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林業面

★林業面→需要!需要!需要!需要があり過ぎる!!!!!


日本は世界有数の森林大国である。日本国土の実に3分の2は森林であると言われ、この内、40%は人工林となっている。この人工林は戦時中や第二次世界大戦後に復興の為に多くの木々が伐採された事から新たに植えられた物で、当時の日本の方針として素材として価値の高いスギやヒノキなどを中心に植えられた。


当時の日本政府としては、こうして植えた人工林を使って日本を世界有数の木材輸出国にしたかったという思惑があったとされている。しかし、現在、日本が世界有数の林業大国であると思っている人は殆ど存在しないだろう。それもその筈だ。


なぜなら、この日本の政策は結果的に見れば花粉症患者を増やしただけで事実上完全に失敗してしまった。というのも、戦後、復興の最中、不足する木材資源を補う為に政府は1964年に木材輸入の自由化を行った。当時、日本の木材は既に多くが切られた状態で、新たに植えられた物も直ぐには切る事ができない状況だった。この為、日本産の木材は資源減少に伴い価格が高騰していた。


すると、輸入解禁によって海外から安価な木材が国内に流入し、日本人はこの外国産の安い木材を当然、買う様になった。これにより、国産の高い木材の需要は減る一方、外国産の安い木材の需要は伸びて行った。さらにはこれを後押しする様に1973年からは円高の状態へと移行した事により、外国産の木材を買うハードルはますます低くなった。


時代は進むと植えた木々が育ってきた。日本産の木材価格は世界的に見てもかなりの安価な状態にもなった。これでようやく日本の林業も外国の木材に押されずに済む!と思ったが、現実はそうはならなくなった。既に日本社会は外国の木材に依存する体制が出来上がってしまい、林業を営む人も最盛期に比べて壊滅的に減少し、また日本の経営的な問題など様々な問題も悪魔合体した。


これにより、1960年代は凡そ9割の自給率を誇っていた日本の木材自給率は現在では2割から3割程度にまで激減。世界有数の森林資源を持っているにも関わらず、国内の森林資源は手付かずの状態となり(手付かず過ぎて国は負債を負い(植えまくったから)、林業の担い手もどんどん消滅、林業の仕事が無くなって地方からは都市部への人口流出の一つの要因ともなり、管理しきれなくなった人工林の環境が荒廃もしている)、外国の木材に依存しきるという歪な現在の日本の木材事情を形成する事となった。


これが一応の現在に日本の林業の状態、いや惨状の簡単なあらすじだ。簡単にあらすじを作ったが、実際はもっと複雑な他の衰退要因も存在すると考えて良いだろう。とにかく、間違いないのは日本の現在の林業の状態が国内には森林資源が溢れているのに、外国の木材資源に依存している状態であるという事だ。そしてこの事は異世界転移後の林業を考える上で非常に重要な事となる。


異世界転移という事を考えれば、日本のこれまでの林業における政策失敗はむしろプラスに働くだろう。なぜならば、手付かずと言う事は日本国内にはそれだけ、膨大な量の森林資源が存在しているという事である。それでは異世界転移後の林業の動向について考えてみよう。


今回は雇用、需要、問題の観点から考えてみる。


まずは、雇用にかんしてから。雇用は確実に現在よりも大幅に、遥かに、強大に、拡大する可能性が大いにあるだろう。というのも異世界転移後の日本の林業の需要は恐らくは戦後以来の超特大需要となる可能性が大きいからだ。


恐らくは異世界転移によって日本中に溢れかえった失業者(失業率30%から40%)の新たな雇用先の一つとなるだろう。もっとも林業だけで日本中に溢れかえった状態の失業者問題を何とか出来るかと言われたら恐らくできないだろうが、それでも、林業はかなりの雇用先となる可能性があるのは確かだ。


恐らくは都市部はともかく地方部の特に田舎における失業問題は林業の他、農業、場所によっては漁業とを組み合わせる事によって大幅に改善する可能性があるだろう。田舎であればすぐ近くに山林の他、畑を作れる耕作地、漁業ができる海、川、湖がある可能性が非常に大きいからだ。


(ちなみに、ほぼ観光だけで食ってる様な自治体は田舎でも失業問題は場合によっては解決しない可能性がある。というのも、作者の実家のある自治体は田舎に属しながら観光地であるのだが、周りに山はあるけど、畑を作れそうな土地が全然見当たらない。お年寄りの話によれば、昔はそこら中に畑があったらしいけど今じゃ建物がギッチリと敷き詰められている。作者の子供時代に辛うじてあった畑も今じゃ殆どが住宅地になってる。人口は村以上市未満という感じだが、作者自身の肌感覚からして林業やって限られた農地開発しても、いまさら農業できる土地殆ど無いのでは?という感じ。林業やっても作者の実家のある自治体は結構、詰んでるのでは……?と普通に思う。だって恐らく観光に依存しきってるから人口の大半が失業する。と言う事でこの様な身近にある感覚例から、例え田舎であっても、立地や街の形態によっては林業と農業だけでは失業問題を解決できない場合が恐らくはあると考えて良いと思う)


一方で深刻なのはやはり、山林も少なく畑もない都市部の失業者な訳だが、こちらはかなり悲惨な状況ではあるが、都市部では林業という側面から見れば林業できる山林が大幅に少ない為、林業で働く事を目当てに地方へと移住する人も恐らくは出てくるだろう。都市部からは恐らく、人口流出が遅かれ早かれ起こる可能性が非常に高まるだろう。都市部は仕事が不足しているのだから当然だ。林業以外にも農業や鉱山などでの労働を目当てに地方を目指す地方移住の流れが起こる可能性があるだろう。


なお、これはあくまで、都市部の人口流出が起こる "可能性" を示しただけであって、林業、農業、漁業、鉱山をやったからと言って、すぐに日本全体の失業率が大幅に低くなるという意味ではない事に留意。日本全体の失業率が10%から20%位にまで下がるには少なくとも10年以上の時間は必要だろう。


では次に林業で雇用を創出するには、そもそも木材に対する需要がなければいけない訳だが(需要がなければ雇用は生まれない。つまりビジネスとして成立しない)、異世界転移後の日本の木材に対してどの様な需要があるのかを考えてみよう。


まず考えられるのは、建築資材としての利用だろう。これまで海外から輸入していた建築用の木材は当然、輸入相手の海外が消滅した事によって必然的に日本国内で調達しなければいけなくなる。そして何より日本には豊富な森林資源があるのだからこれを利用しない手はない。つまりは間違いなく建築用の木材としての利用は始まるだろう。そして、建築資材以外では紙製品の需要も当然考えられるだろう。紙、トイレットペーパー、マスクなど国産木材が当然、広く利用されるだろう。異世界転移後、ある程度の時間が経過し経済が回復して大量消費社会が戻って来た暁には、もしかしたら日本全国の店ではレジ袋の代わりに紙袋が広く利用されているかもしれない。


また、異世界転移前にプラスチックなどの樹脂類などや金属類で製造されていた製品なども木材で代用できる物は木材での製造が行われる可能性があるだろう。例えば、皿からスプーンからフォークまで様々な食器類や、近年当たり前の様に広く見られる様になった樹脂製や金属製のテーブルやイスなどの家具類も木材化するかもしれない(イスやテーブルに関して言えば完全に先祖返り状態と言える)。ストローの様な物も民間向けの樹脂製品の大量製造が出来る様になるまではカバケバしてて嫌だとしても、紙ストローになるとか、触り心地がプラスチックに近いと言われる竹ストローになる可能性は非常に大きいだろう(ただし、紙ストローや竹ストローは2023年の最新の研究結果でプラスチックストローよりも遥かに有害な化学物質が含まれているという衝撃的な研究結果が発表されている為、場合によっては異世界転移後、プラスチックストローが再び製造できる様になるまではストロー自体がそもそも消滅するか、リサイクルプラスチックを利用した再生ストローに完全依存するかもしれない。なお、リサイクルプラスチックを利用した再生ストローは生産体制によっては購入できる対象が高齢者、障害者、怪我人、病人、子供などに限られるか、現在のストローの価格よりも大幅に高くなる可能性も有る(この様な購入制限を行う場合はもしかしたらストローは医療用品扱いで薬局や病院などでしか購入できないかもしれない))。


ここまでは超絶簡単に考えただけでも思いつく範囲だが、ここからはより深堀って考えてみよう。


次に考えられる木材に対する需要は燃料としての用途だ。異世界転移後、アラブレベルの石油が宝くじに当たるレベルで超絶運良く発見でもされない限り、石油不足の状態は最低数年から十年以上、最悪は永遠に続く可能性がある。


そうなると、当然、ストーブに使用する灯油が足りなくなる。また、資源の探索や生産体制の構築など諸々の必要なかかる時間によって一般人が電子機器や電化製品のちゃんとした新品をまともに買える様になるなるのが、最低でも転移後10年以上の時間がかかる可能性がある事を考えると、暖房の為の燃料として薪や木炭(木炭は薪から作られる)の利用が行われる可能性があるだろう。


また、暖房だけでなく石油不足の影響はガスコンロ用のガスの製造にも致命的な影響が出る為、料理を行う為の燃料として薪や木炭の需要が発生する可能性が考えられるだろう(一酸化炭素中毒事故多発不可避)。


この他、エネルギー面・超石炭時代到来!?編でも紹介した様に石油不足によって木炭自動車(石炭自動車)が導入されている可能性がある。木炭自動車が導入されている場合は、木炭自動車は燃料として薪や木炭を利用する事ができる事から、自動車燃料としての需要が発生する事も可能性としては充分に考えられるだろう。あとは、現在、日本国内の発電所の割合の内3%程、導入されているバイオマス発電用の燃料としての需要も考えられるだろう。


次に考えられる木材に対する需要はまさかの食用としての需要だ。異世界転移後の日本では確実に食料問題が発生する。それこそ転移してすぐ側にオーストラリアレベルで大量の食料を生産している国でも無ければ食糧問題はほぼ確実だろう。現在の食料自給率は38%。足りなすぎる。米の100%が唯一の救い状態だ。しかし肥料問題などもある為、事態はかなり深刻だ(肥料に関しては食料生産面・スリランカ参考になる説を参照)。


この状況下においては、もしかしたら普段は食べられなかった物が食べられる様になるかもしれない。木材もその中の一つだ。


遥か以前に、東京で期間限定のレストランで大鋸屑をさらに細かくする加工によってパンが作られ販売された事が話題になった話をしたと思うが(詳しくは食料面にて)、木はしっかりと加工する事によって一応、食べる事ができるのである。過去の実例もあり、第二次世界大戦中、ドイツでは大鋸屑を小麦粉に混ぜたパンが作られ、北朝鮮でも薬品に木の皮をつけて食べられる様にしたとされている。


現在は技術や研究の進歩によって第二次世界大戦中に作られた様な大鋸屑を混ぜたパンよりも、より美味しく食べられる大鋸屑の料理における利用法もしっかりと確立されてもいる。つまり何を言いたいのかと言えば、再びにもなるが、木は食べられるのである。


食べられるという事は食品として木材が利用される可能性も食料不足の状況を考えれば十分にあり得ると言う事だ。栄養学的には木は正直、微妙なのだが、少ない食材のかさまし等に使える点からドイツや北朝鮮を含め幾つかの国で使われてきた実績がある。そして、上記でも挙げた様に異世界転移後は様々な用途で木材が必要とされ多くの木々が伐採される可能性がある訳だが、伐採されると言う事は大量の大鋸屑などが発生する。この大鋸屑を何かに使えないかと考えるのは、以前、食料面でも言ったが、合理的な考え方だろう。何故ならば、大鋸屑の発生とはすなわち、見方を変えれば、大量の大鋸屑が日々、大量生産されているという事だからだ。


では木を使ってどの様な物が食べられる可能性があるのかについても考えてみよう。


(※警告!以下の内容をもしも実際に試して如何なる問題が生じたとしても作者は一切の責任を負いません。もし、やるなら完全に自己責任でお願いします。作者はあくまで作者がネットリサーチをして調べて出てきた内容や、作者の持つ知識から、こんなのができるかもしれないと考察した内容を単にまとめて書いて紹介しているだけです。安全性は一切保証できません)。


まず、考えられるのはドイツ等で実例もあるパンだ。小麦、大麦、米粉等でパンを作る際に大鋸屑(ここから先、大鋸屑と表記されている物は大体、パウダー状にする等の加工を経た物を指す事が多い事に留意)を混ぜる事が考えられるだろう。また、東京の期間限定レストランではパウンドケーキが提供されている事からパンと同じく小麦、大麦、米粉が利用されている様な菓子類での利用も考えられる。


ただし、日本における小麦や大麦の自給率はそこまで高くない事を考えると、米粉を使ったパンもしくはケーキ等の菓子(ケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキ、パンケーキ、ワッフル等々etc)に混ぜられる事の方が多いかもしれない。ハイブリッド的にはもしかしたら、比較的自給率の高い芋も使って、米粉の生地に芋と大鋸屑を練り込んでかさ増しした様なパンやケーキが生まれる可能性もあるかもしれない。


あとは想像すると不味そうだが、蒸すという工程がある事を考えると、カマボコやさつま揚げの様な魚肉を使った練り物類にもワンチャン、大鋸屑が混ぜられた様な魚肉と合わせて大鋸屑も混ぜちゃいました練り物が誕生する可能性もあるかもしれない。


これも想像すると微妙か不味そうだが、普通に炊いた米のかさ増し用として使われる可能性もやり方によってはあるかもしれない。そのままのご飯を炊く際に大鋸屑を混ぜて炊くという事は無いだろうが(無いと信じたい……無いよね……?)、例えば米と大鋸屑を混ぜて炊いてそれを原型が無くなるくらいにまで混ぜて融合させ、融合物を機械で某チネリ米の様に米の形に成形した後に乾燥させ、その乾燥した物と普通の米を一緒に炊いて使うとか。もしくは米と大鋸屑を混ぜるのではなく、芋とか他の物と大鋸屑を混ぜて作った融合物を成形して、かさ増し用の米とする事もできるかもしれない。


世の中には、お芋ご飯というご飯に芋が入った料理があるが、この芋を普通の芋を使うのではなく、芋と大鋸屑を原型が無くなるくらい混ぜてから、小さなブロック状に成形して焼いてそれから、お芋ご飯にするという方法もあるかもしれない。


餅(米を使う餅以外にも芋餅などなどにも)にも大鋸屑が混ぜられ大鋸屑入りの餅が生まれるかもしれない。


パンや米ときたら、あとは朝食の定番とも言えるコーンフレークがあるが、これもコーンの割合を減らして大鋸屑を混ぜるとかは可能かもしれない。とはいえ、トウモロコシは自給率がかなり低いとされている為、コーンフレークの様な物を作ろうとすれば米やもしくはそれ以外のそれなりに生産できている物で代用される可能性が高いだろう。もっとも、米を使った場合は、もはやそれはコーンフレークではなくライスフレークだが、このライスフレークや、何か代用品を使った何とかフレークに、大鋸屑を入れる事もあるかもしれない(というかコーンフレークないしライスフレークでも何とかフレークでも良いんだけど、作られた場合に何をかけて食べるのだろうか?転移初期の場合は牛乳は不足している事が予想出来る為、かけるなら牛乳以外をかける場面が増えるかもしれないが、その場合、一体何をかけるのだろうか……もしくは塩をかけてポテトチップスよろしく、そのまま食べるのかもしれない)。


大鋸屑練り物とか、大鋸屑米とか、大鋸屑餅に比べれば遥かにマシなのはお茶だろう。実は木を使ってお茶が作れるかもしれないという点だろう。というのもネットで木を使った料理を調べている時に木を煮てお茶を作っているという話がチラホラ聞こえてくる。中日新聞の記事では杉の木の木片を使ったお茶が紹介されている他、杉の葉を使ったお茶の存在がネット記事で多く散見される。一応、緑茶の自給率は90%以上あるとされているが、木と緑茶の価格、どちらがリーズナブルかという事を考えると、緑茶の木よりも圧倒的に山林には木が生えている為、もしも大量に流通した場合にはお茶葉ならぬお茶木は緑茶よりもお値段がリーズナブルになる可能性が高く、また入手難易度も低い事から、異世界転移後はもしかしたら、木を使ったお茶が現在の緑茶、麦茶、紅茶に匹敵する国民的な飲み物になっているという可能性もあるかもしれない。


東京で期間限定の大鋸屑ケーキを提供していた店のシェフの話によると大鋸屑から作ったパウダーは小麦粉の代用品としての可能性があるとしている事から、パンやケーキなど以外の料理の分野では揚げ物の衣の代用品として使える可能性もあるかもしれない。もっとも、揚げ物を考える場合、異世界転移後は食用油の不足問題が確実に起こると予想される為、揚げ物自体、超高級品化しているかもしれない為、その様な超高級品に大鋸屑を代用して使う様な事をするのかは分からないが……(代用品を使うにしても米粉とか使った方が良いと考える方がこの場合は多いのでは?)。理論上は揚げ物の衣にも代用する事ができる可能性はあるだろう。


恐らくだが木を料理として使う場合、大鋸屑の様な木が薄く細かくなった物(パウダー状でない普通の大鋸屑)か、大鋸屑をパウダーレベルにまでさらに細かくした物か、お茶を煮だす事が出来るくらいのサイズの木片であるとか、木の葉や、木の皮を使う事の方が多いかもしれないが(加工しやすいから)、もしかしたら研究次第では、輪切りにした木(丸太の輪切り)……なんて状態の物を食べる様にする事はできないかという様な研究もされるかもしれない。それが完成した暁には、それがどの様な料理になるのか、煮込み料理なのか、なんなのか分からないが、もしかしたら超絶加工の末に木のなんちゃってステーキの様な物がお目にかかれる可能性もあるかもしれない(えぇ……)。ちなみに輪切り状態の木を食べる試みはあくまで個人レベルだが、行われている。ただし、まともに美味しく食べられる状態の物をちゃんと写真付きの資料で提示できている物はネットを探しても見つける事は出来なかった。


上記よりももっと手間暇かけた食用としての木材の利用方法としては、人によっては少々嫌悪感を抱くような使い方もあるかもしれないだろう。ただし、こちらは人間が木を食べるという物ではない事には留意。


それは昆虫食用の昆虫養殖用としての木材の利用方法だ。例えばシロアリは木を餌に増殖し多くの人々を困らせている訳だが(シロアリ漏電ガンプラ全焼ニキ心を強く持って……)、これは逆を言えば木を使ってお手軽に増やせるという事である。例えばアリを養殖しようとした場合、餌として昆虫、ゼリー、果物などを必要とする場合が多いが、異世界転移後の日本でアリを食用とするレベルにまで大量養殖するというのはハードルが高いだろう。しかし、木を餌にしている虫であれば、木は文字通り山林に腐るほどある為、大量に餌がある状況なのだ。養殖のハードルは低くなっているだろう。これは昆虫食への扉が開かれているという事である。


シロアリは栄養価が高い事でも有名だ(昆虫食界隈で)。もしも大量のシロアリを量産できる体制を構築できれば、シロアリを使った昆虫食を普及させ国民の接種する栄養状況の改善に一役買ってくれるかもしれない。この場合、シロアリそのものをイナゴの佃煮の様にした物も食べられるかもしれないが、そのままでは食す側に抵抗がある事は簡単に予想が付く為、シロアリの団子やハンバーグであったり、成形肉であったり、ごはんですよみたいに完全に液状にしたご飯のお供だったり、ふりかけだったり、スープにしたり、最近有名なコオロギパウダー(コオロギを使った食用パウダー。ケーキなど様々な物での応用が世界的にされ始めている。日本では無印良品のコオロギせんべいが話題になった)の様にシロアリパウダーにしたり、あとはこれはシロアリに含まれる脂肪分の量にもよると思うが以前、食料面でも紹介した様に昆虫食研究先進国のベルギーではブユの幼虫を遠心分離機にかけてバターを作る事に成功している事から、もしかしたらシロアリでバターを作るなんて事も可能かもしれない。などなど、昆虫食の可能性は無限大だ。


昆虫食は虫を養殖する手間はかかるが、それでも栄養価は木をそのまま食べるよりかは遥かに、いや、アンドロメダ銀河と鼈ぐらいの莫大な差がある為、虫の大量養殖が技術的に可能であるならば、木を食用として全国に幅広く大量供給するよりも、昆虫を大量養殖して全国に幅広く供給させた方が栄養学的には最適解だろう。


もしも食用として木材が使用され、それと同時に昆虫食用の昆虫の養殖の為の餌として木材の利用が行われたとするならば(木材を餌とする昆虫の大量生産体制が整ったと仮定する)、日本社会が栄養的に最適化(栄養のある物を最優先)した場合には、利用開始からしばらくの後には、全国における流通割合は、食用木材よりも、木材で養殖した昆虫の方が高くなる可能性が大きいだろう。しかし、虫を食べる事に対する忌避意識が日本社会から抜けない場合は、食用木材と木材で養殖した昆虫の割合は栄養の圧倒的に少ない食用木材が勝利するかもしれない。こればっかりは完全に好き嫌いの領域だ。


また、昆虫は人間が食べないにしても養殖魚の餌にも使える為、養殖動物の餌としての用途にも使える可能性もあるだろう。


あと、これは食に関しての少々のおまけ的な要素の話だが、もしかしたらドングリの木の様な木は切られる事は少なく、場合によっては保護や新たに植えられる事もあるかもしれない。というのも、ドングリは食べられるからだ。皮をむくのは大変な作業であるが、その中身は食べる事が可能だ。


そのままでも食べる事は可能だし(アク抜きはしよう)、調理する事によってあっと驚く様な料理にする事もできる。縄文時代に縄文人がドングリを使ってクッキーやパンを焼いて食べていた話は非常に有名である(大昔の日本人はパン食していた)。実はクッキーやパンは、米粉パン、コーンブレット及びトルティーア、ポテトブレット、バナナブレッド、そば粉パン、野菜パウダーパン、大豆パン等々etc……類と言った物が存在する様に、やり方と材料次第では小麦や大麦を使用しなくても作れるのだ。


縄文パンと呼ばれる物は、ドングリ粉に水を加えて、こねてピザの様に平らに伸ばして焼いて作られていたという(俗に言うフラットブレッド)。また、縄文時代の後半にはドングリ粉の他、クリ、稗、粟などといった物や、シカ、イノシシ、野鳥などの動物の血を加えるなどして多様なパンが作られていたという。


異世界転移後、食料問題が叫ばれ、転移前の様になんでも手に入る時代も終焉を迎える為、少しでも食生活をよくしようと、ドングリを料理に使う事があるかもしれない。流石に全国全地域のスーパーで売られる程、大規模に流通させる事は無理だろうが(流石に全国に流通させる規模にするにはドングリの量が足りないと予想ができる為)、地域内限定であるならば、田舎などでは食べられる可能性はあるだろう。


ピーナッツやナッツの代替品みたいな感じで使うも良しだし、粉にして縄文パンを作るも良しだ(流石に動物の血は現代人は入れないだろうが……)。ちなみになんちゃって餡子の様な状態にする事もできるそうだ(ちゃんとした餡子と比べると不味いらしいが)。上手くドングリを入手できれば(拾ったりして)材料費を殆どかけずに、クッキーやパン、あと味は微妙かもしれないが饅頭だって作れる可能性もある為、これは結構、家計的に大きいだろう。


ちなみにネットでドングリを買う場合は現状、ドングリって実はクッソ高い。ドングリの1個辺りの平均的な重さは2.1gという様な話があるのだが、それを前提として覚えてもらって、その上で価格を見るとドングリ100個で1000円以上。ドングリ粉に至っては青森県産のドングリ粉は1kgで7800円以上となっている。めっちゃ高級品(外国産のヤツは400gで1000円以上。日本産が高い理由はそもそも日本ではドングリの需要が少ない為だと推測。異世界転移後には需要が生まれる可能性がある為、現在よりは価格は少し落ちる可能性はあると言える)。


地域内限定食材となった場合、仮にその地域内で販売が行われていたとしても、比較的安い価格で "地域内においては" 取引されている可能性もある(そこでしか売ってないから。世間一般では滅多に市場に出回らない幻の珍高級魚だが、その魚が採れる地元ではめちゃ安い現象と理屈は少し似ている)。もっとも、主食にできる程、大量にまとまった量を調達するのは難しいかもしれない為、その場合、家庭のお菓子のメニューに加わるかもしれない。


現代は縄文時代とは違い、パンを発酵させる方法が広く知られている為、ふっくらとさせた縄文パンが作られ食べられるという事もあるかもしれない。実際、縄文パンを作ると言いながら当時は無かったと考えられているイーストだとか重曹をばりばり入れて作ってる例もネットを探せばいくらでもあるので可能だろう。


もしくは今回考えた様な大鋸屑、虫、ドングリを悪魔合体させた究極の縄文パンが日本の何処かで産声を上げる事も……あるかもしれない……(ここで地獄先生ぬ~べ~のOP入り)。


と、ここまで木材の食に関する需要に関して考えてみたが、一応、言っておくと、仮にここに書いてある様な事が全て行われたとしても、食事の全てがこうなるという訳で言っているのでは無いというのは念の為、付け加えておこう。異世界転移後に必ずしもご飯に大鋸屑を入れて食べるという様な話ではない。世の中には白飯を食べている人も居れば、麦飯を食べている人も居る様に、今回の話もそれぞれの生活のやり方次第の話だ。たまに大鋸屑入り食品を食べる人が居るかもしれないし、かなりの頻度で食べている人が居るかもしれない、大鋸屑入り食品は全く食べない人も居るかもしれない。あくまで、そういう次元の話だ。


ただし、食料事情が日本中でとんでもない数の餓死者が出る様な事態になっていたとしたら、全ての食事に導入される可能性はあるかもしれないが……。


では雇用と需要はやったので最後に問題についても考えてみよう。


ここまでで林業がとんでもなく活性化する可能性がある事は分かってもらえたと思うが、ここまでの活性化具合だと実は様々な問題を引き起こす可能性がある。それを考えてみよう。


まず考えられるのは、森林の伐採のし過ぎだ。政府はしっかりと林業を徹底管理しなければならないだろう。管理をしなければ、際限なく切られてしまう可能性がある。違法伐採も脅威だ。ここまでの需要だと伐採が際限なしに行くとこまで行ってしまえば、その後に残されるのは山林を使い尽くした禿山だ。


こうなってしまえばもう最悪だ。山林は一度切ってしまえば、再び育てるのに植えても20年はかかる。また、木々は切り過ぎれば、雨などで地面の保水性を損なってしまう為、土砂崩れを起こす危険性が高まってしまう他、今まで木々によって遮られるなどして山から吹き下ろす風から守られていた場所などでは、直接強風に晒されるなど様々な問題が発生しうる。そしてなにより需要があったから切られる訳だが、木々を切り過ぎてしまえば需要に対して供給ができなくなっていく。


禿山で有名なのは北朝鮮だ。北朝鮮は農地開拓のための伐採や、経済が破綻した後、木炭自動車などの燃料として使う為に山林を伐採し尽くした結果、慢性的な自然災害の発生リスクと、木々を全て切った事による慢性的な燃料不足に悩まされる様になった。北朝鮮政府も対策を施したが、その時にはすでに手遅れの状態で、植林活動もやっているが、燃料がそもそも足りない為、政府が採るなと言っても勝手に採っていってしまうという悪循環に陥った。


木々な無くなるから様々な問題が発生するのに、燃料が足りなくて残った木々から植えたばかりの木々まで採ってしまう。採ってしまうから様々な問題が発生する。以下繰り返し……。


これは何も北朝鮮だけに当てはまる話ではない。異世界転移日本も、社会が木炭自動車を使っているレベルの燃料事情であれば、日本も一歩道を踏み間違えれば北朝鮮が迎えた悪循環に転落する恐れがあるという事だ。


北朝鮮を反面教師に、日本もこうならない様にするには、日本政府が徹底した林業の管理を行う必要があるだろう。毎年の伐採量と新たな植林量を厳格に管理し、また住民が勝手に木々を伐採しない様に規制や取り締まりを強化する必要がある。それでも違法伐採などは社会問題化するかもしれないが(政府に逆らったら強制収容所や死刑台送りの北朝鮮ですら伐採は社会問題になっている。つまり北朝鮮の様なバリバリの独裁統制国家でも統制しきれていない)、違法伐採などを行う企業、団体、個人に対して警察は絶対に捕まえるというという意気込みを持たなければならなくなるだろう(気合は大事。実際に仕切れるかはともかくとして)。


現在の日本でも違法伐採はそこそこ問題になっているが、捕まる違法伐採者はそこまで多く無い為、少なくとも違法伐採者の半分は捕まえるぞ!というぐらいの意気込みでなければならないだろう。ただ、山林は全国に幾多存在している為、警察だけでは業務過多(警察の仕事は他にも沢山、沢山あるから)の状態になるのは想像に難くない為、民間警備会社の他、場合によっては政府が新たに山林専門の山林警察みたいな組織を発足させる事もあり得るかもしれない。


また、木材を扱う産業に対する政府の適切な規制も必要だろう。過剰な需要の発生は伐採の動機に繋がる。木炭自動車なんかはかなりの例で、異世界転移日本で使われる木材の用途のかなりの割合が木炭自動車用の薪や木炭となっているという可能性はかなりあり得る話だと思うが、木炭自動車を大量に作り過ぎれば、それだけ需要が生まれる事から、木材を必要としてしまう。この為、政府は国内を走る木炭自動車の数を徹底的に管理する必要があるかもしれない。


他にも木材を扱う企業に対する木材使用量の規制も必要かもしれない。


様々な方策による林業と木材を扱う業界に対する政府の統制が持続的な林業を目指すには必需だろう。


また、切り過ぎの危険性を今、解説した訳だが、治安にも実は異世界転移後の林業活性化を巡っては影響してくる可能性もある。というのもこれだけの需要だ。そして木材は入手難易度が低い事を考えると、暴力団だとかヤクザであるとか半グレだとかetc……の様な犯罪組織の資金源の温床となる可能性がある。建物の材木に対する需要程度であれば、問題ないかもしれないが、今回のコラム?エッセイ?で紹介した様な燃料であったり食品といった広い分野にまで需要があるとこれはほぼ確実に問題となるだろう。


実際、たとえば現在、違法伐採が問題になっているが、捕まる人が少ないのは現行犯で捕まえられる難易度が高いというのも理由の一つとしてあると言われている。伐採の為に山奥に入るからだ。あとは人目に付いたとしても一般人から見てまさか作業着を着てチェーンソーで木を切っている人間が、あれ違法伐採の人だ!とはなりにくいだろう。普通に作業員程度に思う人が恐らくは大半だ。どうどうと行われている場合、専門的な知識が無ければ、相手がよっぽど怪しい動きでもしていなければ、普通の人に違法伐採を見分ける事は難しいだろう。つまり見かけられても通報がされないケースが多いと予想出来る為だ。


異世界転移日本では木は切れば切っただけ、売れる可能性がある。材木がそのままの状態では許可の無い業者は材木屋に引き取ってもらえないという制度を作り、それを厳格に材木屋が仮に守ったとしても、切った木を加工品に加工してしまえば、売る事など簡単にできる。まぁ、材木屋に売るという行為を規制するのも、異世界転移前ですら違法取引している業者もある訳だから、その時点で既に規制に穴が開いてしまっている訳だが……(木材には別に製造番号が記載されてデーターベース上で切った順から管理されている訳でもなんでもないので(そして、そんな手間暇かける事も労力がかかり過ぎてできない)、一度持ち込まれてしまえば、どれが違法に持ち込まれたかなんて見分けがつかない)。と、この様に犯罪組織の資金源の温床となってしまう可能性があると言えるだろう。


異世界転移後、日本の治安は転移前に比べて非常に悪化する事が予想される。この様な状況下において犯罪組織はぶくぶくと成長してしまう事が当然予想される。その様な前提がある状況下で木材が犯罪組織の資金源の内の一つとなる可能性が高いという事は、かなり頭の痛い問題だ。しかもこの問題のたちの悪いのが薬物などと違って木材自体は別に違法な代物という訳ではないという点だ。薬物を持っていればこいつ犯罪者!となるだろうが、木材は別に持っていても、こいつ犯罪者!とはなりにくい。つまり、警察が犯罪組織を検挙しようとしても、薬物などに比べてハードルが高いという事だ。これは異世界転移後の日本では大きな社会問題となっている可能性が大いにあるだろう。


何としても金を稼ぎたくて穴を探して潜り抜ける犯罪組織と、何としてでもこれ以上の治安悪化を防ぐ為に悪化要因の一つである犯罪組織の資金源を一つでも潰したい政府による、仁義なき戦い、いや、仁義なきイタチごっこが異世界転移後の日本では始まっている可能性があるだろう。


木を食用とする場合には栄養面でも問題があるだろう。昆虫食は栄養豊富だが、木を食す場合は、葉っぱとかならば、まだ栄養はあるかもしれないが、木の幹ともなれば問題だらけだ。確かに加工をする事によって食べる事はできる。しかし、木本体にはセルロースと呼ばれる食物繊維が大量に含まれており、人間はこれを消化吸収する事はできないのだ。食べても効果としては食物繊維なので腸を綺麗にしてくれる事くらいだ。つまり、ご飯やパンに混ぜてかさ増ししようが、食べている時はお腹いっぱいになれても、食べた木自体は全く栄養になっていないのだ。


これを考えると、異世界転移日本では食費を浮かせる為に木を混ぜた物を日常的に食べ過ぎた人が栄養失調で病院送りになるという事例が出てくる可能性があるだろう(学生が、うどんが安いからと言って毎日うどんに麵汁だけ、かけて食べてて、栄養失調で入院する人がたまに、ちらほら出るのと同じ現象)。政府や自治体はこうした事が余り多発しない様に、もしも食用の木なんて物が大量に流通している様なら、木には栄養が殆ど無い事を広く国民にアナウンスし、栄養のある物もちゃんと食べないといけない事を伝える必要があるだろう。


また、恐らくだが食物繊維という事は食べすぎによる体調不良にも注意を払う必要があるだろう。個人差はあるが、食物繊維は摂りすぎると、腹痛や下痢を起こす場合がある。お腹が減るから木で誤魔化しているのに、それで栄養まで一緒に出してしまっては元も子もないだろう。胃腸が元より弱い人は木は余り食べない方が良いかもしれない。


昆虫食にも問題が無いかと言われれば問題が無い訳ではない。栄養面では問題はないだろう。見た目以外は。だが、食べること自体に対しては特段の問題は無い。では何が問題なのかと言えば、養殖面でだ。これは山林資源を守る話にも直結する。


木を餌とする虫の養殖がどの様な方法で行われるのかは不明だが、もしも屋外やしっかり外界と遮断されていない場所で行う場合には細心の注意が必要だろう。というのも逃げ出す恐れがあるからだ。もしも、例えばシロアリが大挙して脱走したら大変な事になる恐れがある。養殖をする上で、養殖しやすい経済的な立地は恐らく山や森の近くになっている可能性がある。山や森の近くに養殖場を設ければ、木々の調達や場合によっては虫の調達などがしやすいと考えられる為だ。もしも、そこに養殖されていた虫が大挙して脱走し押し寄せたら……。考えただけでも恐ろしい事だろう。


貴重な山林資源が養殖虫によって食い荒らされる可能性がある。バイオハザードだ。また、養殖場が山林の近くではなく、街中にあったとしても、日本の一般家屋は多くが木材を使用している場合が非常に多い。住宅街に深刻な被害を及ぼす可能性があるだろう。ちなみにシロアリには羽があり飛ぶ。


こうならない様に、養殖業者には山林資源の保護や建造物の保護などの観点から見ても厳格な管理をする事が求められるだろう。養殖場から虫が大量流出しましたなんていうバイオハザードの発生をお知らせる防災行政無線(街中でデカデカと流される行政の放送の事。消防とか街のお知らせなんかが、よく聞かれる)は、ぜひとも聞きたくないね……。


木材の需要拡大による問題としては獣害も深刻な問題となる可能性が大きいだろう。木材を取りに木を伐採しに行くとは、それすなわち、野生動物のテリトリーを侵すという事である。伐採作業中に動物に襲われる可能性は当然あるが、それ以外にも恐らくもっと深刻なのが、動物が山林から人里へと降りてくる事による被害である。


木を大量に切れば野生動物達の生活を支えている重要な基盤が損なわれる。また、先ほど、ドングリが食べられる様になるかもと言ったが、ドングリはクマを含めた野生動物にとって重要な栄養源の一つ、つまりは餌である。また、ドングリ以外にも、食料問題からキノコや山菜の採取が転移前に比べてさらに過熱する可能性がある。そうなると、これらも野生動物にとっての重要な餌であると言う事を考えると、山林伐採による野生動物の生活基盤の破壊と悪魔合体して、山林全体で餌が不足し始め、餌を求めて人里へと降りてくるだろう。こうなると貴重な農産物を食い荒らされるかもしれないし、人が襲われ死者も当然出るかもしれない。


この問題に対処する方法は、もはや駆除しか有効的な手段は無いだろう。しかし、この問題の深刻な所はこの点なのだ。現在、日本の猟師の数は大変不足している。銃規制などを含む原因によって新たななり手が不足、猟師の高齢化によって日本全体の猟師の数が不足しているのだ。現状でも全国各地で獣害が深刻化の傾向を見せており、北海道や東北地方の獣害は恐らくは全国屈指のレベルで深刻化が進行している。


現状でもこの状況なのに異世界転移後に林業が活性化すれば、この獣害がさらにひどくなる恐れが当然出てくるだろう。


ではどれ位、異世界転移後の状況に対応するには現状の猟師の数では不足しているのかを考えてみよう。恐らく対応できる数として参考にできる値は、まだ日本の林業が生きていた頃の数値だ。1979年、日本における狩猟免許の交付数は45万件であったとされる。大日本猟友会によると、この45万件の殆どが猟銃を扱う銃漁免許だったそうだ。そしてそれから時は経ち、現在の数は約21万件の狩猟免許(ただし重複所有者ありで、狩猟者の実数は約15万人との事。また銃漁免許の数は減少し罠の免許が近年は上回っている)だ。


異世界転移後、森林の伐採を進めるに当たって、少なくとも、1979年における狩猟免許の交付数45万件の体制で行っていた頃の猟と同レベルでの猟が可能な数の猟師、もしくは猟ができる人員が必要となるだろう(もしも、免許の重複所持者の割合が今も過去余り変わらない場合は、もしかしたら異世界転移後に必要な猟を行う人材の数は大雑把に計算すると、30万人から35万人位かもしれない)。また、猟銃の免許は恐らく異世界転移後の猟においては必要な場面が多い可能性がある為、猟銃免許は必需かもしれない。危険な動物が人里に降りてくる頻度が高くなる恐れがある為、即効性のある銃が必要となる可能性があるだろう。また、異世界ファンタジーという事を考えると魔物が日本にも発生するという可能性も有り得る為、そうなった場合は余計に銃が必要だろう。


だが、現状15万人しかいない状態から、狩猟免許の交付数45万件の頃の体制と同水準の狩猟を行う事は非常に難問な事業だ。猟師が衰退したのは衰退したなりに理由がある。まず、よく言われるのが銃規制を強化した事による弊害により減少したという物から、狩猟免許を取るに当たっての厳しさ、一定の資金力が必要とされるなどなどが言われている。政府は場合によっては猟師を増やす為にこうした規制や免許制度の緩和、補助金などをしなければならないだろう。


日本は失業者であふれている為、規制緩和や補助金等を出せば、新たななり手は数年程度で集まる可能性はあるが、問題自体の大幅な事態解決は、どんなに早くても流石に数年程度では問題の解決は困難だろう(仮に30万人から35万人の人材が必要だと仮定して、プラスで15万人から20万人は新たに入ってくる計算になるが、元々猟とは全く関係の無い分野からの失業者が入ってくる可能性が高く、どれくらいで使い物になる様になるのかなど不確定要素が多い)。


こうなってくると、警察や自衛隊の関与が必要になってくる可能性もある。


警察の場合は街中に動物が現れた場合には転移前は猟友会と一緒に行動して猟師の補佐役にまわっていたものが、警察のみで対応を行う事も考えられるだろう。この場合、パトカーには外国の警察がマシンガンやショットガンを置いている様に、日本の警察のパトカーにも猟銃が配備されているかもしれない。また、場合によっては人里離れた山林の周辺や、畑をパトロールする光景も見られるかもしれない(もしも前言った山林警察みたいのが出来てるなら、山林周辺のパトロールはそっちに丸投げするのもありだろう。畑のパトロール自体は動物は例え大丈夫でも治安悪化の問題もある為、必要だろうが)。


自衛隊はなんといっても自動小銃を扱ったり、自然の中で活動をする訓練を日頃からしている事から、警察以上の即戦力となる可能性がある。警察官の多くは長物の銃なんて殆ど扱わないから、配備する場合は講習なり訓練が必要だが、自衛隊の場合はなんなら、猟銃ではなく、そのまま自動小銃を使っても良いかもしれない。自衛隊が活用される場合は、数的に足りない、もしくは能力不足の猟師の穴埋めを行う為の要員や、山林付近の警備などをしているかもしれない。


なお、これを読んでいると、まるで獣害が異世界転移して山林開発を始めて直ぐに大量発生する様な錯覚を受けるかもしれないが、実際の所は、じわじわと時間をかけてこの獣害問題は深刻化していく可能性が高いだろう。というのも何も一両日中に大量の木々が瞬時に全国で切られるという訳ではないのだ。木々の伐採は従来の日本の伐採スピードからすればハイスピードで切られるものの、全体的に言えばじわじわと進んで行く感じだろう。そして、じわじわと生息域が減少する事により、生息域から溢れ出た野生動物がこちらも、じわじわと人里に降りてくる頻度が上がっていくだろう。


恐らくだが私の予測する流れとしてはこうだ。


木材の需要が高まる。

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山林の伐採が進む。

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伐採面積が増加するに伴って野生動物が人里へと降りてくる事案が徐々に増加。

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この時点では政府は対策をしない(例、現実でもヒグマが大量出没し猟師不足を受けて有効的な対策を求める声があるにも関わらず、政府レベルや道府県レベルでは根本的な対策を講じていない場合が多い。この場合における "根本" とは猟師が不足している現状に対する効果的な対策の事である。つまりは不足する猟師を増やす為に必要な効果的対策や、猟師が不足している現状に対する代替案などの事(2023年現在だと獣害が増えた為に、一部の県では弾薬費用の援助策や、捕獲頭数制限の撤廃策などが行われている。これは非常に素晴らしい対策ではあるが、これは猟師不足に対する根本的な対策とは言えず、あくまで、その場しのぎ的な側面が強い対策であると言える。猟師不足を何とかするという根本的な対策とは言えない)。それどころか北海道で猟師が警察からの要請で役場の職員や警察官の立ち合いの元、人里に降りてきた熊を撃ったらハンターがその後、鳥獣保護法違反や銃刀法違反に問われるという大事件が起き、地元漁師は警察の態度に対して憤慨し、また、当時、逮捕される恐れがあるとして地元の猟師が銃での猟を渋らざるを得ない事態になった事もあった他(この事件はその後、地方裁判で警察が敗訴)、他の県でも、猟銃の練習の為にも必要な練習場が閉鎖した際に県が代替施設の建設をしないという判断を下し猟友会と県が衝突し、猟友会がシカの駆除をしないと宣言するなどの対立が起こったりもしている。さらに、銃刀法は猟銃による事件が極たまにある事などから、ここ20年間の間にも徐々に規制が厳しくなっている。実際、「日本の狩猟者はなぜ狩猟を辞めるのか?」という論文の内容によると、日本の猟師がやめる理由は主に3つに集約されるという。1つ目は狩猟にかかる経費が高いという事。2つ目は銃刀法改正による規制強化により銃所持許可手続きが煩雑化、3つ目は残滓の処理が大変だからだという。この理由の内、1つ目と2つ目は真理だろう。つまり、政府、自治体、警察は協力するどころか猟師の活動の邪魔をしていると言ってもよい側面が存在している。こうした風潮はすぐには直らないと推測できる。この様な風潮の原因は不明だが、銃に対する忌避感が根底にはあるのではないかと推測)。

 ↓

猟師は現有戦力でじわじわと増えてくる人里への野生動物に対応するが対応しきれない(転移前ですら大変な状態だったのに、もっと大変になる可能性がある。また、経済☆壊滅の影響により懐事情が悪化している猟師も少なくはないと予想できる為、猟師の対応能力は転移前よりも減少すらしているかもしれない。特に猟銃用の弾薬が資源不足による影響で価格が高騰している可能性もある。これも猟師の機能低下の要因になる可能性がある)。

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獣害が増加し作物などの被害も無視できないレベルにまでなってくる。

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獣害被害の大きい自治体が動く。自治体が出来る範囲で猟師に対する支援を始める。しかし、自治体にできる事には限界がある為、遠くない未来での行き詰まりが見えてくる。

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都道府県や政府に対する猟師の支援などを求めた声がだんだんと大きくなる。

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自治体からの度重なる支援の要請に都道府県クラスが役所が動く。都道府県にできる範囲の支援が行われる。しかし、そもそも猟師の分母が圧倒的に足りない為、解決には程遠い。

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都道府県から政府に対して獣害に対する抜本的な対策を求める声が大きくなる(コロナの時の流れを見ると全国知事会などの組織から政府に対する提言として出される可能性もある)。

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各都道府県とそして、ここまでの段階で、報道でも、獣害問題に関して政府の対応が遅いなどと報道が過熱し世論も過熱している可能性がある(コロナの時の様に。特に食糧不足の状態で獣害は世間の注目の的となりやすいと推測)。政府は都道府県からの圧力と世論の後押し、そしてここに来て与党議員の中にも獣害拡大を深刻に受け止める空気感が高まり、政府は獣害への抜本的な対策の実施を決定する。なお、この際、政府の策定する獣害対策を強化する策の中には現行の銃規制の分野に関連する改革案もあると考えられる為、この事を巡って舞台裏では銃規制改革派に鞍替えした政府と、現行のままの銃規制継続を求める警察との間でお役所対立が起こる可能性もある。ここまでの段階で異世界転移してから2年から最長で数年が経過。


とりあえずだが、現在の狩猟を巡る政策や行政機関状況、実際の有事であったコロナの時の自治体や都道府県や政府の動き方、日本の政治の動き方の特徴等を考慮すると、こんな感じの流れになるのではないかと予測。


ちなみにだが猟師や猟を行う人員によって仕留められた動物の死骸は食料不足の日本の食卓に恐らくは提供される事となるだろう。


と、この様に、山林伐採を進めれば野生動物の人里への侵入が発生し様々な被害が発生する恐れが高まる為、政府は獣害に対する対応を求められるだろう。しかし、別の問題も発生する。それは今度は野生動物をいずれは、とりすぎる可能性がある事だ。現在は熊や鹿などの数が猟師の数が減るのと相対する様に激増的に増え、今や獣害が各地で多発し深刻化している有様な訳だが、かつて、猟師がまだ大量に居た時代には多くの野生動物が狩られ過ぎた為、絶滅寸前にまで狩られ過ぎた動物が幾つも存在する。


生態系を守る為には狩る動物の数、生息数の把握は重要な懸案事項となるだろう。とらな過ぎれば、現在の様に獣が増え獣害が多発し各地で被害が続発する。一方でとりすぎれば、その先に待つのは生態系の破壊と最悪は絶滅なのだ。生態系を守る為には、どちらが多くても少なくても、いけないのだ。


最後にこれは余談だがチェーンソーについても現代では林業に必要不可欠な道具である為、これについても考えてみる。


チェーンソーには石油系燃料を使用したエンジン式と電気を動力とした電動式の2タイプが存在する。この内、エンジン式はガソリンやガスを使用する。しかし、異世界転移後の石油不足の状況を考えると、長期的視野にたった場合、転移初期は備蓄石油があるが備蓄石油が枯渇した後には国内油田と、行われていれば人造石油のみとなる為、エンジン式チェーンソーの燃料供給に問題が生じる可能性があるだろう。人造石油が作られて供給されていればまだ良いが、人造石油はその生産コストの高さから場合によっては導入されない可能性も有る為、その場合、日本で僅かに採れる国内油田に頼る事になってしまう。そうなる前に異世界の地で油田を発見できていれば問題無いが、そうでなければ、エンジン式チェーンソーは燃料問題に陥るだろう。


一方で電動式には2タイプが存在している。バッテリー式とコード式だ。この内、バッテリー式は転移時点で既に日本国内で流通している分に関しては即座には問題は発生しないだろうが、新たなバッテリーを製造する為の原材料の問題が生じる為、時間経過と共にバッテリー不足の問題に陥る可能性があるだろう。しかし、コード式は電源を直接コンセントから引っ張ってくる方式である為、異世界転移後でも国内電力網への電力供給は計画停電はあると予想されるものの、それでも維持されると予想される事から(計画停電に関しても石炭の採掘が安定化すれば、石炭火力発電所の増設によって将来的には計画停電が無いレベルまで国内の電力事情は大幅に改善する可能性がある)、こちらの問題はエンジン式やバッテリー式に比べて大幅に薄い可能性があるだろう(エンジン式やバッテリー式は長期的視野に立って見た場合、稼働不可になる可能性すら最悪の可能性として存在しているが、コード式は稼働が可能)。


これらチェーンソーの方式を考えると、異世界転移後に主流となるチェーンソーの方式はもしかしたらコード式なのかもしれない。エンジン式やバッテリー式のチェーンソーはコードの心配が無い為、楽に作業ができる為、コード式はかなーり作業の邪魔になったり、気を配らなければいけない事が増えてしまうだろうが……。


しかし、コード式も駄目となると人力不可避となる為、使えるだけ遥かにマシであると言えるだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 改めると、林業の需要と供給と可能性・問題が無限大に広がるようなものだと分かりますね。というかチェンソー問題については灯台下暗し的な衝撃ですね。全国からかき集めても就職した人たちで切る係の人…
[良い点] 面白いですね。 [一言] 林業に流れるとして、現代人が1945年以降(その前でも良いですが)の高度成長期の過酷な労働が出来るのかなとも思ったり。 木を伐採するにしても、今更斧や鋸では無いだ…
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