第九話、攻略“氷河海”のダンジョン―第二層その2 ーII
「とりあえずこの層はクリアか……さすがにもう終わりだよね?」
百層くらいあったらどうしよう。
俺たちは、壁に現れた入り口をくぐり、また階段を上っていく。
階段の先に出たのは、今さっきのドーム状の空間を、小部屋サイズに小さくしたような空間だった。大き目のかまくらぐらい。ドームの真ん中には、わかりやすく宝箱が置いてある。
「どうやら三層でクリアみたいだね」
「攻略おめでとー」
俺たちは宝箱の前まで歩いていった。箱の上部に手を掛けると、鍵は掛かっていないようだった。重い上部の蓋を、俺は肩を使って上に押し上げる。
箱の中には赤く、上質そうな布が敷かれており、その中央には。一つの石が置かれていた。
八面体の透明な石だ、中は青く、表面付近だけ透明な白い層が覆っている。手の平の中には納まる程度の大きな宝石。
「……なに? これ」
「お宝じゃない?」
「説明書とかないの?」
「ずっと無かったじゃん。触ってみれば分かるんじゃない?」
俺は慎重に手を伸ばし、赤い布の上に置かれている、その青い宝石に手を触れた。冷たい。それ以外に、感じ取れるものはなかった。
「なんか分かったー?」
「箱の中とかに置いてたら冷蔵庫に出来そう」
「永久冷蔵庫だね」
「頑張った割に報酬がしょぼすぎる」
なんか分かりやすい武器とか魔法とかじゃないのかよ。なんだこの冷たい青い綺麗な石。
「……お前は、これには食いつかないのか? ほら、透明な石を集めてるだろ」
「これは要らない」
「そ、そう」
なんらかの彼女の琴線に触れなかったみたいだ。
「まぁ、とりあえず持ち帰るか。マコモやジャノメにも攻略を手伝って貰ったし、この報酬の所有権はみんなで決めよう」
俺が改めてその石を持ち上げると、周囲の景色が徐々に滲んでいく。気が付けば、俺たちは浜の上に立っていた。後ろには氷の大扉が立っており、そして、ほんの今、上の端から空気に溶けていっているところだった。
「ダンジョン攻略!」
「いぇーい」
キャンプ地点に帰ると、浜の上には死屍累々が横たわっていた。
「あ、先輩! お疲れ様です! どうでした? ダンジョンの方は」
「ダンジョンの攻略は……無事終わったよ」
マコモは良い笑顔で俺を出迎えてくれる。マコモは今も何らかの横たわった体の一つを足で踏んづけている。
「そうですか! では、明日にでも船を呼んで撤収しますかね。もう皆さん帰られますよね?」
「うん。あと、ゲットした報酬をどうするかはみんなで話し合って決めたいんだけど……」
「あはは、いいですよそれは先輩のもので! 私も、ダンジョン攻略楽しかったですしね! 一緒に参加できて良かったです!」
「そうか、悪いね……ところで」
と、テントの中からもそもそと出てくる、それは白髪の少女。ジャノメだった。
「えっと……ジャノメ、ここで何かあった?」
「何かあったけどもう終わったぞ」
「……何があった?」
「知らん。通りすがりの魔王軍が来て、マコモが全部倒した」
ここ魔王軍の拠点とかと近いのかな……さっさと撤収しよ。




