勇者、迷子の子供
今日は街で迷子の子供を見つけた。親とはぐれて、頼る相手も見つけられず、道の脇でひっそりと、心細げに立っていた。俺は、そういえば俺は勇者だったなと、気まぐれに善行を実行に移した。迷子の子供の近くに立って、目線を合わせて、優しい声音で話しかけて。
最初は子供も、俺の事を警戒していたけれど、勇者という名前を出したら子供の態度が少し変わった。俺は見習いだけど、勇者だから、君のことを助けてあげるよって、そう言ったら、その子は恐る恐る俺に向かって手を伸ばした。助けを求める側も勇気が必要なんだなと、俺は何とはなしに思いながらその手を取った。
子供の言葉を頼りに、あっちへ行って、こっちへ行って。お母さんはすぐに見つかった。二人の再会を後ろで眺めていると、やがて、子供との再会を終えたお母さんがこちらへ向き直る。子供は、勇者のお兄ちゃんが一緒だから怖くなかったよと、嬉しいことを言ってくれている。
お母さんもなんか感謝の言葉を言っていた。立派な勇者になってねと、言葉を貰って、俺はそこで別れた。
立派な勇者って何だろう。俺は立派な勇者になりたいのだろうか。分からない。俺はただ、流されるままに何となく生きているだけだから。




