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崩壊世界とぽんこつラジオ  作者: ナタデ 小町【・△・】
1章【崩壊都市トウキウ】編
3/12

2話【最悪のお願い】

 テンテンテケテケテレテン♪

 テンテンテケテケテレテン♪


「はぁ…」

 ガチャ…。

「はい。もしもし」

 僕は支給品であるガラパゴス携帯を開き、応答のボタンを押した。

「やぁやぁ、おっひさ〜!1年と6ヶ月ぶり〜!僕の声聞こえてるぅ〜?どう?僕の支給した携帯は僕の声を君の心に届けているかい?」

「どちら様ですか?」

「君の唯一無二の大親友の声を忘れたのか!?僕は悲しいぞぉ!」


 面倒くさい。


「人違いです。失礼します」

「あ〜!待て待て待てって!用件を言うから!そんなにまで、僕と馴れ合いたくないのかい?」

「勿論ですが?」

 説明しよう。彼の名前は【ゼウス】。聞いての通り陽気な明るい男だ。一見は。

 その実…。

「そんなぁ〜…。ひどいなぁ〜。ぼくないちゃうなぁ〜…。なぁ〜、一万人殺しのことは反省してるって〜〜〜!仲良くしてくれよ?ね?ねっ?」

 人の命をまるで埃としか見ないクズである。

「本題は?」

「んんっ…!そうだなぁ。その話をしようかぁ!」


「今回、君には1つやってほしいことがあってね。今朝の新聞を見たかい?」

「丁度、邪魔が入る今の今のまでは見てたよ」

 わざと悪態を付いてみる。

「その中にね、【退廃都市トウキウ】と【新興宗教ディアベル】の話が出ていただろう?あれについてなんだ。実は、3日後、クリスマス当日、正にこの世界の3年目の誕生日にトウキウが消える。」

 向こうはそれに気づいているのか、鈍感なのか何も返すことなく話を進めた。駄目だ、こいつに話し合いで勝てる気がしない。

 ………って。

「あ!?お前、また!なにかする気か!?どういうつもりだ!?何が目的だぁ!!!」

「勘違いするなぁ!僕じゃない!ディアベルだよ。ディアベル!全く…失礼するなぁ〜!僕がそんな悪い奴だと思うかい!?」

 ゼウスは1つ溜息を吐いて続ける。

「奴等は簡単に言うと破滅信仰の宗教だ。そんな彼等と我々、EDENは何回か殺し合いをしている。それこそ君のお友達は、話題に上がっていただろう?ヒトガタの大量処理。あれは…原因はディアベルなんだ。」

「………」

「そんな奴等は今!トウキウの23区の内、20区を占領している。そしてもう1つ。奴等は【デウス・エクス・マキナ】を持っているようだ。察しの良い君ならもう分かるだろ?この世界が崩壊したアレを!奴等は、トウキウで再現するつもりだ!」

 脳裏に浮かぶのは3年前のあの日。窓ガラスが割れ、ラジオが目の前で世界崩壊を告げたあの日。僕が生きた中で、最も記憶に残り、こびりついて離れることのないあの日。

 あの白濁したモノが、世界を包んだ。

 今の優しさも温かさも何も無い世界を作り上げた原初の種。それが今、正に起こされようとしている。

「そこで…だ。君に助力を願いたい。目的はただ1つ。【デウス・エクス・マキナ】の破壊だ。僕としてはできれば壊さず回収してほしいのが本音だが…。そうこう言ってるわけにはいかないのでね。勿論、それ相応のサポートはさせて貰おう。どうだい?この世で最も優しい君にもう一度言おう。【デウス・エクス・マキナ】の破壊、引き受けてくれるかい?」


 僕は1度携帯を耳から離し、壁を見つめる。

 自然と頭を搔いていた手を止め、もう一度、携帯を耳に当てる。


「やるよ、やる。ただ、1つ言っておく」

「なんだい?」

「僕は君の駒になったつもりはない。そして今後なるつもりもない。良いか?あくまで、世界平和の為の一時的協力だからな?」

「僕はまだ、お前を許したわけじゃない」


 電話の向こうからギィ…ギギィ…と椅子が鳴る音が聞こえる。1…2…10秒程して、返答が返ってきた。


「その言葉、しかと受け止めて置こう」


 彼は薄ら笑いでそう宣言した。



「どうでしたか?大分声を荒げているようでしたが…」

「ゼファー、急で申し訳ないけど、プリンを食べ終わったらトウキウへ行く。準備して欲しいんだけど…いいかな?」

「………承知致しました。」

 好物のカラメルたっぷりプリンをいそいそと口の中へ放り込み、食器を机に残したままで、ゼファーは外へと出ていった。

「別にプリン急いで食べなくても良かったんだけど…」

 本当に、彼は温かな人だ。

 常々、頭が上がらない。


 ………僕もご飯食べ切るか。

 カッカッカッ。箸が皿に強く当たる音がラジオの音を掻き消した。

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