授業:属性判定
「今日からは魔法を使ってみましょう」
魔法だー!
薄暗い教室の中、木製のタイルの上に少人数の机が並ぶ。教室の前方には、左右に長い緑の板があり、床が一段上がっていて、真ん中に先生の机。先生は今日も黒板の前に立ち、俺たちを広く見渡している。
「その前に、まずは各々の体内に流れる魔力の属性を調べていきましょうか」
魔力の属性。確か、魔法と属性が同じだとエネルギーの効率がいいんだっけ。つまり魔力の属性がそのまま得意魔法。重要イベント……!
「はい先生。人間によって、体内に流れる魔力の属性が違うんですか?」
「そうですね。人間も、そしてモンスターたちも、です。“身体属性”は変質することもありますが、短い期間において体内を流れる魔力の属性はほぼ一定です」
「同じ人間で、どうして体内の属性が変わってくるんですか?」
なんか遺伝子的なものがある? 普通、同じ場所で同じように育ったら、同じような属性になるんじゃないのかな。
「そう……ですね。たとえば、モンスターなどの属性は、その地に流れる龍脈の属性と一致することが多いです。“炎”の龍脈が流れる場所ならば、“炎”属性のモンスターが多いなど……ですね。人間に関しては……」
先生は、何か戸惑っているように窓の外を見ている。
「……まぁ諸説あります」
「そうですか。関係ない質問してすみません」
「いえ……それでは、調べていきましょうか。教卓の上にこれを置くので、一人ずつ順番に来てください」
先生が教卓の上に、まん丸の水晶(透明な結晶?)の玉を置く。最初にミナモさんが呼ばれ、彼女は席を立ち、教壇へと上がっていく。
「この玉に手を置いてください。玉の中で色が変わるので、それで身体属性を判別します。ごちゃごちゃしている場合は一番割合の多いものを伝えます」
先生が教卓の前をどき、ミナモさんが出てきてそこに立つ。ミナモさんは特に臆することなく水晶玉の上に手を置いた。ふわっと、水槽に絵の具を一滴垂らしたかのように、色のついた半透明な煙が水晶玉の中で渦巻き、落ちていく。いくつかの水色が玉の中で混ざっていく。
「……」
先生は水晶玉の中をじっと注視している。
「……“水”ですね」
「みず……ですか?」
ミナモさんはおうむ返しに聞き返している。
「はい。水を出す魔法が得意な属性です」
「つよいんですか?」
「そうですね……直接的にダメージを与えるものではないですが……まぁ、使い様ですかね」
「そうですか」
ミナモさんの表情は変わってない、落ち込んでる? のだろうか。分かんねぇ。
「まぁ、一番効率がいいのが“水”ってだけで、身体属性に関わらずいろいろな魔法は使えますよ。特殊な装備を使えば、魔力の出力の属性も変えられるようになりますし。深く考える必要はありません」
「そうなんですか」
ミナモさんは、何を考えているのか分からない表情で席へと帰っていく。
「それでは、次の方来てください」




