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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
-落ちた雛

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閑話、ヨウゲツお兄さんのお供



「いやー、ごめんねー? おにいちゃんのわがままに付き合ってもらってー」


 その場に着くと、部屋着のモモモが出迎えた。彼女と会うのは久しぶりだったが、彼女の俺への接し方は、まるで昨日の続きみたいな距離感だった。


今日は、ミナモさん経由で俺に依頼が入り、二人への部屋へと足を運んでいる。いわく、元勇者の同期である清霜ヨウゲツさんから、俺に頼みごとがあるとのこと。


 二人の居る部屋に上げてもらうと、中でお兄さんも待っている。彼は表情をピクリとも動かさず、やぁと手を挙げて俺を出迎える。


「お久しぶりです、ヨウゲツさん」


「久しぶりだな、キョウゲツ。今日は遠路はるばるご苦労だった」


 言葉こそ固いが、彼の俺に対する態度は柔らかいものだった。


「いえいえ、こっちに来ると懐かしい気持ちになりますし、俺は呼んでもらえて嬉しいです」


 部屋には、ふわふわの絨毯が敷かれてあった。ここは二人の暮らしている部屋だが、インテリアの主導権はモモモが握っているのか、内装は可愛いものが多い。俺たちは一つの丸いテーブルを囲んで座っている。挨拶を済ませてお菓子を用意して、さぁ本題。


「前に紹介してもらった魔剣だが、ようやくお金を貯めて買うことが出来た。だが、肝心の“魔剣の中に封じる魔物”については、何を入れるべきか見当が付いていない。よければ一緒に選んでくれないか?」



「やっぱり、ヨウゲツさんの代わりに戦ってもらう感じのモンスターが良いんじゃないんですかね。どうですか? あれ以来、戦闘のセンスは少しは向上しましたか?」


 魔剣に与える力、魔剣の器、従えるモンスターの出来ること、それから彼の足が届く範囲で見つかるモンスター。考えることはいっぱいだった。


「全然だよ」


 と、モモモが答える。


「武器も、魔法も、スキルも?」


「全然だね。そもそも、自分の手でモンスターを傷つけるという行為が向いてない。あと魔法は下手」


 勇者において戦闘が下手。割と致命的だと思うが、先生いわく意外と生きていく道はあるという。


「じゃあやっぱり強いモンスターがいいんじゃないですか? ヨウゲツさんの代わりに戦ってくれるような」


「しかし、俺の代わりに戦ってもらうというのも気が引けるのだが……」


 優しいなぁ、この人は。それで勇者続けていけるんだろうか。まぁその辺はあの先生に任せておけば大丈夫か。


「じゃあ、せめてヨウゲツさんを守ってくれる感じのはどうです? 番犬的な。やっぱり、もしもの時の自衛の手段は大事ですよ」


「ふむ……」


「あるいは、得られる能力に焦点を当てて探してみるとか。例えば、敵の気力を削いだり、身を隠したり、あるいは敵が命令を聞くようになったり。戦闘自体を避ける能力があれば、自衛にもなりますよ」


「ふむ……交戦を避けることの出来る能力か……」


 彼は、ギルドで貰える情報誌をぱらぱらとめくりながら唸っている。


「モモモはどう思う? なんかいいのあったりする?」


 んー……と、彼女は意外にも気のない返事をする。


「別に何でもいいんじゃない?」


「乗り気じゃないな。モモモにも関係があるんじゃないか? 一緒に居るんだし」


「どうせ私が戦うから、お兄ちゃんは戦えなくても、別に……」


 清霜モモとヨウゲツは同期の勇者見習いであり、二人はよく行動を共にしている。モモモは、ペアにおいてモンスターとの危険な戦闘の役目を負っており、そしてヨウゲツさんは身の回りの家事や庶務を担当している、らしい。


 ヨウゲツさんの戦力が上がればモモモの負担も少しは楽になるかと思ったが、彼女はそもそも気にしていないようだった。


「じゃあ、ヨウゲツさんの方で、何か希望とかないんですか?」


「ないから聞いている」


 何も無いのか、ドラゴンがいいとか。はぁと、隣でモモモが溜め息を吐いている。


「まぁ、部屋で考えていても退屈だし、外に出てモンスターを探しながらの方がいいんじゃない? どうせ、本の中で目当てのモンスターが出来ても、捕まえられるのは目の前に居るモンスターだけだよ」



 モモモの提案に、俺たちは、二人が最近狩り場にしているという街の外に出てきた。


「せっかく大金用意して買ったんだし、やっぱり出来るだけ情報集めて慎重に探すべきじゃないか?」


 俺は改めて二人に問いかける。


「いや、欲しいモンスターどれもこれもお兄ちゃんのものになってくれる訳じゃないでしょ。相手は道具じゃないよ、生きている生き物。相性もある。まずはお兄ちゃんに振り向いてくれるモンスターを探した方がいいよ」


「顔は良いし、ワンチャンどのモンスターにもモテるんじゃない、お兄さんは。そこら辺は強気に行こうよ」


「じゃあキョウゲツはスライムの顔判別できんのか」


 確かに、モンスター(あっち)から見れば俺たちはみんなニンゲンか。街を出て、草原の上の道を歩き、やがて見える森へと逸れて入っていく。


「ここら辺はなにが居るの?」


 俺は先行くモモモに聞く。


「環境が不安定で、日によっていろいろ変わるよ」


「へぇ、面白そうな狩り場だね」


「でしょ。キョウゲツもこっちに来る?」


 うーん、さすがに、毎度毎度ミナモさんの部屋を通って出てくる訳には……。


「あっちもあっちで、歯応えがあるからね」


「ふーん? 今は、キョウゲツは大陸の上だっけ? やっぱモンスターとか強いの?」


 と、モモモは興味深そうに聞いてくる。


「モンスターもそうだけど、やっぱり土地が特殊だね。大陸全体が龍脈の影響を受けてて、歩いてたら突然地形が変な感じに変わったりする」


 森の中を歩いていると、やがて一匹のモンスターが現れる。


「あ、可愛い」


 ふわふわとしたウサギ型のモンスターだった。人懐っこい個体なのか、ひょこひょことこちらに跳ねて近づいてくる。


「どうですか? お兄さん」


「弱そうじゃない?」


「お前には聞いてないモモモ。それに、まずはお兄さんを受け入れてくれるかどうかが大事だって、お前が言ったんだろ」


 モモモは品定めするようにその白いフワフワのウサギを見下ろしている。


「いや最低限。こんな肉玉、盾にもなんないよ?」


「肉玉って言うな。盾にしようとするな」


 と、お兄さんは一人で前に出て、跪き、そのモンスターへと手を差し出している。ウサギはまたぴょこぴょこ跳ねてきて、お兄さんの差し出した手をクンクンと鼻を近づかせて嗅いでいるようだ。


「いい感じじゃないですか?」


「ペット探しに来たんじゃないよ」


「まぁ確かに。可愛いだけじゃダメだよな」


 と、ヨウゲツさんがウサギに手を差し出したまま、困ったような顔でこちらを見上げた。


「すまない、齧られている」


 即座にモモモがその獣を蹴り上げた、白い獣の体は軽々向こうへと吹っ飛んでいく。見れば、お兄さんの手の端っこから赤い血が滴り落ちている。


「殺す」


「ま、待て、まだ仲良くなれる可能性が―」


「人の血の味を覚えた獣はさっさと駆除しましょうねー、お兄さん」


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