第六話、授業:ダンジョンの紹介
“状況を見るに、おそらくたった今“ダンジョン”がそこで形成されたのでしょうね。あなたたちが経験したもろもろの異常は、その“ダンジョン”の形成に伴い起きたものでしょう“
無人島の上。景色に緑は少なく、海水の届くところから十分に離れた浜の上の辺りから地面を緑が這いつくばり始め、あとは島の小さな岩山に多少の緑が集まっているくらいだ。視界のほとんどは白い砂浜、青い海、島の周囲を囲う氷の群れ。
俺たち四人は浜の上に立っており、マコモの手の平の上に乗せられた通信器を囲み、それを眺めている。小さな通信器から、人工的に再現された先生の声が響いている。
「ダンジョン……とは?」
“世界各地に自然発生的に現れる、特殊な構造物群の総称です。その扉はまるで宙に浮いているように単独で現れ、その中を開いてみれば、そこには一見して計れないような異常な空間が広がっています”
“ダンジョン内部は、何かしらの目的を内包されて作られた、試練の塔、あるいは迷宮のような空間です。中ではなすべき”何か“が設定されており、それは例えば”強力な特定のモンスターを倒す“、”内部の特殊な設置物を破壊する“、”最奥まで踏破する“、などです。ダンジョン内における最終的な”目標“が達成されると挑戦者の前に報酬が差し出され、”ダンジョン“はクリア、挑戦者は外に排出され、”ダンジョン“は消失します”
なんか妙なもん出てきたな……。
「“作られた”って、だれが作ってるんですか? こんなもの」
“私では知り得ません。そこの人じゃないですか?”
そこの人って誰だよ。現地民居ないよ。
「……放っておくとどうなります? これ。なにか悪さとかします?」
“自らの意思で扉を開けて内部に入らなければ、ダンジョン外部のものには干渉しません。まぁまぁ邪魔なでかい扉がそこにあるだけです”
ふむ、放っておいても問題なしか。俺は再びその扉を眺める。氷で出来た見事な大扉、扉の表面から扉の枠に至るまで、そこには豪華で繊細な氷の彫刻がいたるところに刻まれている。
“まぁ、なにはともあれ”氷河海“における異常の発生源は割れました。マコモはもう任務を完了して帰還していいですよ。また、キョウゲツさんたちも、マコモを見つけていただいてありがとうございます”
「それはいいんですが……どうするんですか? これ。放って帰っていいんですか?」
“私から、それについてこれ以上みなさんに何かをお願いすることはありませんよ。興味がないなら放って帰ればいいですし、興味があるなら”クリア“を目標に中に挑戦してみるのもいいでしょうね”
なんだっけ、“クリア”すると報酬が貰えるんだっけ。
“まぁ、もし”ダンジョン“の攻略がしたいのなら、他の誰かに見つかる前に、誰にも報告せずにその”ダンジョン“の攻略をさっさと始めた方がよろしいでしょう。”ダンジョン“に関する権利は発見者にはありませんから。誰かが攻略して”クリア“されたら、その報酬はその”クリア“した人間のものです、歯噛みするしかありません”
「何が貰えるんですか?」
“難易度によりますがやばいアイテムです。やばいので高く売れますし自分で使っても超強いです”
「先生、この事には箝口令を発します。誰にも言っちゃだめですよ先生」
*
「私はダンジョンの報酬には興味がありませんが、先輩がやりたいなら一緒に付いて行ってあげてもいいですよ」
扉の前、とりあえず俺たちはこれからどうするかを話し合っている。
「助かる。内部での色々を全面的に君にお願いしよう」
「私は先輩に助けてもらった恩がもちろんありますが、働きすぎだと思ったら先輩から新たに取り立てますね!」
「構わん。好きなだけ言ってくれ」
とりあえず、マコモはこの場に残り俺を手伝ってくれるらしい。ありがたい。マコモは俺たちが来る前からこの氷海に滞在し、見つけた敵を片端からやって湧き潰ししていたほど強い。
「二人はどうする? 一応、マコモは見つかったし通信障害も解除された、ここに来た目的は果たしたし、もう帰れるけど」
俺はとりあえずミナモさんに向いている。
「ダンジョンはまぁ、どっちでもいいけど。私が今その辺の岩で作ってる“ミナモの地上絵”が完成してないからまだ帰らないよ」
「そうか。好きにしてくれ」
勇者の方はまだいいのか? あと俺たちが異常調査に海氷の上を頑張って探索していた時もそれやってたの? 俺は続いてジャノメを見る。
「わしはキョウゲツに付いて来たんだぞ。おぬしが帰らんのならわしも帰らん」
「そっか。ダンジョン内には? 一緒に来る?」
俺はジャノメの顔を両手で挟んでわしゃわしゃとその顔を撫でる。白髪の少女は俺のなすがままにされている。
「まだ分からないから行かない。大丈夫そうで楽しそうだったら呼んで。みんなでここに残るなら食料確保の仕事もあるしな。ミナモの面倒も、わしが見ておこう」
「ありがとー」




