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エネルギー面・超石炭時代到来!?編


挿絵(By みてみん)


★エネルギー面・超石炭時代到来!?編→ゲホッ!ゲホッ!……けむい!けむ過ぎる!!


異世界転移後、日本はもしかしたら前代未聞の超石炭時代に突入するかもしれない。

石油採掘面で解説した様に油田の発見には何年もかかり開発にもさらに数年の時間が可能性がある。こうなると日本は国内で採掘される僅かな石油に頼らなければならない。エネルギー面の解説では年間10億リットルの沼にはまるとし、2017年の日本の石油産出量、5億4600万リットルは約328万台の自動車を満タンにさせるだけのガソリンが供給できるだけの量であると解説した。


しかし、国内油田で産出される石油は全てをガソリンにまわす事は到底できないだろう。というのも石油はなにもガソリンだけに使われている訳ではないからだ。石油はガソリンの他、エネルギー面でも登場した灯油、そして、合成樹脂(プラスチックの原料)、合成ゴム、合成繊維、塗料、界面活性剤、薬の原料の化学合成物質にもなる。これらの事を石油化学製品(合成樹脂(プラスチックの原料)、合成ゴム、合成繊維、塗料、界面活性剤、薬の原料の化学合成物質)と呼ぶ。


ここで注目するべきは薬の原料となる化学合成物質である。私も調べて初めて知ったが実は私達が普段、飲んでいる薬の多くには原材料が石油の物が数多くあるのである。合成樹脂は国内のプラスチック資源をリサイクルする事で新たに生産する分をある程度は減らす等はできるかもしれない。合成ゴムや合成繊維もだ。しかし、薬の原材料の生産をどこまで減らせられるかは不明だ。海外からの輸入先が消滅した事でただでさえ、それだけで国内の医薬品は不足が発生する事が予想される。その上、薬の原料の化学合成物質の量を減らせば、たちまち日本国内は病人だらけとなってしまうだろう。


しかし、こうなると10億リットルの内、ガソリンなどの燃料にできる量は限られてくる。


2018年、日本の石油(輸入石油および国産石油を含む)、約4億7千万キロリットル(1キロリットルは1リットル×1000=1キロリットルの量)の内、7.6%(プラスチック2.7%、その他4.9%)が石油化学製品の製造に充てられたという。7.6%という事は、2018年に日本は3千万5720キロリットルを石油化学製品に割り当てたという事になる。10億リットルはキロリットルに換算して100万キロリットルなので……3千万5720キロリットルと100万キロリットル……デデドン!(絶望)ダメだ、どの道、国内で生産できるだけの石油量では石油化学製品を賄いきれない!!医薬品だけでも2019年には日本の石油の7.6%分(石油化学製品分の石油)の石油の内、1千3万7320キロリットルを必要としたという(7.6%分の石油の内、無機医薬品が11.5%、化粧品・歯磨き10.6%、石鹸や合成石鹸6%だった)。足りなすぎる!


が、作らない訳にはいかないのだ。もしも、異世界転移して初っ端からこの状況であれば完全に詰んでいたが、幸いなことに日本には転移当初はまだ国内に備蓄石油がある為、備蓄石油(転移前の平常な日本経済を224日分支えられる量)を節約しながら使い+年間産出10億リットルの国産石油を上手く使えば、2年は持つだろう。


この2年間の間に油田が見つかれば安泰ではあるが、残念ながら、よほど運がなければ油田の発見は難しい訳だ。政府は恐らく、この間にどうすれば、この燃料の危機的状況を打開できるかを死ぬ気で模索するだろう。


ここで恐らく政府が採る選択肢は石炭の活用である可能性が非常に高いだろう。何故かと言えば、日本は国内に132年分の豊富な石炭の鉱脈があるからだ。メタンハイドレートであったり、藻から石油を作るバイオ燃料の類や、電気自動車などの様な電気系であったり、水素系の燃料は将来的には有望な資源であったり技術かもしれないが、残念ながら現在(2023年)の技術ではこれらを当てにする事はできない。採掘技術や製造技術がまだ未熟過ぎる、もしくは生産上の都合で現状では日本一国ではできにくかったり、異世界転移後の日本の状況を考えれば導入コストが高すぎる問題などがある為だ。これらを考えると、すぐに利用ができる豊富にある資源は石炭だけだ。


日本国内の炭鉱は国際市場バトルに完全敗北して、その殆どが閉山したという歴史を持つ。2023年現在で採掘を行っている炭鉱は釧路コールマインという炭鉱ただ一カ所だけという状況だ。


日本政府は閉山された炭鉱の再稼働の方針を取る可能性が非常に高いだろう。とはいえ、国内の炭鉱は閉山されて数十年が経過している為、老朽化や崩落、地下水による浸水が深刻な状況である。これを再稼働の状態まで持っていくのは非常に至難の業であろうが、やるしかない。これ以外に日本の選択肢は無い。


廃坑の状況についてはこれショックだったのだが、少し前まで遺構調査機構と言う名前の神サイトが存在し恐らく日本国内の廃坑調査画像としては屈指の画像達を公開してくれていたのだが、これを書くに当たって久々に行ってみたら閉鎖されてしまっていた(悲しい)。とはいえ、まだユーチューブチャンネルがあるので、おすすめ。あとは廃坑探検を行っている人達が撮った写真や動画についてはグーグルやYouTubeで「廃坑探検 -マイクラ -マインクラフト -Minecraft」と検索したり(なお、マイナス検索でマインクラフトとか入ってるのは関係ない画像がうじゃうじゃ出てくる為、検索除外している)、「Abandoned Mine Exploration」など英語で画像検索してもらえば、海外の物だが素晴らしい写真達をその目で見る事ができるだろう。


そして、炭鉱の再稼働と並行して行われるであろう事が、備蓄石油を積極的に使っての、石油発電施設の完全停止及び天然ガスを使った発電の大幅縮小と、それに伴う石炭火力発電所の増設事業(日本の発電に占める石油火力発電の割合は2022年時点で3.8%。石油を節約する為に石油を消費する発電施設は完全停止させる。天然ガスに関しては輸入先が途絶する為。天然ガスは97%を輸入に頼っており、異世界転移後でも北方領土や国内のガス田の開発を強化すればある程度は自給率は向上する可能性はあるものの、100%には満たすのは難しいと予想される為に縮小(縮小幅に関しては、この点は北方領土やその周辺にどれだけ天然ガスが埋蔵されているかによる))、人造石油プラントの建設事業、石炭自動車(木炭自動車)の開発及び量産事業の大まかにはこれは3つだろう。


この内、石炭火力発電所の増設事業は後々にとりあえず後回しにされてしまう可能性はあるが(政府が「今は発電所の増設よりも、他の事に限られた資源を投入する方が先だ!国民には悪いが計画停電で乗り切ってもらう!」と考えれば、後回しにされる可能性大)、人造石油プラントの建設事業はコストとメリットの相談次第では行われ、石炭自動車の開発及び量産事業はほぼ確実に行われるだろう。


人造石油と石炭自動車について軽く説明すると人造石油とは石炭を使って生成される燃料の事を言う石油燃料の代替品で人造石油で作ったガソリンを普通に流通している車に入れても動く。石炭自動車とは石炭や木炭を燃料とした自動車。北朝鮮の農村部でよく見かけられるトラックはこれ。


人造石油プラントを作るのであれば石炭自動車は必要ないのではないか?と思うかもしれないが、これは人造石油ができるまでのコストに由来する。人造石油というものは非常に高コストなのである。まず、巨大な人造石油プラントを建設しなければならず、そして、その後に石炭から生成する石油のコストも高い。


ただでさえ、前提がこれである為、もしも日本が必要とする燃料を全て人造石油で賄うとするならば、それはもうとんでもない超巨大ハイギガ級規模の人造石油プラントを建設する必要があるだろう。ただでさえ異世界転移で様々な資源が限られる中、この様な超ハイギガ級巨大プラントを建設できるかは疑問である(異世界転移してからある程度時間の経過した将来的には可能かもしれないが)。


さらに、日本で採れる石炭にも大きな問題がある。それは採掘コストが高い事である。実際問題として、日本石炭採掘産業及び鉱物採掘産業が事実上消滅状態へと陥った原因は採掘コストが高すぎて外国の安い採掘コストで掘られた石炭や鉱物に国際市場バトルで完全敗北したからだ。採掘コストが高いと言う事はそれだけ石炭の単価が高い事を意味する。さらにさらに、これにおいうちをかける様に、先ほど、国内の炭鉱は閉山されて数十年が経過している為、老朽化や崩落が深刻な状況と言ったが、これが採掘コストにさらなる追い打ちをかける事は容易に予想される。なぜならば、完全に荒廃しきった炭鉱を安全に掘れるように、設備の更新や坑道の修繕を行わなければならないからだ。


つまり、人造石油の精製コストは、人造石油プラントの建設+石炭の採掘コスト(日本の石炭の特徴である掘り出す等の時にかかる高いコスト+廃坑の復旧事業により発生したコスト)+人造石油化のコスト=人造石油となる。この為、少なくとも日本産の石炭による人造石油で国内全ての石油需要を満たす事は非常に難しいと言わざるを得ないだろう。


プラントの規模は作れるとしても、恐らくは南アフリカのアパルトヘイト政権が建造した世界最大の人造石油プラントと同程度の規模の物が限界だろう。これでも作れれば充分、御の字である(なぜならこれでも十分、巨大過ぎるプラントだから)。南アフリカの人造石油プラントに関しては南アフリカ参考になる説・エネルギー面を参照。


南アフリカが建造した人造石油プラントと同規模程度のプラントの建設に成功すれば、少なくとも自衛隊の燃料を、上手く事が運べば他の公的機関の自動車の燃料を賄う事が可能になるかもしれない規模の燃料供給が可能になるだろう。


これらの燃料はどうしても石油が必要な公的機関向けに作られると考えられる。というのも、備蓄石油が枯渇した後を考慮し既に国内で使用されているガソリン車の他、航空機を動かし続ける必要があるからだ。例えば、既存の、そのままの自衛隊の戦車に石炭を入れて動く訳ではない。ディーゼル燃料でなければダメなのだ(ある事をすれば動かせる可能性も実はあるが……それは下記の石炭自動車の時に解説)。


前述した様に国内油田で産出される10億リットルの石油の全てを自動車や航空機の燃料に回す訳にはいかない。他にも作る必要のある物が多いからだ。


また、備蓄石油の枯渇後は何の対策もしなければ年間10億リットルの沼にハマる訳だが、人造石油で公的機関向けの自動車への燃料供給が全て可能になった場合、10億リットルの石油に余力を生む事ができる。そうすれば、例えば、何の対策もしない場合、当然、10億リットルの石油に公的機関の殆どの自動車(電気自動車や水素自動車を除く)が依存する事になるが、人造石油で公的機関向けの自動車への燃料供給が全て可能になれば、何の対策もしない場合の世界線の日本に比べて、人造石油のある世界線の日本政府の選択肢の幅は広がる事になる。


例えば、人造石油のガソリン+で、自動車や航空機向けの燃料を10億リットルの内で生産を行えば、国内で動かす事の出来るガソリン車の他、航空機の数を増やす事ができる。もしくは10億リットル全てを石油化学製品の生産に回す事もできる。


これはどちらもメリットのある話で、人造石油プラスで10億リットルで燃料を作れば、国内で使用できるガソリン車や航空機の数が増え、対して石油化学製品の生産に10億リットルを振り向ければ、その分、生産数が増加し、場合によっては石油化学製品のコストを抑える事ができる。


石油化学製品は先ほど言った様に医薬品の原材料だ。仮に医薬品を人造石油を使って医薬品を生産した場合、そちらの方が生産コストが高い為に、医薬品の価格がそれだけ高くなる可能性がある。


または、自動車燃料の生産量(人造石油プラント建設前の生産量)はそのままに、10億リットルの石油化学製品生産割り当て分の石油と人造石油全てを使って石油化学製品の増産を行う事もできる。


思い切った判断としては、政府が思い切ってガソリン車を全廃にし自動車を石炭自動車に完全移行する方針を取った場合には年間10億リットルの国産石油と人造石油を含めて全てを石油化学製品に回すという事もやってできない事はないだろう。


この様に人造石油を生産すれば、既存のガソリン車や航空機を動かし続ける事が可能になる他、思い切った別の選択肢というのも可能になってくるのだ。


しかし、逆説的には自動車という面だけで見れば、石炭自動車の開発及び量産事業を行うのであれば、もういっその事、全部、石炭自動車にすれば良いのではないかという意見もあるかもしれない。だが、この場合は既に存在するガソリン自動車が使用できなくなる他、安全保障の面でも不安が出るのだ。確かに全てを石炭自動車にするのであれば、自動車面だけで見れば、そうした方が遥かに効率が良い面もあるだろう。しかし、その代わり、日本の防衛力に大きな不安が生じるだろう。というのもだ。石炭自動車には後述でも解説するある問題点が存在するからである。


それでは、このまま石炭自動車の方に話を移ろう。石炭自動車(木炭自動車)の利点は何と言っても石炭の他、木炭、コークスさらには薪なども利用できる点がガソリンが手に入りにくい状況下においては非常に優れている。日本は石油は殆ど採掘できないが、石炭は沢山取れる。木炭や薪に関しても日本は世界有数の森林資源大国だ。つまり、石炭自動車を運用する場合、大量の燃料が日本にはあるという事である。


また、燃料が石炭、コークス、木炭、薪などという事は、つまり、人造石油の様に大規模かつ金の掛かる製造プラントを必ずしも必要としない事である。薪であれば、山から切って乾燥させれば良い。木炭の製造は必ずしも現代的な工場でなくても昔ながらの方法でもできる。石炭は炭鉱から採ってくるコストはあるが、その後はやろうと思えば加工は殆ど加えずに、そのままの状態でも燃料として容易に使える。


石炭自動車は製造を巡っても非常に優れた面がある。それは既存のガソリンエンジンを流用できる事から、既存のガソリン車にガス発生装置(木炭ガス発生装置)をくっ付けて改造する事で、石炭自動車とする事ができるのである。これは、つまり、必ずしも石炭自動車を製造する場合に、新たな新車を1から製造しなくても良いという事である。


これらの利点は異世界転移後のあらゆる資源や燃料が不足する日本にとっては非常に優れた魅力だろう。燃料が豊富にあり、大規模な燃料の製造プラントも不要、さらには石炭自動車の製造も1から作らなくて良いからだ。恐らくだが、日本政府が備蓄石油や資源を惜しげもなく石炭自動車の製造に振り向けた場合、かなり相当量の石炭自動車を製造できるだろう。


石炭自動車を作らなかった世界線の日本に比べて石炭自動車を作った世界線の日本の物流網は、月と鼈いや、海王星と鼈レベルの差で石炭自動車を作った日本の方が遥かに活発に動いているだろう。物流網がかっぱつであるという事はそれだけ経済が活発になると言う事だ。


もしも、政府が人造石油のコストが高すぎると判断すれば、人造石油プラントの建設は全く行われないか、行われてもその規模は、より小規模な物となり、日本のすべての自動車が石炭自動車になるかもしれない。人造石油プラントにかける人、資源、金を石炭自動車の方に振り向ければ、それだけ石炭自動車の普及率は向上するだろう。


とはいえ、石炭自動車には実はある問題点がある。それはガソリン車と比較してパワーが不足している事、輸送能力が低い事、整備に時間がかかる、デカい、排気ガスの問題だ。この内、排気ガスに関しては日本が有する技術的には排気ガスをクリーンな状態へと変えるフィルター技術などは存在するが、この様なフィルターを装着する場合、それだけ資源と技術を必要とする。ハッキリ言って異世界転移後の切迫した日本が悠長に石炭自動車用にフィルターを開発し設置する余裕は余り無いだろう。できるだけ排気ガスを少なくする為の方策はとられるかもしれないが、それでも、もしかしたらガソリン車よりも遥かに排気ガスの問題は強いかもしれない(北朝鮮のもくもくと煙を上げて走行するトラックは良い参考例)。


パワーに関しては非常に悩ましい問題だ。世界記録級の木炭車はガソリン車にも引けを取らない性能を発揮している例もあるが、これは非常にカスタマイズされた物で日本全体規模で量産し運用する物の話の場合、ここまでの規模だと余り参考にはできないだろう(世界記録級ともなると燃料から何から何まで気にして動かしている)。大抵の石炭自動車の性能は最高時速は60kmにも満たない例が多い。現在の自動車技術であれば、早い石炭自動車を開発し量産する事は可能かもしれないが、異世界転移後の日本の切迫した状況を考えるとガソリン車と比較した場合にガソリン車と同等レベルの性能の石炭自動車を大量生産する事は難しいかもしれない(開発時間が少なすぎる)。なんなら最高時速60kmが出せれば普通に高性能の部類だろう。また、パワー不足が原因で、坂道を上る途中で止まってしまう事態も昭和の時代は良く発生した。現代の技術であれば問題なく登れるかもしれないが、ガソリン車と比較してパワーが弱い傾向が強い事には変わりは無い為、荷運びや重い物を牽引する際はガソリン車で行うよりも軽くする必要は恐らくあるだろう。物を載せ過ぎれば速力は落ち坂だって登れなくなる事態が発生するかもしれない。


輸送能力の不足については、上記の通りエンジン出力が弱い事による積載可能な重量の低さと、速力が低い問題により発生する。積載可能な重量が低い事に関しては言わずもがな、速力に関して言えば、速力が余り出ないという事は、それだけ迅速な物の移動がしにくいと言う事だ。


整備の時間がかかる事に関しては、石炭自動車に関してはガス発生装置はその仕様上、不具合が発生するリスクが通常のガソリンエンジン以上に高い為、ガソリン車よりも頻繁に点検や整備が必要であるという事である。まぁ、想像しやすい例え話としては暖炉の煙突を思い浮かべてもらえば、想像しやすいのではないだろうか。暖炉で薪を燃やすと煙やススが発生する訳だが、これが発生すると暖炉内や煙突は汚れていく訳だ。この問題はガス発生装置内の燃えカスやススを除去する濾過装置の性能によるだろう。濾過装置の性能が良ければ、整備の問題は低くする事ができるかもしれない。


そしてデカい問題に関しては、石炭自動車のコアとなる装置であるガス発生装置、実は滅茶苦茶デカいのである。ガス発生装置の大きさはなんと、ドラム缶1個分よりも大きい。これは石炭自動車や木炭ガス発生装置で画像検索してもらえれば、サイズ感が分かる為、知らない人はぜひ見てもらいたい。これだけ大きいと色々と問題が生じるだろう。例えば、既存トラックを石炭自動車に改造した場合、ガス発生装置を何処かに設置する事になるが、それは恐らく、荷台の上になる可能性が大きいだろう(世界各国の石炭自動車トラックも荷台に置いている場合が多い)。しかし、そうなると、ガス発生装置を置いている分、トラックに載せられる荷物の量が面積的に狭まってしまうのだ。トラックではなく、通常の乗用車を改造した場合なんかは、後ろの荷台を完全に潰してしまう可能性があり、そうなると乗用車に積み込める荷物の量はトラックよりも遥かに限定的となるだろう。


この様に問題も多い訳だが、無いよりはアンドロメダ銀河と鼈くらいは差がある話である為、致し方ないだろう。


しかし、である。では、日本の防衛力に生じる大きな不安についても説明しよう。石炭自動車には前述の通りの問題点があるのである。これらの問題点は、もしも自衛隊の車両までもが石炭自動車化された場合には、そっくりそのまま自衛隊に圧し掛かって来る事になるのだ。


パワー不足によりガソリン車に比べて速力が出にくく、また、パワー不足に起因する輸送能力の低さ。整備の時間がかかる事などを考えると、ガソリン車を主体に運用する自衛隊に比べて石炭自動車化された自衛隊は機動能力の低下が発生する可能性が第一に考えられるだろう。


そして排気ガスの問題も、もしも、もくもくと白い煙が排出されている様なら、これは大きなリスクとなる。それは敵に位置を知らせる事になりかけないのだ。車両が1台走る程度なら問題ないかもしれないが、列になって走れば、かなりの煙がもうもうと立ち込めるかもしれない。


また、戦車や装甲車にとっては致命的な影響も発生するだろう。それは戦車はただでさえ、重量があり燃費が悪いと言われているのに、石炭自動車化した場合、通常の自動車よりもパワー不足の影響が顕著に表れる可能性が大きいだろう。第二次世界大戦中にドイツ軍が石炭自動車化した戦車や装甲車を運用している事から、走行したり戦闘自体は可能だろうが、ガソリンやディーゼルを使っていた時に比べて能力の低下は発生する可能性が非常に高いだろう。


さらに戦車や装甲車にとって致命的な問題もある。それはガス発生装置がデカすぎる事だ。ガス発生装置は確実に他の石炭自動車の例に漏れず外部に露出するだろう。つまりだが、それが何処になるかは分からないが、例えば10式戦車であるならば、その後ろ部分か、もしくは砲塔上部かもしれないが、いずれにせよ、ドラム缶サイズの心臓部が装甲も無く露出する事態にとなる可能性が非常に高いのだ。


初めから石炭自動車として開発された戦車であるならば、最初からガス発生装置を装甲化された区画に収納できる戦車も作れるだろうが、既に存在している戦車を石炭自動車化させる場合には、弱点が露出してしまう可能性が非常に高いだろう。何故ならば、そもそもドラム缶サイズの心臓部を新たに増設する事など想定されて設計されていないからだ。


なお、戦車を石炭自動車化させた場合、ガス発生装置が他の自動車のガス発生装置に比べて大きくなる可能性があるだろう。これは戦車の重量が重い事や元々燃費が悪い事が要因の一つだ。第二次世界大戦中のドイツ軍の石炭自動車化された戦車の写真を見るとガス発生装置の筒が1本程度では済んでいない。


この様に心臓部とも言える機関が露出してしまう為、戦車なんかは、もしもそこが攻撃されてしまえば、車体は大丈夫でも、すぐに戦闘不能の状態へと陥ってしまうだろう。


通常の装甲車であれば、人を輸送するスペースを活かしてそこにガス発生装置を収納し防御力を持たせる事もできるだろうが、その場合、人員や物資の輸送能力は大幅に低下するだろう。


つまり、安全保障を考えると石炭自動車化された自衛隊は色々と問題を抱えてしまうという事である。これらの問題点を考えると、安全保障を優先するならば、少なくとも自衛隊が使用する燃料はガソリンやディーゼルが好ましいだろう。


戦車や装甲車だけをガソリンやディーゼルのままにしておくという選択肢もあるが、その場合、自衛隊内に石炭や木炭を燃料とする車両と、ガソリンやディーゼルを燃料とする車両が混在する事になる為、燃料供給体制に問題が生じるかもしれない。


安全保障を優先しないのであれば、自衛隊は石炭自動車化。安全保障を優先とするならば、自衛隊は引き続きガソリンやディーゼルの継続が望ましいだろう。正直、異世界勢の脅威度が中世から古代程度であれば、この程度の問題は日本を脅かす程も問題にはなり得ない為、どちらの選択肢をとっても問題ないであろうが……。


自衛隊の為の人造石油を作るか作らないかは、日本の周辺の安全保障環境や、資源、予算、コスト、時間を加味して政府が頭を悩まして決める事になるだろう。


この様に人造石油および石炭自動車の導入は進められる可能性は大いにあると言えるだろう(人造石油に関しては前述した通りコストが高すぎて導入されない可能性、もしくは導入されても小規模になる可能性が有る為、この二つを比べた場合、石炭自動車の方が導入される可能性は圧倒的に高い。ちなみに作者の個人的な見解としては人造石油は色々とコストが高すぎて将来的ならばともかく、転移初期からの自衛隊全体規模を賄えるレベルでの大規模導入は不可能に近いのではないかと思っている)。


そして人造石油や石炭自動車の運用が始まり、将来的には不足する電力分を補う為に石炭火力発電所が増設される可能性があるだろう。そうなると日本は石炭で石油を作り、石炭や木炭や薪で自動車を走らせ、石炭で電力を発電し、石炭で発電した電力を使って街の灯りは点き、石炭で発電した電力を使って鉄道が走り、石炭で化学物質を作る事になるだろう。


なんなら、新たに造船される貨物船やタンカーなんかは、石炭を燃料としている可能性すら十分にあり得るだろう。


灯油が不足している期間には暖房の為に石炭、木炭、薪が燃やされる事もあるだろう(間違いなく全国各地で一酸化炭素中毒事故多発不可避だが)。


まさに超石炭時代の到来である。


石炭は戦争面でもちらっと解説している様に、地下資源の中では発見が比較的容易な方に分類される資源である。例えば地球においては古期造山帯と呼ばれる地形の地域には石炭が眠っている可能性が多い。発見が容易な方であるという事は、将来的には日本国内だけでなく、異世界の地からの輸入体制が整う可能性が石油や天然ガスよりも早くに達成できる可能性があるという事である。


この為、異世界転移した日本にとって、石炭は発見面から非常に将来性と持続性が高く、日本の将来のエネルギー事情を策定する上においても、エネルギー政策を計画しやすいエネルギー資源として認識される可能性が非常に高いだろう。


石炭政策を進めながら、その最中に大規模油田を掘り当てればそれで良し。そうであれば、再び石油体制に戻す方向に進めれば良い。油田が見つからなくても石炭政策を進めれば、国家運営の為の必要最低限のエネルギーは得る事ができる。


また、石油に比べると生産効率は悪いが、石炭でも石油化学製品の様な物は製造する事が可能である為、転移当初はコスト面で、それ専用のプラントの建設が思う様に、例え、いかないにしても、日本国内で産出される石炭では無く、異世界の地で採掘コストを抑えて沢山、石炭が採れる炭鉱を見つけられれば、化学製品の生産コストを大幅に抑える事ができるかもしれない為、将来的には日本政府が大々的なプラント建設に乗り出すという可能性も充分にある。そうすれば、徐々に化学製品の生産数は向上していくだろう。


大規模な油田が使える状況に比べると石炭は効率性が悪い為、それだけ日本経済の回復や国内の品不足の解消に時間はかかるだろうが、石油の発見がいつになるか分からない事を考えると、石油が見つかるまでの間の繋ぎとしてのエネルギー資源として見ても、有力な油田が万が一、長期に渡って発見できなかったとして見ても、いずれにせよ緩やかではあるが確実に経済や品不足を解消させる事ができる恐らくは現代日本において唯一無二のエネルギー資源である為、これを利用しないという選択肢は余り無いだろう。


とはいえ、石油が早く見つかる事に越した事は無いので、個人的には、日本が本当に異世界に転移するような事があったら、運よく大規模油田をすぐに発見できる様に祈りたいですねねね……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 超石炭時代とかいう現代からしたらとんでもないパワーワードよ笑 それと自分も考えていたメタンハイドレートやバイオ燃料に水素、そして微妙ではあるがEV化があれば多少は楽にできると思っていたが2…
[良い点] 木炭自動車の話はとても面白かったです やはり油田開発能力が現在無いというのが怖いですね 東シナ海ガス田の問題がありますが、もし日本が地殻とともに転移しているのなら一番可能性がある油田ですか…
[気になる点] 水素の方が良さげですが。
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