私が貰うのはやめておきましょう。私では……今の私であり続けるには、それは受け入れられないものです」


 先生の口調はやたら重たげだ。お腹痛いのかな。変な時に来ちゃった?


「……なんかやばい石なんですか? これ。じゃあ俺も持っておきたくないんですけど」


「決して他人に譲渡してはいけませんよ。奪われるような所にも置いておかないでください。それは……そうですね。ちょっとした、氷の属性の強い石です」


「“氷”の魔石ですか?」


「異なるものです。決して売却など、市場には流してはいけませんよ。それはあなたが持ち続けるものです」


 なんなんだよ。よく分からないけど脅してくるのやめろよ。


「……けれど、そうですね。そのままの形だと、どうしても持ち歩きにくいでしょうし、もしよろしければ、私の方で良い形に加工してさしあげましょうか?」


 ぺたと、ミナモさんが机の上にお菓子の殻を置いた。


「……必ず、お返ししますので」


「前みたいに、素材を武器に加工してくれるってことですか?」


「えぇはい、まぁ」


「それは嬉しいですけど、お金とか要ります?」


「いえ。気にしないでください。これも、先生としての仕事のうちですので」


「じゃあお願いします。出来たらミナモさんとかに言ってください」


 俺は、その青い宝石を先生に渡して、その場を後にした。


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