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教科『異世界』の じかん だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
ーーー迷宮街の宝物ーーー

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第四話、“黄金祭り”本祭―二日目― ーII

 その後、何度か冒険者の集団を見送った。


「ちっ……今日はいいのが見当たらねーな。おそらくさっきの“運び屋”に稼ぎを持ってかれたか……」


 少年は悔し気に、道の向こうを見つめている。


「じゃあどうするの?」


「そろそろ昼前だ、強い奴らも顔を出してくる。次に来た適当な冒険者を襲って、それで撤退かな」


 と、言っているうちに向こうからまた冒険者がやってくる。時間は昨日より遅いが、昨日得た金塊の袋より、持っている量は少なそうだった。俺らは立ち上がるが、しかし俺たちより向こうで待ち構えていた冒険者がそいつらに喧嘩を売り、戦闘が始まってしまう。


「あー……しまったな。俺も早めに仕掛けるべきだった。稼ぎがないのは周りも同じだ。こりゃ乱闘になるな……」


「乱闘?」


 俺がワカナを見れば、少年はだいぶ渋い顔をしている。


「考えることはみんな同じだ。時間が経てば周りに居る奴らのレベルも上がるし、手ぶらでは帰りたくない。だから時間が来たら、適当な奴らを襲って帰ろうって、みんな考える。起こるのが雪崩式の“決闘”だ、少ない金塊を巡ってここに居る全員が“決闘”に参加する」


「俺たちはどうする?」


「そうだな……」


 と、ワカナは注意深く周囲を見渡している。見れば、確かに荒野に点在して待ち構えていた冒険者たちが、金塊を巡って争っている集団へと近づいてきている。


「利の少ない戦闘だ。参加する人間が多ければ、俺たちが持ち帰る確率も下がる。明日に備えて今日は休んでもいい」


「じゃあ今日は帰るの?」


 俺が聞き返すと、しかしワカナはまだ帰るような様子じゃない。


「休んでもいいが、どうせ明日まで暇なんだ。この時間帯より後の強者どもと戦うよりかは勝率はある。暇だし参加して行ってもいい。だが乱闘になるし、俺はにーちゃんを見る余裕も無くなるよ。にーちゃんこそどうする? 危ないし先帰ってもいいぞ」


 Aチーム対Bチームの戦闘じゃない、今からここに居るみんなで、金塊を賭けての大乱闘。右も左もワカナ以外はみんな敵、そして彼ら同士も敵同士。


 俺は少し考えて答えを出す。


「昨日から後ろで見てばっかりで退屈してたんだ。せっかくの祭りだし、ひと暴れして行きたいね」


 少年はふんと鼻を鳴らす。


「威勢がいいのはいいが、怪我はすんなよにーちゃん」



 そこかしこで金属の打ち合う音がする。気を抜いていれば、どこかから魔法の流れ弾が飛んでくる。


「へっ! そこのガキ! お前は弱そうだから早めに潰して頭数を減らしておくぜ!」


 冒険者Aが勝負を挑んできた。


「あぁ? 誰がガキだって?」


 俺は声の掛けられた方を振り返る。


「てめぇだてめぇ。鏡は見ない主義か?」


「大人ってことにしといてくれよ。でないと、今から俺に負けるお前がかわいそうだ」


「戦いは口で戦うんじゃねーぞ? クソガキ」



「“決闘”」「“決闘”」



 俺はペイントソードを手に握り構える。彼はいたってシンプルな鉄の直剣を握っているようだった。


「なんだそのオモチャ」


 彼は、俺が握った白い棒のような剣を見てそう言ってくる。


「クソガキの使うオモチャだよ、まぁ気にすんな」


「ふん……何か仕掛けがあんな」


 彼は注意深く俺の手元を見つめている……仕掛けないならこちらから仕掛ける! 俺はペイントソードを持って相手に切り掛かる、相手は剣を盾に防ごうとして―


「っな!? すり抜けっ……!」


 相手の剣と、それから敵の胴体を切り付ける。危ないので峰打ちモードだ。


「……おいおい、なに俺の服を汚してくれちゃってんだ……?」


「見てろよ、今に赤い血に変わるぜ」


 彼の胴体に付けた白い塗り跡が徐々に赤く染まっていく、ここだ!


「ちぃっ! ぐふっ!!」


 俺は爆発の瞬間再び切り掛かり、彼は背後に飛んでその間合いから離れる、彼の胴には鈍い衝撃が走ったのだろう、彼が苦痛に一瞬顔をしかめ、そして剣も同時に衝撃を受けてあらぬ方向に曲がる。


「おらっ!!」


 俺は腰を捻り、足を上げて敵の剣を側面から蹴り飛ばす、曲がり、無茶な持ち方をしていたその剣は、側面からの衝撃に耐えきれず彼の手から離れる。


「ほら、素手だぞ大人!」


 彼はすかさず手の平を俺に向けて構えた、まずい! 魔法が来る!


「“サンダーストーム”!」


 俺は全身を横に投げ飛び込む、俺の居た場所を凄まじい雷光が過ぎ去っていく。俺が再び立ち上がれば、彼は剣を拾いこちらへと走ってくる。俺も彼に手の平の照準を合わせる。


「遅いっ!」


 彼は地面を跳躍し、彼の膝が無理やり俺の手の平の照準を捻じ曲げる、俺はそのまま肩に突撃を食らい押し倒され、背中が鈍く地面を打つ。走る痛みに顔をしかめ、俺は地面に仰向けになり、彼の持つ剣の切っ先が俺の顔の真上へと据えられている。今からでは、何をするにしても先に彼の刃が俺の顔を貫く。


「……“降参”です! お強いですね!」 


「ふん。素直なガキは嫌いじゃねぇ」


 彼は剣を浮かして俺から外し、俺の肩から足をどかして俺の上からどいた。


「もちろん俺の方が強かったが、お前もなかなか良い線いってたな。だが経験が浅いな。体も出来てない。その攻撃をずらす剣は面白いが初見殺しだ、初撃で作った隙にもっと突っ込んで畳みかけるべきだった。もちろん強い俺がそれに対応してしまったのがお前の敗因だが―」


 視界の右手が明るい。見れば、特大の火球がこちらに迫っていた、進路上の冒険者の彼は目の前で火球に飲み込まれる。


「ギャァァアアアアアアアアアアア!!!!」


 なるほど、戦場でひとたび気を抜いてしまえばこうなるという教えだな。俺は“降参”したし、さっさと安全な場所まで避難しよう。

 


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