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安全保障面・戦車基本編

★安全保障面・戦車基本編→装甲インフレーション


今回は純粋な装甲防御力(対打撃防御力)について考えてみよう。


異世界の脅威度が地球における中世から古代程度であった場合、日本の安全保障を考える上で装甲のインフレが発生する可能性がある。装甲のインフレとはどういう事かというと、超絶簡潔に言うと過剰防御力である。


中世から古代程度の脅威度の相手が現代装備に与えられる攻撃という物を考えると、たかが知れている。中世や古代の軍隊の主力歩兵装備において現代軍に対して有効な装備を考えると弓、投槍(アトラトル等)、投石器が真っ先に思い浮かぶが、これらの威力は強くても投石器(投石紐)のマグナム相当の威力が恐らくは限界だろう。これらの装備は歩兵相手になら現代兵士に対しても直撃すれば十分に有効に機能する装備だが、こと装甲車両類を相手にすると考えると有効なダメージを与える事は困難だろう。


無装甲の自動車であれば、弓矢、投槍、投石器による攻撃を操縦席目掛けて貫通させ搭乗者を狙ったり、投石器に関しては集中砲火を浴びせる事で車両その物を使用不能状態にまで破壊する事も可能かもしれないが、小銃弾に耐える装甲があれば、これも不可能である。


では、中世から古代相当の脅威度の勢力が現代軍隊の装甲車両を相手に完全に成すすべもないか、と問われればそれは否となるだろう。装甲車両に対して有効なダメージを与えられる可能性のある装備は中世から古代相当の脅威度であるならば所持している可能性がある。


それはバリスタやカタパルトである。これらは物によっては装甲車両に対して有効なダメージを与えられるだろう。カタパルトによって加速された大重量の岩がまともに直撃すれば、いかに装甲車両といえどダメージになる可能性が当然ある。恐らくはカタパルトは場合によっては戦車ですら破壊は難しくともある程度のダメージを与える事ができる可能性を秘めている装備だと言えるだろう。


しかし、カタパルトはその特性上、装甲車や戦車に大打撃を与えられるほどの物ともなると、かなりの大型の機械となっている可能性が推測でき、これにより装備の隠匿が困難で、射程距離や探索能力で圧倒している現代軍隊の真っ先の標的として破壊されてしまう可能性が一番高い装備でもあり、また、そもそもカタパルトは標的を狙って撃てるほどの精密性は無い為、対装甲車両用の兵器として見るには如何せん無理があるだろう。


となると、バリスタが残る訳だが、バリスタは恐らく現代軍隊からしても充分に気をつけなければならない脅威的な兵器だ。というのも小型のバリスタ程度であれば、その威力は精々、弓矢よりも強い程度、もしくは投石器(投石紐)相当だと推測できる為、対装甲車両用装備として見るのは、いささか無理があるが、中型から大型のバリスタであればその限りではないだろう。


まず、中型のバリスタは古代ローマ程の威力がある場合、古代ローマの文献によれば一般的に26kgの石を400m以上先まで飛ばす能力があったとされ、また、バリスタは槍を発射した場合に盾と鎧を装備した人間2人を貫通する威力があったと伝えられている。また、大型のバリスタになれば、より大きな物を発射する事が可能な物もあった。あとはサイズは不明なれど一説には古代ローマの記録によれば射程距離が1km以上先にまで達するバリスタもあったという。これは場合によっては命中距離次第では小銃弾よりも威力が高い物もあった可能性もあるかもしれない。と考えると、対小銃弾防御装甲程度の装甲車であればダメージを与えられる可能性も有り得ると言えるだろう。


また、バリスタはカタパルトとは違い、装備の隠匿が可能である。カタパルトが非常に大きい傾向にあったり、置き場所を選ぶのに対して、バリスタのサイズは中型から大型の物でも精々、現代の榴弾砲レベルである。森林地帯などであれば十分にカモフラージュする事ができるだろう。さらにカタパルトとは違い、射撃準備に必要な人手も少なく済む傾向にあり、命中精度も弓と同じ原理を用いた兵器である為に高い。これを考えるとバリスタはカタパルトよりも高い脅威度のある兵器だと言えるだろう。


しかし、如何に古代の超兵器であるバリスタであっても流石に現代の装甲車を相手にする場合には有効打を与える為には恐らくは至近距離を狙う必要性が恐らくはあるだろう。もしかしたら100m以内で撃たなければ有効打は難しいかもしれない。とはいえ、中世から古代程度の脅威度を持つ軍隊が用意できる恐らくは最大の対装甲兵器となり得るのがバリスタである為、このレベルの軍隊からすれば、至近距離を狙わねばならない点は目を瞑らなければならない点かもしれない。無い物ねだりは出来ないからだ。ある物を使わなければならない。


超大型バリスタ(一軒屋レベルのサイズ)を使用してカタパルトで撃てるレベルの岩を発射した場合は、戦車にも損傷、場合によっては部位破壊をする事ももしかしたら可能かもしれないが、こちらはカタパルトと同じでデカすぎて恐らくは現代軍の脅威にはなりにくいだろう。


つまり、現代軍が真の意味で気をつけるべきバリスタは中型から大型サイズの可能性が大きいだろう。


しかし、逆を言えばこの程度でしかないのである。つまり、現代軍が地球における中世から古代程度の脅威度の異世界勢力と対峙した場合、小銃弾防御以上の装甲で大抵の事は事足りる可能性が大きいのだ。なんなら、対小銃弾防御でも充分すぎる防御力だろう。先ほど、対小銃弾防御の装甲を貫く事ができるかもしれないと書きはしたが、現代軍が中型から大型カタパルトを遠距離で撃たれる事はあっても至近距離で撃たれる状況などそう多くは無いであろうし、例え至近距離で撃たれ槍が装甲を貫通したとしても、その後に例えば装甲車のエンジンにまで被害を及ぼす程の貫通力を得られるかどうかは疑問だろう。恐らくは貫通したとしても、内部へのダメージは限定的となる可能性の方が高いのではないかと思う。装甲に突き刺さるだけで、かなりの限界ではないだろうか。


なお、カタパルトやバリスタは火炎壺を投擲する事もあるが、こちらは今回は言及しない。今回は純粋に貫通力や打撃力で考察を行う。何故かと言えば、火炎壺を考察内容に踏まえた場合、それはまた別の考察になってしまうからである。如何に強力な防御力を持った戦車であっても頭上から、可燃性物質が入った大きな壺が降って来てそれが直撃した場合、例えば上部ハッチが開いていて戦車の乗員が銃座を使用している時にそれが起きれば大ダメージ不可避だからだ。もちろん、現代の戦車は対NBC防御がなされている為、ハッチがちゃんと閉まってさえいれば問題ないだろうが、状況が悪ければ、こういう事もあり得る。また、通常の装甲車や高機動車も当たり所と運が悪ければ致命傷になり得るだろう。特に軽装甲機動車や高機動車辺りは直撃したらかなりマズい恐れがあるだろう。


ちなみに火炎壺の中身の材料は古今東西で様々であるが、古代ローマや中世ヨーロッパを例に挙げると原油を使用していたり、東ローマ帝国においては、ギリシア火薬(現代でもどうやって作ったのか不明な謎の消火困難な可燃性物質)などがあったりする。火炎壺は火炎瓶の上位互換であると言え、火炎瓶が人間が投擲できる程の文字通りの瓶である事が多いのに対して、火炎壺は火炎瓶よりも内容量が多い文字通りの壺である。火炎壺と火炎瓶、どちらの威力が強いかと言われれば、火炎壺の方が圧倒的だろう。車両に直撃した場合の影響力についても確実に火炎壺の方が脅威である。


つまり、火炎壺は異世界勢にとっての一発逆転を狙える可能性のある装備なのである。これは、純粋な装甲の防御力(対打撃防御力)とは、また別の考察材料となってしまう為、今回は純粋に敵の攻撃が装甲車両の装甲自体に与えるダメージに関して考察していく。しかし、一応はこの様な攻撃方法も異世界勢にはある可能性があるという事だけはGGIKKを考える上では抑えて置いた方が良いだろう。


(豆知識!カタパルトやバリスタで発射した岩の直撃を仮に戦車が受けた場合にどれ程のダメージとなるのかに関しては海外の掲示板などでは稀に議論されているが、大抵は一生決着の付かない不毛な争いとなるのが大半である!何故ならばやった事のある人間も居なければ、カタパルトやバリスタの威力をどう評価するかですら大揉めするからである!)


話を火炎壺から防御力に戻すが、この小銃弾程度の防御力が最低あれば良いという状況は場合によっては日本の安全保障に驚くべき程の影響を与える可能性があるだろう。それはもう自衛隊の根底を揺るがす程の影響だ。


具体的に解説しよう。この状況、例えば自衛隊が所有する99式自走155mm榴弾砲や87式自走高射機関砲などといった装備があるが、これらは外見は素人目で見ると戦車にも見えるかもしれないが、実際の所は後方支援車両である。これらの車両は例えば10式戦車と肩を並べて最前線で敵と真正面から対峙する様な事は想定されておらず、10式戦車などが敵と正面で殴り合ってる時に後方から前線を支える為の支援射撃や自走高射機関砲は対空任務を行う。この為、素人目で戦車の様な外見をしているに対して、その防御能力たる装甲はかなり限定的だ。99式自走155mm榴弾砲の防御力は正式な公表はされてはいないが車体全周に渡って小火器弾の直撃や榴弾の破片などに対する程度を想定した防御能力であるという。87式自走高射機関砲に関しても同様だ。とてもではないが、最前線でいつ敵戦車と真正面から激突するかもしれない様な状況下で使う様な物ではない。戦車は通常、正面の装甲が最も分厚く、攻撃に出来るだけ耐えられる様な防御能力を有しているが、99式自走155mm榴弾砲や87式自走高射機関砲は敵の戦車砲をもしも真正面から受けとめようものなら一撃で爆散不可避だろう。


しかし、である。これは現代戦における状況なのだ。異世界に転移し敵の脅威度が地球における中世から古代程度の相手である場合、99式自走155mm榴弾砲や87式自走高射機関砲レベルの装甲でも充分に戦車の用途として使うのに十分な防御能力を発揮する可能性が非常に高いだろう。


地球の戦場では例えば自走砲を敵味方乱れる市街地戦において、その最前線に送り出し搭載している榴弾砲を水平射撃にして敵と戦うなんていう状況はハッキリ言って世界広しと言えど中々見れるものではないが(大抵、自走砲は後方から砲の角度を空に向けて発射する曲射がデフォ)、中世から古代程度の脅威度の相手と戦う状況においては、99式自走155mm榴弾砲が市街地戦で敵の真正面に進撃し水平射撃で敵と戦うなんていうロマン溢れる光景をやったとしても、防御能力的には恐らくは問題は殆どないだろう。


つまり、これまでは自衛隊においては74式戦車、90式戦車、10式戦車などが担っていた戦車としての任務を、他の多くの種類の車両においても代替する事が可能になる可能性が高いのである。


この状況は、日本の安全保障政策に確実に大きな影響を与えるだろう。具体的には異世界転移前に使用されていたレベルの防御力を持つ戦車の存在意義が問われる事になるだろう。中世から古代程度の脅威度の相手と戦う事を想定すれば、明らかに過剰装備なのだから当然と言えば当然と言える。


ただでさえ、異世界転移日本は金欠である為、過剰すぎる装備は削減するべきでは?という声が主に財務省辺りから出てきてもおかしくはない。いや、確実に出てくるだろう。例えば、現在、自衛隊の主力戦車である10式戦車は1両辺りのお値段が9億5千万円であるとされているが、これを中世から古代程度の脅威度の勢力に対応すれば良いレベルにまで防御力を削減した場合、そのお値段は確実に9億5千万円以下の値段にまで落とせるだろう。もしかしたら半額以下だって可能かもしれない。また、当然の事ながら10式戦車は現代戦を想定した様々な装備が搭載されているが、これらも有る程度を削減した場合にはさらに値段を堕とす事が可能となるだろう。調達価格や維持費を考えれば、防御力をここまで落とした戦車は非常に低コストな装備となる。


1両ではイメージが沸きにくいかもしれないが、これが自衛隊全体にまで広がれば、その分だけ防衛費を抑える効果が得られる。財務省としては、これで防衛が対応できる状況ならば、こうしてくれと言いたくもなるのは、異世界転移後の世知辛い財政状況を考えれば分かるだろう。


では具体的にどの様な事があり得るだろうか。


まぁ、一番正直、ロマンの欠片も無いのは(いや、逆にロマンあるかも……?)61式戦車でもT‐34でもシャーマンでもパットンでもなんでも良いんだけど、第一世代戦車相当の戦車を作るというのが考えられるだろう。中世から古代程度の脅威度の勢力を相手にする場合、そもそも20世紀初頭レベルの装備でも十分に超兵器の分類に入る為、これでも問題は無いだろう。イメージしやすい所で言うとドイツのⅣ号戦車J型でも問題は恐らくは無い筈だ(現代火砲に比べると7.5 cm KwK 40の火力は不足気味かもしれないが、防御性能的には少なくとも貫通面では問題は無い)。まぁ、第二次世界大戦の戦車ですら対戦車兵器による攻撃を想定した装甲有してる戦車の方が多い訳だから、求められる防御性能が小銃弾防御以上程度の防御性能じゃあ、場合によっては第二次世界大戦期の欧州における標準的な戦車以下の装甲でも中世から古代程度の脅威度の勢力を相手にする場合には問題は無いだろう。ちなみにT‐34の場合、某ニコニコ大百科ではガバガバ計算ではあるらしいが、その生産コストは1両辺り4280万~4810万円という試算もある為、仮にT‐34相当の戦車を生産した場合のコストカット率は凄まじい物となる。4280万~4810万円 VS 9億5千万円、どちらが安く済むかは一目瞭然だ。


なお、T‐34で言うなら、T‐34の主兵装は85mm戦車砲であるが、T‐34にはソ連やその他の国において様々な派生車種が生産されており、エジプトやチェコスロバキアではT‐34に100mm砲や122mm榴弾砲を搭載した砲塔を採用している戦車や自走砲が。ブルガリアではT‐64(115mm砲)の砲塔をポン付けする魔改造を採用している車種も開発されている為、火力をアップさせる余地も充分に存在する(※ただしブルガリアのT‐64の砲塔をポン付けT‐34は戦車ではなくトルコとの国境線に設置された要塞に設置された戦車流用砲台。詳しくはT‐34/115で検索!検索!)。


ただ、さすがにこれでは21世紀感が足りない!という方も居るかもしれないので、もっと考えてみよう。


もっと現代的な装備で言えばウクライナで実戦投入したら防御力低すぎてボッコボコにされたフランスのAMX‐10RCレベルの防御性能の戦車を作るのも有りだろう。なんだったら、AMX‐10RC自体を戦車として採用しても良い。現代兵器を相手にせず、中世から古代程度の脅威度の勢力を相手にするにはこれでも充分だ。ただ、AMX‐10RCはコストが一部の主力戦車よりも高いという話もあるので、それだったら下位互換のERC90装甲車の方を戦車に採用するというのも有りかもしれない。


他には奇抜な考え方とすれば例えば、こんな事もあり得るかもしれない。


それは戦車と自走砲の役割の融合である。いや、実質的にはこれから話す内容は自走砲による戦車の役割吸収と言った方が良いかもしれない。99式自走155mm榴弾砲は中世から古代程度の脅威度の勢力を相手に使うには製造コストが高い為、もしかしたら除外されるかもしれない為、1ランクダウンした自走砲である75式自走155mm榴弾砲であえて今回は説明させてもらうが、例えば、戦車兼自走砲として75式自走155mm榴弾砲を異世界転移後において生産したとしよう。


当然の事ながらこれを地球で行えば、自走砲を戦車として使うなど言語道断という話になるが、先ほど言った様に中世から古代程度の脅威度の勢力と戦う事を想定した場合には、これで特に防御能力的には問題はない。


また、防衛費削減の効果もやりようによっては得られるだろう。現在、自衛隊は戦車を450両、自走砲を164両、保有しているが、異世界転移後に、自走砲(19式装輪自走155mm榴弾砲の様なトラックタイプは除外。99式自走155mm榴弾砲や75式自走155mm榴弾砲の様な戦車的な外見のタイプの自走砲)に戦車の役割をやらせて、それを自衛隊全体に波及させた場合、異世界転移前は10式戦車を含む現代戦車で構成された戦車450両が、戦車の役割を持たせた自走砲に変化する事になる。すると、残りの自走砲枠の164両の方に関してだが、考えようによっては、もう自走砲が450両もあるんだから164両は要らなくね?とその様な考え方をする事もできるだろう。この場合、戦車と自走砲を別々に作り続けた場合には戦車450両、自走砲164両で合計で614両を生産しなければならなかったのに対して450両の生産で済むという事になる。つまり、それだけ予算がかからないという事である。


他には戦術的メリットとして戦車を兼任しているとはいえ、自走砲の数がこれだけ増える為、これまでは自走砲を使う場合には後方の部隊の配備状態を良く考えなければならなかったのが、戦車が全て自走砲として運用できる為に作戦の幅が広がるという様なメリットも得られるという可能性が考えられるだろう。


だが、自走砲の攻撃で戦車の役割が務まるのかという疑問あるかもしれないが、火力的には問題は無いだろう。そもそも自走砲の火力は非常に高く、また、中世から古代程度の脅威度の勢力を相手にする分には充分である。問題点とすれば、75式自走155mm榴弾砲を基準にすると、戦車に比べて移動速度が遅いという点と大口径砲故に搭載できる砲弾の数が戦車よりも少なくなるという点などが挙げられるだろう。また、その他には戦術的な面としてこの方法を行うと自衛隊は既存の戦術とは全く違う戦術を構築する必要が出てくる為に、その新たな戦術を生み出す為の研究が必要になるという点も見方によっては問題点と呼べる点と言えるだろう(まぁ、戦術の研究という観点で見れば中世から古代程度の脅威度の勢力を相手にする時点で研究の必要性は避けられないかもしれないが……)。


と、この様に戦車に必要な防御性能が低くなる事によって場合によっては自衛隊の有り様が異世界転移後には大きく変容する可能性があるだろう。


ただし、注意しなければならない点は、これが本当に地球基準での中世から古代程度の脅威レベルしか異世界勢が持ちえないのであれば問題ないが、異世界ファンタジーという事を考えると一概には上記で紹介した様な対処方法では問題が発生する可能性があるという事だ。


例えばだ。バリスタ一つを取って見ても、異世界系作品の中には対空バリスタなんてものが存在する作品も多くある。対空なんて銘打っているのだから、古代ローマのバリスタの性能を越えている可能性は当然考えられるだろう。実際、そういう作品も数多く存在する。という事は、上記では小銃弾防御の性能さえあれば、よっぽどの事が無い限りは大丈夫とは言ったが、もしかしたら小銃弾防御では足りずに装甲を貫通するという可能性も有り得るだろう。もしかしたら小銃弾防御程度では槍が装甲を貫きエンジンにまで突き刺さり車両を無力化する事が可能な超技術バリスタも異世界には存在しているかもしれない。


魔法もそうだ。当然、異世界ファンタジーなのだから魔法の存在が考えられるが、放たれる魔法の威力によっては、実は現代戦車の防御能力ですら危ない魔法だってあるかもしれない。


魔法もそうだが、異世界ファンタジーと言う事を考えると、これもやはり当然、ドラゴン等の飛行生物の存在も考える必要性があるだろう。例えば、ドラゴンが口から炎を吐いたり、魔法を使ったりしないのであれば、その脅威度はまだ低めに見積もる事もできるが、ドラゴンにその様な能力がある場合は、吟味が必要だろう。例えば、ただ火炎を吐く程度であれば、それは火炎放射器の様な物と考える事ができるが、火炎放射器程度の威力であれば、第一世代戦車でも耐える事は可能だ。しかし、火炎放射器以上の超高温であったり、破壊力が強力である場合では温度や放射時間、威力によっては現代戦車ですら甚大なダメージを受ける可能性も当然考えられるだろう。また、火球を放ってくる作品もあるが、その火球が装甲が融解するレベルの超高温ではなかったり、もしくは爆発性を伴っていなければ問題は無いが、作品によっては直撃を受けた建物が爆発する様な描写がある作品も存在する為、その様な威力を持つ場合には現代戦車でも危ないという可能性は当然考えられるだろう。ドラゴンと言う事で真っ先に思いついた炎系で話を進めたが、それ以外の属性でも威力次第では当然脅威になり得る。


つまりだが、結局は一番の基本に立ち返ってしまう訳だが、必要な装甲の防御能力は相手の持つ脅威度によるという事だ。小銃弾防御で大丈夫な相手ならば、その防御力で問題ないし、逆に小銃弾防御では足りないのであれば、それ以上の防御力を。もっと必要な場合はその必要性に応じて防御能力が必要であるという事だ。


では、ここからは、もしも異世界勢に対する陸上戦力の装甲が最低でも小銃弾防御程度でなんとかなる世界であった場合、自衛隊から本当に現代レベルの防御性能の戦車が完全に必要なくなってしまい消えてしまうのかについて考えてみよう。


結論から言えば、現代レベルの防御性能の戦車は数は大きく目減りするかもしれないが一定の数は恐らくは必要になるのではないかと考えられる。


まず第一に、防衛技術のレベルを維持するという名目で一定数が維持される意義があるというのは予算を得る為の理由付けとしてはしては、あり得るだろう。ただ、これでは財務省が首を縦に振るにはまだ理由が弱い可能性がある。なぜならば、財務省から、いや、でもその防衛技術を使う相手がこっちの世界には居ないんでしょ?と言われたらそれまでだからだ。もちろん、地球にまた転移して戻るかもしれないじゃないですか!と防衛省は主張もできるが、国の財布を預かっている財務省がそれで納得するかどうかには疑問がまだ残るだろう。何故ならば、地球に戻れるかもしれないが、このまま永続的に戻れないかもしれないからだ。


ではこれ以外にどんな理由が考えられるのかと考えれば、それは実は安全保障的な理由として考えられる。それは国内の勢力に対抗する為の装備としてだ。


日本国内には在日米軍が存在し、転移の範囲によっては北方領土も転移に含まれ、ロシア連邦軍も存在する事になる。また、それ以外にも外国軍が日本近海に居て転移に巻き込まれている勢力や日本に演習などで来日している勢力もいるかもしれない。国内に潜伏している各国の諜報機関の存在もある。


これらの存在は政府として公には脅威的存在としては扱われる事は無いだろうが政府の内々では潜在的な脅威として考えられる可能性があり得ると言えるだろう。という事を考えると、最悪の場合、日本で国内勢力同士で有事が発生した場合などを考慮すると、現代兵器の砲口が自衛隊に向く可能性が考えられるのだ。現代兵器に対処するには現代兵器が必要不可欠である。


この為、仮に異世界勢の脅威度が低くても数は減るかもしれないが一定数は万が一の事を考慮すると現代水準の防御性能を持った戦車は必要になる可能性が高いのではないかと考えられる次第だ。


なお、これは最後に余談であるが、仮に転移先の異世界勢の脅威度が小銃弾防御程度の装甲で対処可能である場合、これは上記にも記した通り、自衛隊にも影響が出てくるが、それと同時に国内の外国勢力にも大きな影響を与えうるだろう。


例えば、在日米軍は現在、日本国内に戦車は配備していないが、異世界勢と戦う事を想定した軍備を整えようとした場合、やろうと思えば自力で戦車を作る事ができるだろう。というのもだ。対小銃弾防御程度の装甲の戦車となると、最悪、民間トラックや工事車両を用意して、それに装甲版を張り付けて最後に砲塔を付ければ、あっという間にDIY戦車の出来上がりとなる。ハッキリ言って正規品の兵器と比較すれば質は恐らく最悪だが、異世界勢の脅威度が小銃弾防御程度の装甲で対応が可能ならば、これでも十分に戦車としての役割は果たせるだろう。


つまりだが、現代戦車を作ろうとすれば莫大な開発費や生産コストなど、その他諸々が色々かかって、異世界転移後の日本において外国勢力が日本の援助なしに現代戦車を自力で作る事はかなりの至難の業となるが、DIY戦車レベルの戦車で良いのであれば、開発費はそんなにかからず、高度な生産設備も必要ではない為、自力での開発が恐らくは可能であるという事である。それでいて、異世界勢の脅威度が高ければ、こんな物(DIY戦車)なんていくら有っても気休め程度の物にしかならないだろうが、異世界勢の脅威度がそこまで高くなければ、有れば戦車として機能する可能性が充分に有る兵器でもあるのだ。


姿のイメージとしては中東やアフリカの国の軍隊や武装勢力が日夜やっている様な民生品改造兵器を想像してもらうと恐らくはイメージしやすいだろう。簡単に作れコストもかからないという事は、外国勢力からすれば、かなりお手軽に戦力の増強が可能であるという事になる。これは非常に重要な点であると言えるだろう。


また、DIY戦車でないにしても、例えば自衛隊が異世界勢の脅威度に合わせて防御性能を大幅に落とし価格も大幅に落とした戦車ないし装甲車などを開発した場合、自衛隊も安い装備を導入できるが、外国勢力からしても、現代戦車よりも購入する価格的難易度が大幅に下がる為、購入の契約を取り付ける事ができれば、現代戦車よりも安く戦車や装甲車を入手する事が可能になるだろう。


ようは、異世界勢の脅威度が低ければ低いほど、自衛隊も日本国内の外国勢力もコストを掛けずに軍備を整える事が可能になるという訳である。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手が現実基準かファンタジーかで防御が変わるなら10式のようなモジュラー装甲方式の車両になりそうですね。中の装甲材変えれば脅威度の上下にも対応できるし普段は最低限の装甲にして軽量にしておけば…
2024/04/02 19:25 退会済み
管理
[良い点] なるほど…中世レベルの軍隊相手ならば戦車級の防御力がいらないというのは納得ですね。 詳しいデータはありませんが、あの戦車砲に榴弾砲、そして対戦車ミサイルの評価試験を経て実用化してる複合装甲…
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