111話 二人の関係
道場で私の下着を大衆に見せつける原因となった彼女は私達が利用していた宿屋の従業員で、顔を合わせてお互いの事を初めて認識した時は凄く同様していたが、一通りの業務を終えて部屋にやってきた頃には彼女は落ち着きを取り戻していた
「改めまして私の名前はツバキと申します。先程は本当に申し訳ありませんでしたエレナさん」
「まぁ恥ずかしかったですけどもう済んだことですから気にしないで下さい」
あの時の私は恥ずかしさがあったというのもあるが凄い形相をしていたらしく、そのせいでツバキさんはあんなに必死に謝り続けていたようだ
勿論故意ではないのは知っているので怒っているつもりはなかったが、彼女を怖がらせてしまったのは申し訳なく思う
謝罪を受け入れた後はツバキさんと色々と語らった。始めの出会いはあれだったが、話してみるとツバキさんはとても快活な女性で同じ剣の道を歩む者としても話が合った
ツバキさんはここから東にある山を登った所にある小さな村の出身で、この宿屋で住み込みで働きなからあそこの道場で修行をしているとのことだった
あそこにいた師範とツバキさんの親御さんが昔からの知り合いらしく、その伝手で稽古をお願いしているらしい
私は道着や防具を返しそびれていたのを思い出し、あの後に行くのも気まずいのもあってツバキさんに返しておいてもらうようお願いしておいた
話している最中ツバキさんは私が先程セレーネに見せていた白蓮にチラチラと視線を向け気になっている様子だったので、良ければ触って見るかと問いかけてみた
「いいんですか!?これあの妖刀ですよね。触ってもおかしくなりませんか?」
「大丈夫ですよ。その原因はもう無くなりましたから」
「で、では失礼します」
ツバキさんはそう言うと恐る恐る白蓮に手を伸ばして触り始めた
細部まで念入りに、穴が開く程の眼力で刀を観察してウットリとした表情で眺めていた。特に刀身の方に目が釘付けで、私より様々な刀を見てきたツバキさんでも白い刀身というのは初めて見るようで、その見た目に心を奪われていた
話している時から感じていたがツバキさんは相当な刀マニアなようだ
あらかた白蓮を見て満足すると、今度は私が持つ他の剣も見てみたいというので閉まっておいた剣を取り出して見せてあげた。聖剣に食いついてくるのは予想出来たが、父が打ってくれた剣も褒めてくれたのはお世辞だったとしても嬉しいものだった
2人で盛り上がる中、話は今日の試合の方へと切り替わった
「それにしても本当にエレナさんお強かったですね。うちの門下生達をたった1人で相手にして無傷で勝ってしまうなんて」
「最後ツバキさんに一本取られちゃいましたけどね」
「その話はもう勘弁してください・・・でもあの時エレナさん私の技を完璧に見切っていましたよね。初見で見切られるのは初めてだったので驚きました」
「あぁそれは・・・」
私は以前ツバキさんと全く同じ技を使うユリウスさんという人がいた事を話した
するとその話を聞いたツバキさんは何やら考え込むような難しい顔をしだした
どうしたのかと私が尋ねるとゆっくりと口を開いて語り始めた
「エレナさんがいうそのユリウスさんという方・・・もしかしたらユリ姉さんかもしれないです」
「ユリ姉さん?ツバキさんにはお姉さんがいるんですか」
「あっ、姉といっても実姉ではないんです。エレナさんもっとその方の特徴とか教えてもらってもいいですか」
ツバキさんの真剣な顔を見て私はユリウスさんの特徴等を思い出せる限り打ち明けた
ひとしきり話し終えてツバキさんが出した結論は、ユリウスさんがそのユリという可能性が高いということ
ツバキさんが子供の頃、隣の家にユリという歳上の女性が住んでいて、歳の離れたお姉さんのように仲良くしてもらっていてよく遊んでいた
しかしある日突然ユリはいなくなった。いつものように家に遊びに行くと姿がなく、ユリの両親に聞くと出ていったと一言だけ告げられたそうだ
ツバキさんの住む村は忍という昔からある諜報部員の一族らしく、ユリウスさんやツバキさんが使っていた技も忍術という魔法とは異なる技の1つだと語っていた
そんな忍の一族の中でユリは飛び抜けた実力を誇り、将来一族の長を担う人材だというのは全員が認めていた
けど当の本人のユリはそんなものには一切興味がなく、外へ出て色んな世界を見たいという気持ちの方が強かったらしく、親御さんとよく揉めていたそうだ
忍の長となるには成人している事が絶対条件で、ユリが成人したらすぐにでもという話が上がっていたようだがその話がユリの耳に入ってしまい、夜逃げのような形で姿を消したという訳らしい
まだ子供で状況を飲み込めていなかったツバキさんは大好きなお姉さんがいなくなった事だけは理解し、悲しんだそうだ
ツバキさんは大人になった今もずっとそれが気がかりで心配していたそうだ
今でも会いたいという想いが強いツバキさんの気持ちを私は叶えてあげたかった
「もしツバキさんが望むのならユリウスさんにお会いできるよう取り計らってみますが会ってますか?」
「本当ですか!不躾ですがお願いします!」
「分かりました。では行きましょうか」
「え?行くって何処へ?」
「勿論ユリウスさんがいる場所です」
私の言葉を不思議に思ったツバキさんの目の前に転移門を開いた
一度道場見ているからか驚きは少なかったが、まさかユリウスさんがいる王都にまで行くとは思ってもいなかったのだろう
ツバキさんはしばしの逡巡の後、王都へと向かう事を決めて転移門の奥へと進んで行った
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