4話【砲撃】
ゼウスから依頼があり、僕らが住居地、イチアを馬車で離れてから早2日と数時間。現在時刻は朝の5時。外はまだ薄暗い。あれから…色々と分かったこと、考えたことがある。
まず、新興宗教ディアベルについて。
現在トウキウには、200人程の信者が集まっているようで、そんな彼らを率いているバッカスという男。オニキスのような瞳とウェーブのかかった漆黒の髪。新聞には不気味に笑う彼の写真があり、彼がいかに危険人物なのかということをありありと示していた。
そして、トウキウの現状。
トウキウ中心部、23区の一番真ん中にある区、フミキヨ区。ディアベルはそこに進行をして、人質や捕虜をどんどんと増やしているようだ。その周りの22区。そこには数千にも及ぶヒトガタが放置されているようだ。
最後に、最も大切なこれからの僕たちだ。
僕たちは今、レンバ区へ向かっている。そこは、トウキウの中でも一番西側に存在する場所。さて、何故そこへ向かっているのかと言うと、ゼファー発案の天才的とも言える策を行うためだ。
その案とはこういうもの。まず、レンバ区へと入り込み、ヒトガタを蹴散らしながら、下水への入口を探す。見つけたらそこから下水に侵入。そして、そのままフミキヨ区へと進む。地上へ出たら、ゼファーと僕で別れ、僕は…このぽんこつラジオを使って、ヒトガタや信者を引き寄せる。ゼファーはその混乱に乗じ、人の流れに逆らいアジトへ侵入。そのまま【デウス・エクス・マキナ】を破壊。これが一連の流れ。
多少、無理矢理な所はあるけど、問題なくできるはずだ。なんせ、僕とゼファーだから。ゼファーとなら何でもできる。一人だろうと、仲間が一緒にいてくれる心強さ、この世界にシンセカイで目覚めたばかりの僕には想像もできなかった事だろう…。
「そろそろ着くぜ?準備しろー?」
「………」
「おいっ!聞いてんのか!?クソガキぃ!」
「あっ…!はいはい!聞いてるよ!…大声上げなくても分かるよぉ〜!ねぇ?ゼファー?」
やや怒声混じりの声に新聞から目を上げて慌てて前を見れば、こちらを睨むティークと目が合った。
修羅の形相。悪鬼の類と同じ、恨めしい目が突き刺さる。
……うん、ごめんじゃん。
僕の正面に座るゼファーは我存ぜぬと言わんばかりに無視を決め込み、水筒に入ったストレートティーを口へ流し込んでいた。
カラカラカラ。
馬車の車輪がコンクリートを走る音。
カコッカコッカコッ。
コンクリートを強く踏みしめ、進んで行く馬の足音。
サァー…サァー…。
コンクリートに囲まれた土の地面から生えた木々が風で揺れる。…心地良い。
ドバンッ!!!
突如として鳴り響く轟音。
それと同時に感じる浮遊感。
僕は、否、僕達は空中へと投げ出されていた。
「…どわぁ…!?んぎゃぁぉおぉ!?」
言葉にならない叫びを上げながら僕は、僕の体はコンクリートへと叩きつけられた。
「いっ…てぇ………。絶対に頭割れたよこれ?頭から落ちたもん。え?これパッカーン行ってね?ドバァ…!って行ってね?大丈夫そ?これ?いっ…たたたたたたた…」
僕の右側へと倒れ伏しているティークの口から文句がつらつらと垂れ流れる。
…状況確認しなきゃ。
馬車は倒れてる。多分吹き飛ばされたんだ。まるで横から何が当たったように凹んでいて…。よく見ると黒い玉が凹みの中心にめり込んでいる。大砲で鉛の玉か何かを撃たれたということは明確だった。
馬は元気よく立ち上がり、カコッカコッカコッ!と早足に何処かへと逃げていく。遠く遠くへと逃げていき、しまいには早朝の薄暗がりへと姿を消した。
…二人は?
ティークは頭を抱えながら未だにぶつぶつと呪言の様に文句を垂れ流している。
ゼファーは…。
流石、人でありながら人ならざる技を磨いた剣の道の玄人だと言えるだろう。服装に一切の乱れを付けずに、既に仁王立ちし、腰のアタッチメントに付けられた鞘から剣を引き抜いている。白刃の刀は薄暗がりにも関わらず、明確にそこにそんざいし、威圧感を出している。
…敵は?
玉が飛んできたであろう方向を見るも、暗くてよく見えない。ここは逃亡したほうが懸命だろうが、間違いなく相手に僕達の居場所がばれている。
どうするものかと…顎に手を当て…。
その僕の耳元を高速で何かが飛んでいった。すぐ後ろで骨だけの廃ビルが死んだ音が聞こえる。
「ブレス様。ここは一度引きましょう。こちらから相手が見えない以上無謀です。考えるのは後になさって下さい」
ごもっともです。ゼファー。
僕はうずくまるティークへ足蹴りを見舞う。
「頑張って走って生き抜くか、このまま放置されて死ぬのどっちがいっ?」
ティークは先程までの体の不調の訴え、もとい文句を言う事を止め、バッ!とその場に立つ。
「お前達!何してるんだ逃げるぞ!!死にたいのか?俺が先導するこっちへ来い!ほらこい!はやく!ほら!ほら!!ほらぁ!!!」
そう怒鳴りながら誰よりも早く薄暗がりの中を駆けていく。そのスピードたるや正に疾風であった。
「おっけぇゼファー!一旦ティークについて行ってそこから考えよう!ここは素直に!逃亡だ!」
ドバンッ!!!ドバンッ!!!
「うぎやぁぁぁ!また撃たれた!また撃たれた!怖い怖い怖い!死ぬぅぅぅぅぅ!」
「あの喧しいのどうにかなんない?」
「私には…なんとも…」
3人とも持てる力の限りで薄暗いコンクリートの道路を駆けていく。 ティークを筆頭に、ゼファー、僕と続く列に背後から容赦なく大砲の音や建物の倒壊する音が鳴り響く。
朝はまだ少し遠そうだ。
実は深夜テンションで5話目(6000字くらい)もう書いてるんだけど、ゼファーさんが大暴走の末に、敵の魂を取ったので、勧善懲悪好きの私は陶芸家のようにその作品を投げ捨てました!
深夜テンションでやると作品は進むけど、作風変わるな…。気をつけなくちゃ!
てなわけで、これからもゆったりと投稿してきます!
よろしくだぜ♪




