156話 除霊完了
イタズラを仕掛けてきたこの屋敷の娘と話をすることになった私達は立ち話をするのもなんなので部屋の脇にあったソファに布を敷き座った。少女の方幽霊なので実際に座ることはできないがこちらに合わせて座っている姿勢をとってくれた
「えと、さっきは怖がらせるような事してごめんなさいでした・・・でも!勝手に家に入ってきた貴女達が悪いんですよ!」
「うん、そうだね。知らなかったとはいえ勝手に入ってごめんね。驚かせた件については別に気にしないで。怖がっていたのは1人だけだし・・・」
そう呟きながら後ろを見ると1人隅の方で縮こまったままのフィオナが。幽霊とはいえしっかりと理性があるし見た目は普通の少女なのだからそんなに怖がる必要はないと思うのだけどな
「フィオナ、そんなに離れてないでそっちに来たら?」
「だ、だって子供とはいえその子幽霊なんですよ?近くにいたら呪われるなんてこと・・・」
「お姉ちゃんは私の事苦手ですか・・・?」
「うっ・・・」
幽霊だろうと子供にそう言われて素直にハイと言えるフィオナではない。怖がる素振りを見せながらも私達の元にやってきた
それから少女に色々と話を聞かせてもらった。少女が幽霊と化した原因については事前に聞いていた通り一家心中によるもの。いつもの様に生活をしていたある日父親に呼ばれて父親の部屋に向かったがそこに父親はいなかった。その瞬間急激に熱くなり目の前が真っ暗になった・・・それが少女が覚えている最後の記憶らしい
次に目覚めた時には今の姿になっており、屋敷は朽ち果て家族や使用人は全員居なくなっていた状態だったという。始めはわけも分からず家の中を探し回ったが屋敷の中にいるのは自分より先に居着いていた幽霊ばかり。ならばと外に出ようと試みてみたようだが、外に出た瞬間苦しくなって体が消え始めてしまったようでそれ以降は怖くて試したことがないらしい
ラミアス程の少女が突如そんな状況に1人身を置く形となったらさぞ辛いことだったろう。実際少女は何度か命を絶とうとしたようたけれど、刃物が刺さることもなければ持つことさえできない
恐らく外に出れば消えることは出来るのだろう。しかしそれは成仏とはまた違う、どこか暗く怖い場所に引きずり込まれるような感覚を直感で感じ取ったらしくそれはしたくないのだそう
成仏も出来なければ屋敷から出ることも出来ない。ならばせめて戻ってくるかもしれない家族の為にこの屋敷を守ろう、という考えに至ったそうだ。それから何年、何十年とこの屋敷の中を彷徨っていたがやって来るのは肝試し感覚の連中と屋敷を壊そうとする業者ばかり。ここ最近はそれすらも現れることなくただ屋敷を見守っていた。幽霊とはいえ子供は子供、長い間家族を待つのはさぞ心細かったことだろう
そんな少女の唯一の救いとなったのが他の幽霊達で、彼らが少女の会話相手となってくれたそうでそれによって幾分か気が紛れたそうだ
私は少女に真実を打ち明けるべきかと悩んだが、長年待ち続けたこの子に嘘を教えるわけにはいかないと思い意を決して話す事に決めた。この話を聞かせたら正直少女は気がおかしくなって怨霊に化ける可能性も考えたが、真実を聞いた少女は私が想像していた反応とは違って冷静なものだった
「そう・・・だったんですね」
「話した私が言うのもなんだけど信じてくれるの?」
「実は以前この屋敷に入ってきたお兄さん達が話していたのを少しだけ聞いてしまったんです。『この屋敷に住んでいた貴族の父親は借金を苦に家族全員を殺めた』と。でも私そんな話信じたくなくて・・・・」
そうだったのか。それを聞いても尚家族を信じて待っていたとはなんて健気な女の子なんだ
ならせめてこの子には今までの分安らかな眠りについてほしい。私は少女に成仏させてあげられる事を伝えてこのまま屋敷に残るか家族の元へ行くかの二択を与えた
前者を選ばれたら私達は潔く引くしかないと考えている。僅かな逡巡の後、少女は口を開いた
「・・・・そうですね。もう家族がここに来ることがないと分かったたしもう屋敷にいる意味もないですからお願いできますか?」
「分かった、出来るだけ苦しまないように送ってあげるね。それと最後に名前を教えてくれない?私はエレナって言うんだ」
「名前を名乗るのなんて死んでから初めてかも・・・・私の名前はシャルロッテです。皆からはシャルと呼ばれてました」
そう言ってシャルは初めて柔らかい笑顔を見せてくれた。せめて私達だけでもシャルがここにいたという事を心に刻んでおこう
私は聖浄化魔法"ヘヴンズ・ゲート"を発動。現世を彷徨っている死者を天国へと導く扉でここを通って行けば苦しまず成仏することができるはずだ
扉の先へ向かおうとするシャルは心地よさ気な顔をし、最後に私達に向かって声をかけてきた
「私がいなくなった後はこの屋敷は壊してもらって構いません。それとこの屋敷にはさっき私が話した他の幽霊さん達が残っているかもしれないので一応気をつけて下さいね」
「えっ・・・」
それだけ言い残して扉の奥へと消えていったシャル。次の瞬間私達の背にある部屋の扉から屋敷に隠れていた幽霊が一斉に侵入してきた
きっと私が出した扉に反応してやって来たのだろう。ハッキリと生前の姿のままとシャルと違い他の幽霊達は人の原型を留めていなかったり頭や胴体が切り離されて臓物がむき出しの状態だった
そんな幽霊達が次々とシャルの後を追うように扉の中へ。屋敷にいた幽霊が全員入り終わると扉は閉まり消えていった
「いやぁあんなに沢山潜んでいたんだね。ってどうしたのフィオナ?」
「いや、あの・・・」
大勢の幽霊に驚いたのかフィオナはその場でしゃがみ込んでいた。どうやら腰を抜かしてしまったらしい
1人では立てない様子だったので手を貸そうと近寄ってみると、普段のいい香りとは別の臭いが漂ってきた。よく見るとフィオナが座っている床にだけ水溜まりが出来上がっていた
その水溜まりと臭いでそれがなんなのかを瞬時に判断した
後ろにいたフレイヤとフローリアも気づいて鼻を押さえている。目の前には大粒の涙を浮かべ泣きそうになっているフィオナ
「この事は私達の心の中に閉まっておくから。その・・・どんまい!」
「うわあああああん!!」
今まで聞いた事がない声で子供のようになくフィオナ。精一杯のフォローをしたつもりだったが上手くいかなったようだ・・・とりあえず風魔法と火魔法を合わせた熱風で濡れた衣服を乾かしてから私達は皆の元へと戻ることに
最後に一波乱はあったものの無事屋敷に住まう幽霊は皆成仏して土地を手にする事が叶った。屋敷から出た頃には既に日が傾きかけていたので支払い等の諸々は明日へと持ち越された
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