8話【それぞれの戦い方】
バゴォォォーンッッッ!!!!!
「……!?おいおい、一際大きな音が鳴りやがったな!?ブレス何かあったか!?……くそ、なにか持ってねぇのかよこいつ等ぁ!」
暗い通路でゼファーにやられた二人の身体検査をする影。言わずもがなティークである。
「ナイフ…は使えねぇ…けど、もっとくか…十字架なんて何の役にも立たねぇよ…。……おっ!小銭…は貰っとくとして…」
さも、それが当然のように。
ごく普通のようにティークは自身の懐を暖かくした。
いらないと言ったものも、捨てることはせずに自身の服のふかーいポケットへしまい込んだ。
「駄目だ…こっちのは何の役にも立たねぇ…シケてるぞ?くそがよぉ…。んで、こっちはぁ…」
「あぁー…クソほども役に立つもん持ってねぇ!!!何だよこいつ等!拳銃の1丁ぐらい持っとけよ!」
そう。実はティークは金目のものを探しに来ていただけではない。少しでもなにか利用できるものがないかと気絶した2人から色々と盗りに来たのだ。
されど、予想よりも得られた収穫は悲惨なもので、五百円玉2枚、百円玉3枚、5円玉が5枚、そしてナイフが2本と一応奪って置いた十字架2つである。
仕方ないと立ち上がったティークは、ふと思い出した。
(こいつ等、予備の弾を取りに来たんだったよな?ということは、このフロアにもしかしたら武器庫か何か……あるはずだっ!よし…探そうっ!)
暗闇の中、ガチャ…!バタンッ!ガチャ…!バタンッ!と言う騒音が鳴り出した。タマムシ色の瞳が松明に照らされて、輝いた。
「やめなさいっ!」
突如聞こえた轟音に、ゼファーは最上階へと駆け込んだ。
無数の人間。ひぃ…ふぅ…みぃ…よぉ…。20ほどだ。それらの人間の視線は1箇所、突如として最上階の廊下すらもない広い部屋の唯一の出入りのできるドア。そこへ向けられた。
「……何者だ?」
当然の質問である。
「……下で暴れまわっている方の従者で御座います」
「……何のつもりだ?」
「今ここで全員まとめて死ぬか、攻撃の手を止めるか、お選び下さい。くれぐれもご英断を…!」
言い終わるとゼファーはベルトのアタッチメントに取り付けられた鞘から剣を引き抜く。
すぅーーー…と金属同士が擦れる小さな音が1つの階を支配した。
現れた白刃は揺らめく壁の松明から光を受け、その刀身に橙色を纏う。そこに存在する威圧感。見るからに分かってしまう攻撃性。鋭く、硬く、殺気に満ちた刀は周囲のディアベル信者へ鋭い恐怖を与えた。
ゼファーはその白刃の刀身をそっと撫で、腰を落とし、全身の筋肉を緊張させる。構えを取ったのだ。
「そろそろ判断をお聞きしてよろしいですか…?」
酷く嗄れた老父の声が空気を揺らす。
「……悪いなぁ爺さん。あんたがどれだけ強いかは知らねぇがなぁ…。この数相手は無理だろうがよぉっ!!!」
男の鬨の声を皮切りに、その場に居るものが一斉に斬りかかる。剣、槍、斧など様々な獲物だが、どれも狙うものは1つ。目の前の白髪の翁の命。それだけである。
「……愚かな」
「どぉりゃぁ!」
最初に退治したのは正面の鬨の声を上げた男。ロングソードを持った彼は突き刺すように突進してくる。自身の体とロングソードの間に刀を差し込むようにしてギィィィィィ!と言う金属音とともにゼファーは剣の軌道をそらす。
次いで、右から伸びてきた槍。それは、ゼファーの頭をめがけ、一直線に突き出された。…が然し、ゼファーは力に任せロングソードを弾くとその流れのまま、槍も弾き飛ばした。体制を崩した槍使いが自然とゼファーの正面になった。
無論、ゼファーがその隙を逃すわけもなかった。
「ふんっ…!」
強く地面を1つ蹴り、槍使いの懐へと潜り込む。自身の右下に構える白刃。その峰を迷うことなく槍使いの首へ叩きつける。
「まずは一人目…」
1人落ちる。されどゼファーは止まらない。止まるわけがない。すぐ近くにいた剣士を蹴り飛ばし、遠くの斧使いへと当てた。そして、斬りかかろうと近寄った手斧使いが飛び掛かるも、彼が斧を振り下ろすよりも先に彼の顎を蹴り上げ、無様に宙を舞わせた。
「なっ…なんだぁ…この…化け物っ!?」
「お褒めいただき、有難う御座います。ですが…がら空きですよ…?」
遠くで小さく呟いた彼の下へ駆け寄り、その脚へ無慈悲に峰が振り下ろされる。ボキィッ!と痛々しい音を上げ、男をその場に倒れ伏した。
「このじじぃが!大人しく!しねぇい!」
投げつけられる手斧。くるくると回転し、ゼファーへと一直線へ飛ぶ。されど、それでもゼファーは怯まない。剣を持たない左手で、回転する斧の持ち手部分を当然のように掴めば、その斧を投げ飛ばした。ビルの外へ。その場にいるものは思わず、その斧に目をやってしまう。それがまずかった。
その誰からの視線からも外れた僅か、12…3秒。鬨の声を上げた男が、ダンッ!と強く地面を蹴る音に反応し、ゼファーへと視線を戻したその時には、過半数以上のディアベル信者は倒れていた。あまりの速さ。あまりの強さ。あまりの早業を体感した男だが、一番恐怖したのはそれ程のことをして、呼吸の1つすら乱していないという所であった。
残るはロングソードの鬨の声を上げた男。2人の剣士と1人の槍使い。最早、万事休すである。既にこの短い殺陣は、幕を閉じようとしている。
1人の剣士が首へ一撃をくらい倒れる。そのゼファーへ斬りかかろうとしたもう一人の剣士の高く掲げた剣はゼファーが片手で剣士の両手を覆うように掴むことで、止められた。ゼファーは地面に剣を刺し、空いた右手で彼のみぞおちに強烈なパンチを入れた。残った槍使いへとゼファーがゆらゆらと近づく、かつ…かつ…と確実に、一歩ずつ。そして遂に目前まで、ゼファーが迫る。その時には槍使いは槍など手から放り出し、頭を抱え震えていた。そんな彼へ容赦のない足蹴りが決まり、見事彼は気絶した。
ロングソードの男はそれを見ている事しかできなかった。
「いっ…つぅ…」
痛みに耐えて、ファイティングポーズを取ったブレス。
その体が、本当に少し、ひと目見るくらいでは分からないほどに微量な光度で、白く光る。
「しゃぁ…第二ラウンドじゃぁい!こらぁ!」
ブレスが駆け出す。近くにいたヒトガタを唯、殴り、蹴り、相手していく。
ヒトガタ達は自身の白い粘液を飛び散らして、吹き飛び、溶けて、倒れていく。
その動きはおよそ、今先程、砲撃を腹に受けた人のものではない。まるで殺戮を目的に作られたオートマター。無慈悲なまでの殺戮兵器そのものだ。
「………くっ…!」
10何体目かのヒトガタへの攻撃は、蹴りであった。ヒトガタの首を目掛けて放たれる鋭い回し蹴り。バァンッ!と水音を立てて、ヒトガタは崩れるも、ブレスもまた地面に尻餅をついた。
ごほっ!がはっ!と2咳き込むと荒い呼吸を整える。ブレスの左手は鉛玉が当たった腹を優しく撫でている。
その時だ。にやりとブレスが笑った。
「ふぅ…。キツかったねぇ…。大砲直撃は…流石にねぇ」
ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ー!ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ー!と呻くヒトガタ。近寄るそれ等を見上げるブレス。そのブレスの体はひと目でも分かるほどの白い光に包まれていた。
「けど、もう【慣れた】よ」
今回はあとがき無し!
次ぃ!冬休み中に1章完結したいんだから!!!
皆さんも応援よろしゅう!!
ほなまた!!




