海上交通面・現代版帆船導入説
★海上交通面・現代版帆船導入説→大航海時代かな?
近年、脱炭素の世界的な風潮の過熱化により、時代が逆行しているとも見て取れる事象が海上交通面において起きようとしている。それは帆船の復活だ。
帆船は古代の時代から現代に至るまで使用され続けている風を受けて推進する船舶である。現代においてもヨットなどでよく見られる種類の船舶である。しかし、ここ100年内において、帆船は急速に衰退した。
かつてエンジンの類がまだ無かった時代、人類最大の移動機械は帆船であった。ガレー船、ガレオン船、戦列艦、ジャンク船と人類は様々な帆船を製作して海を制覇していた。しかし、エンジンの発明によってその風潮は大きな変動を迎える事となった。
人類はついに風を使わなくても大型の船を動かせる力を手に入れたのだ。そして今日、帆で大型船を動かすという行為は圧倒的少数派となった。現在、帆で大型船を動かす事をしているのは、練習船、保存船、実験船、趣味など、極僅かな割合でしかない。数千年、下手をすれば万年単位で使われ続けた帆船からの脱却に人類はついに成功したのである。
しかし、それがもしかしたら変わるかもしれない話が近年現れている。それは環境問題を理由に全世界で環境活動家らが、海運に対して物申し始めたからである。曰く、船を動かす事によって二酸化炭素が排出され、地球温暖化に繋がるという事だ。
日本から見れば率直にバカなんじゃないか?とも思いもするかもしれないが、欧米諸国では環境活動家の影響力が強い為、こうした声を海運業者も完全には無視できないという事情が存在している。環境活動家らの中には化石燃料を使用する船舶に対して課税を求める声も出ている。
この為、欧米諸国の海運業界を中心に近年、注目されているのが帆船の復活なのである。しかし、ここで言う帆船とは現代の帆船であって、決して100年前の帆船とかではないという点は言っておこう。
そもそも、帆船が海運業界において注目されたのは何もこれが初めてではない。かつて中東戦争等によりオイルショックが起こった時期に石油価格が高騰した事によって初めて現代の帆船というのが議論される様になった。
現代の帆船の姿はちょっと想像つきませんねぇ……という人はぜひ「タンカー 貨物船 帆船」もしくは「タンカー 貨物船 帆」をコピペして画像検索で見てもらいたい。そうすれば、現代の帆船の姿をお目にかかる事ができるだろう。
だが、オイルショックが終わり石油価格の問題が終息すると、石油価格の高騰に端を発した現代の帆船の話は立ち消えとなった。しかし、時代が進み、海運業界に新たな試練が始まりつつあった。そう、環境活動家の批判という名の荒波である。
欧米諸国そして造船業の発展している日本を含めた国々でもこの荒波に対して、思考を巡らせる事となった。欧米諸国は分かるとして、なんで日本まで?とも思うかもしれないが、これは考えてみれば当然な話で、もしも欧米諸国が何か手違いがあって欧米諸国の海運業界が帆船に逆行してしまえば、これまで通りの船は売る事ができなくなってしまうのだ。
この為、日本などの造船業界を牽引している他の国々においても現代の帆船について考える必要性があるのだ。あとは、もしも海運業界が帆船に逆行した場合に、それまで通りの方式の船を使用し続けた場合に欧米諸国からの批判が出る事が考えられるから、その対策で必要だという面もある。
日本の石炭火力発電の技術は普通の石炭火力発電よりも非常にクリーンな発電技術であるにも関わらず、ただ石炭を燃やしていると言っただけで、欧米の環境活動家らが盲目的に批判をしてきた事は記憶に新しい。これによって日本はそれまでこのクリーンな石炭火力発電の技術を今後も活用していく方針であったにも関わらず、脱石炭へと方針転換をせざるを得なくなってしまった。これは一方間違えると他の業界においても似た様な事態が起きる可能性があるという大変危険な実例なのである。
こうして帆船は忘れ去られる存在から、一転して再び世界各国で研究が加速する事となった。その研究は幸いにしてオイルショック時に研究された内容が存在した事から、それらを下地に研究がされる様になった。
では現代の帆船とはどの様な物なのかについて簡単に紹介しよう。
まずは純粋に風を動力に動く事ができる純粋な意味での帆船である。まぁ、帆船とは言え、旧時代の帆船では無く、これから紹介するどの帆船にも言える事ではあるがコンピューター制御を受けた物となっている。
あとは、帆が風を受ける事で発電しその電力で航行を行う帆船。
帆で風を受けて推進しつつも、それと同時にこれまで通り燃料を使って航行するハイブリット方式の帆船。帆が風を受ける事で発電しその電力と、これまで通りの燃料を使って航行するハイブリット方式の帆船。これらは、風の利用によって燃料の消費を少なくする事ができる物だ。
帆による発電と帆が受けた風を動力にした航行のハイブリット方式の帆船。これは燃料を一切消費しない物。
と、とりあえずは大まかに紹介すると恐らくはこんな感じとなるだろう。これらの内、既に実現しつつあるのが、純粋に風を動力に動く事ができる純粋な意味での帆船と、燃料を節約するタイプの方のハイブリット方式の帆船だ。帆が風を受けて発電した電力で航行する帆船や、帆による発電と帆が受けた風を動力にした航行のハイブリット方式の帆船はまだ実現したという話は少なくとも私がリサーチした所では見つける事ができなかった(大型船に関して)。
純粋に風を動力に動く事ができる純粋な意味での帆船としては、スウェーデンの海運会社Wallenius Marine( ワレニウスマリン )、スウェーデン海洋調査センター、スウェーデン王立科学アカデミーが共同で開発を行っている帆船が世界的に注目されている。
スウェーデンは全長は200m、幅40mにもなる世界最大の帆船(帆で風を受けて航行するという意味合いでの帆船)を設計した。この帆船は、北大西洋を最大7000台の車を積んで平均10ノットの速度で横断する事ができる様に設計された(一般的な貨物船の平均速度は12~13ノットであるとされる)。この船は2025年に運航開始を予定している。
成功すれば、帆船でこれだけの大量輸送が可能であるという事を証明できるのだ。なお、この帆船は車7000台を搭載して運搬できる自動車運搬船として設計されたが、この帆船の形状は完全に船体上部を帆が占有している状態である為、コンテナ船として使用する事は構造上難しいく、それは今後の課題なのだという。
以下の〈〉内はスウェーデンが開発している現代版帆船を紹介している記事のタイトルだ。知らない方はぜひ一見する価値はある為、コピペして検索をして見てもらいたい。
〈 最新の輸送船は「帆船」!? 現代に蘇った風力利用の新しい船舶デザイン 〉
ハイブリット方式の船は既に日本、アメリカ、欧州などで実験的に運用が既に開始されている。日本においては三菱と三井がこの手の分野では先行している様に見える。三菱は既に、ハイブリット方式の帆船を海外の企業と協力もしながら就航させている他、三井は松風丸という船でハイブリット方式を初導入し2035年までに80隻にまで拡大する方針を示している。
これら、すでに実用化の目途が立ちつつある、純粋に風を動力に動く事ができる純粋な意味での帆船や、ハイブリット方式の帆船は、異世界転移後の日本の海上交通面を考える上で、非常に大きな参考となるだろう。
というのも、異世界転移後の日本は慢性的な燃料不足の状態に陥るのだ。自動車交通の面で言えば、石炭自動車(木炭自動車)を運用すれば、石炭、木炭、薪を燃料とする事ができる事から、ある程度の輸送能力の維持は可能である。なんなら、仮に石油が見つからなくても、異世界の地で新たな石炭なり木材を採取して燃料とすれば、運用する石炭自動車の数は増やす事も可能だ。
しかし、海上交通における大型船の運行については、確実に日本政府は大きく頭を悩ませる事となるだろう。既存の大型船を運用するには石油系や天然ガス系の燃料が必要不可欠なのである。石炭が採掘できるのだから、石炭動力船を導入すれば良いのではないかとも思えるが、日本の石炭は採掘コストが高いのである。これを考えると大型船の運用コストは非常に高いのである。異世界の地から新たな炭鉱を作り石炭を採掘するにしても、安定して大量の石炭が供給できる様になるまでの間、どうするのかという問題が浮上するのである。
運行させる事自体は可能である。国内には上手く使えば2年以上は持つ可能性がある程の備蓄石油があるのだ。しかし、政府からすれば先の見えない状況下で備蓄石油の運用は出来る限り、節約したいというのが本音だろう。
そこで導入される可能性が浮上してくるのが現代の帆船だ。
純粋に風を動力に動く事ができる純粋な意味での帆船であれば、燃料は必要無く運行する事ができる。200mクラスの貨物船で車7000台レベルの貨物の輸送が可能だというのは非常に異世界転移後の日本にとっては大きな参考情報となり得るだろう。また、ハイブリット型についても、燃料は消費してしまうが、それでも燃料消費量の節約に大きな効果がある。
これら帆船の利点と異世界転移後の日本の厳しい燃料事情を考えると、異世界転移後の日本における大型船の運用は、少なくとも民間船舶においては、帆船が導入される可能性は大いにあり得ると言えるだろう。もしかしたら、異世界転移後に新規に建造される貨物船やタンカーの形状は、スウェーデンが開発している帆船と似た様な形状が主流になっているという様な可能性もあるかもしれない。
もっとも、異世界の魔物が海上交通面・治安編狂で紹介した一番最悪のレベル位にまで狂暴過ぎる場合は帆船は導入できないという可能性もあるかもしれない。結局の所は帆船が導入されるか否かは異世界の海上の情勢にかなり左右されると言えるだろう。




