戦争面・異世界転移した日本は資源目当ての戦争を起こす可能性はあるのか?編
※注意!作者は別に侵略戦争を異世界転移したからといって肯定している訳ではありません!ですが、ここではあくまで可能性として、あるのかないのかを客観的に考えて行こうと思います!
★戦争面・異世界転移した日本は資源目当ての戦争を起こす可能性はあるのか?編→うーむむむ
異世界転移後、日本はあらゆる資源が不足する。この状況下において日本が平和主義を自発的に捨て去り資源を求めて異世界の国に対して戦争をふっかける可能性は如何ほどあるのか。
これははっきり言って充分にあり得る話であると考えられる。というのもまず、日本が必要とするあらゆる資源が不足している。これは日本の社会、日本の経済、国民生活、国民生命などありとあらゆる面に直結する問題である。また、日本が転移した異世界の脅威度が地球における中世から古代レベルであれば、日本にとっては異世界の国の軍事的脅威度は低い為、これら2点を考えれば充分にあり得る事だと言える。
むしろ、あり得ないと言い切る事はできないだろう。国民の生き死に関わってくる重大な問題である。資源がそこにあり、軍事的にそれが可能であるならば、やってしまえという声が出ても当然おかしくない。もちろん反対論は強いだろうが、強行は恐らく可能だ。政権与党が一枚岩になって戦争をやろうとまとまっていればだが。国会で強行採決に踏み切れば良い。なお、国会で反対派の数が多かった場合はお察し(戦争は起きない)。
もっとも、実際の有事であったコロナの真っ盛りの時ですら、色々とひよって後手後手に回っていた日本の国会議員がそれ(侵略)を判断し、なおかつ政権与党の議員全員で採決の際に造反者を出さずに意見をまとめる事ができるのかは疑問の所ではあるが(コロナの時の対応を見ていると、現代日本の政治家に侵略戦争の決断なんていう大それた判断は無理な可能性の方が圧倒的に高いのではないかと普通に思う)、まぁ、その辺は気合と根性の話なので、コロナよりももっとヤバい事態である異世界転移の際には少しは決断力があると言う可能性も微粒子レベルで存在しているかもしれない(侵略の決断における気合と根性が良い気合と根性かはさておき)。
戦争を起こす理由(建前)についてもどうとでもなるだろう。日本は憲法9条によって戦争を禁じられているが、この憲法を改正しなくても憲法に則って戦争をやる事自体は容易に可能だ。
例えば、例を挙げると、相手を挑発して攻撃させ正当防衛を主張して開戦。日本人を侵略対象地域に送り込んで住まわせたりなどして、何か理由をつけて日本人やその協力者の保護を理由に地域に部隊を展開(別名、ロシア・アメリカ方式)。侵略対象地域を持つ国の敵対国など周辺国と同盟関係を構築し、侵略対象地域を持つ国が同盟関係を結んだ国に軍事侵攻を仕掛けた所で集団的自衛権を行使して同盟国の保護を名目に参戦。日本国内の外国軍(在日米軍など)に協力してもらって、外国軍が先に侵略対象地域を攻撃、その後にその外国軍に対して集団的自衛権を発動して日本も後から参戦。日本国内の外国軍に協力してもらって金と装備と弾薬の供給をして日本の代わりに侵略してもらう。日本国外に民間軍事会社もしくは何らかの武装組織を設立しその組織に日本の代わりに侵略してもらう(別名、東インド貿易会社・ワグネル方式)。異世界の友好国に支援をして日本の代わりに侵略してもらい戦後に開発利権を貰う(経済侵略方式)。
などなど。やりようは幾らでもあるだろう。正々堂々と表に出て戦争をする事もできれば、裏で金や物資や人を融通したりして戦争を起こす事もできる。
裏で起こす場合には日本政府は国民に対する主だった理由の説明は必要ないだろう。日本国内の外国軍を利用する場合には何かしらの理由を考える必要はあるだろうが、東インド貿易会社・ワグネル方式しかり、経済侵略方式しかりは外国の企業や国が勝手にやった事などと言って責任を回避できるだろう。
まぁ戦争の起こし方の詳細はまたいずれ詳しく考えてみるとして、いずれにせよ、日本から戦争を引き起こす事は日本の政治家側に意志さえあれば憲法など関係なくできるだろう。
だが、問題はそもそも、資源を目当てとした戦争が起こる可能性についてである。
資源を目的とした戦争が起きるという事はそもそも前提条件として日本が求める資源を日本が把握(知っていなきゃならない)していなければならない。資源ごとに見てみよう。
・石油を巡る戦争
まずは石油(及び天然ガス)。石油は当然の事ながら日本にとって経済を回す上で非常に重要なエネルギー資源の代表だ。この石油を巡って日本が戦争を起こす可能性はあるだろうか?
まず、この場合は結論から先に言うとほぼ無いと考えて良いだろう。なぜなのか?石油は重要な資源なんだから戦争でもして、取れるんだったら取れば良いじゃないか!と思う人もいるかも知れないが、地下資源が何処にあるかを調べるのはそう簡単な事ではないのだ。
石油採掘面で指摘した様に、油田の捜索には時間がかかる。ここらで石油が出そうという当たりを付けて調査をしても数年かかる例もあるのだ。また、石油関連施設の建設などを含めたら日本へと供給するのに工期は短くても1年、普通にやって2年から3年程はかかるのだ。地球人が良く知っている地球ですらこれである。異世界の文明度が中世から古代の水準(この程度の文明度では大規模な石油を利用をしていない可能性大)であり、なおかつ異世界が日本にとって全くの未知の惑星である事を考えると、油田の当たりをつけるのも恐らくは非常に難しいだろう。
よっぽど運がよくない限り、油田の位置を知るのは非常に難しいと言える。
となるとだ。よほど運が良くない限り(大事な事なので2回言いました)は、転移初期は分からない。日本が資源を目当てに戦争を起こすとすれば一番苦しい時である転移初期頃が一番可能性が高いと思っているが、油田の捜索の難しさを考えれば、転移初期に石油を目当てとした戦争が起こる可能性は非常に低いと言えるだろう。
やみくもに戦争をしかけても石油が出てくる訳では無い。例えば、周辺の一番近い国から手当たり次第に片っ端から戦争をふっかけて油田を探し当てようとしても、異世界転移によって日本は大きく疲弊している為、すぐに攻勢限界となるだろう。さらに占領した土地を統治しなければならない。そんな幾つもの国々を統治する程の余裕ははっきり言って日本には無い。石油が出なかった土地はパッパと手放すという手もあるかもしれないが、いずれにしても、これをやった場合の日本に対する異世界の反応はとんでもない軍事力を持った野蛮な国となるだろう。油田が見つかったとしても間違いなく、その後の国際情勢や国際関係において悪影響を及ぼす。それでも油田が見つかればそれでも良いとも言えるかもしれないが、こんな無計画な戦争をやって攻勢限界に達した所で目当ての油田が見つからなかったり見つかっても埋蔵量が少なかったりしたら日本にとって悪影響でしかない。色んな意味で日本が吹っ飛ぶだろう(国内政治的にetc)。
では転移からある程度の時間が経った時はどうかと考えると、この時の方がまだあり得る感じはある。というのも探査作業が時間経過によってそれなりに進む可能性があるからだ。
とは言え、油田が見つかって戦争を起こすとなれば、その油田がその相手国の国内になければ、ならないが、そもそも、油田発見のきっかけとなった石油探査活動ができている時点で疑問が残る。
というのも、石油探査活動をするとなるとボーリング調査などが必要な場合が多い為、それらの設備を必要とする訳だが、人様の国で何も言わずにここまでの活動ができるのかと考えると大いに疑問だろう。調査活動をこの異世界の国が許可を出していると考えるのが自然だ。
では、油田調査に許可を出している国と日本は戦争をする程、仲が悪いのか?また、そこまで日本は薄情な国なのか?という話になる。ある程度、両国間に友好的な関係がなければ、この様な調査活動を行うのは難しいだろう。相手国の許可がなければ調査はできない。
油田調査の許可を出してくれる様な友好的な国に戦争をしかける、流石に日本の国民世論的にもアウトになる可能性がある。また、国会議員の間でも反対意見が多く出る可能性が充分にあるだろう。野党議員だけでなく与党議員からもだ。
むしろ友好関係をより深めた方が、普通にすんなりと開発ができる可能性の方が大きいだろう。もちろん、何らかの理由によって開発許可が下りない可能性もある。その場合は戦争になる可能性はあると言えるが、石油探査活動までしておいて、その探査前に石油発見後の話をちょっとでも、していないなんて事あるのか?とも普通に思う為、結論的には日本が石油を目当てとした戦争を起こす可能性は、無い可能性の方が圧倒的に強いと言えるだろう。
一方で、石油探査活動を油田の有る国家から許可を貰わずに現地の何らかの勢力の協力を得て行っている場合はその国家と敵対する可能性は充分に有ると言えるだろう(シリア内戦でアメリカ軍がシリア政府の許可なくシリア国内のクルド人勢力と同盟関係を結んでいつのまにか駐留しているのと同じように※なお、シリア政府はアメリカを非難しているが、アメリカ軍への攻撃は報復を招く可能性がある為、直接関与の攻撃は余りしていない)。
あとは、無差別に近いやり方として資源調査に協力しない国に対して戦争を起こすというやり方もあるにはあるだろう。なんだったら、国と見なさずに、資源探査を相手の国にずかずかと入って行って勝手にやって、その国からの邪魔があった時には反撃して、資源探査部隊だけを守って石油が見つからなければ、そのまま速やかに撤退。石油が見つかれば、そのままその国に交渉で採掘施設の建設にまで話をもっていくか、もしくはその国自体を攻め滅ぼして手に入れるという手段もあるだろう。国と見なさない方法については、これは、はっきり言ってここまでの例の中では一番、石油発見の可能性の度合いが高いと言える。何故ならば、相手の国家主権を完全に無視して探査しているからだ。さらに、非常に限定的な戦争の為、無差別に戦争を起こす場合に比べれば攻勢限界になりにくいという側面があるだろう。とはいえ、資源調査に協力しない国に対する戦争は無差別に戦争を起こすのと同じく、戦火が拡大し過ぎて日本の攻勢限界に陥るという可能性が表裏一体で存在している。また、これも無差別に戦争を起こすのと同じく、余りにも周囲に敵を作り過ぎる可能性がある為、油田は例え発見できたとしても、様々な面で日本に対して非友好的、非協力的な国家を多数生みかねないだろう。
また、長期的に見た場合では元々、油田開発の取引を成立させていたが、異世界の国と日本との関係が何らかの理由で悪化した事により、石油の輸出に影響を及ぼした場合には戦争の可能性は出てくるだろう。
・鉱物資源を巡る戦争
次は鉱物資源(希少金属等の原材料系鉱物)。鉱物資源は石油とほぼ同じである。鉱物資源の調査も石油探査と同じ様に時間と機材を必要とする為、石油の場合と同じ様な理由で鉱物資源を理由とした戦争がおきる可能性は余り無いと言える。長期的に見た場合も石油と同じ。
・石炭を巡る戦争
次は石炭。石炭は異世界転移後の日本にとっては非常に重要な地下資源だ。何故ならば、日本で唯一豊富に大量に採掘ができる地下資源は現状では石炭だけだ。この為、石炭は異世界転移後の日本のエネルギー事情を支える重要なファクターとなるだろう(日本の需要を満たすだけの石油油田が直ぐに見つかる可能性がよっぽど運が良くなければ低い為、石炭が主要なエネルギーになっている可能性がある)。
とはいえ、石炭も鉱物資源。鉱物資源の時と同じように今回も石炭を理由とした戦争なんて起きないんでしょ?知ってる知ってる……と、思うかもしれないが、実はそうではない。石炭は恐らく、地下に眠る地下資源の中では最もこれを目的とした戦争が起きる可能性が高い資源だ。どういう事なのか説明しよう……。
地球において石炭は他のあらゆるエネルギー地下資源よりも恐らくは発見が最も容易な資源だ。というのも、地球において、世界有数の埋蔵量を誇る炭鉱の発見だとか石炭の国際市場バトルを全く想定せずに石炭が取れる場所を探すとマジでそこら中にある。地球の国々を捜索した場合に、むしろ石炭が完全に出ない国の方が少ないかもしれない(とはいえ、全ての場所で事業化出来る程ある訳でもない。あっても採掘していない国が多い)。
日本が転移した異世界においても、その惑星の地質構成が概ね地球と同じであるならば、地球と同じ様に石炭がそこら中に眠っている可能性が大きい。
これを考えると、国内の石炭では満足できないとして、さらなる石炭、もしくはさらなる良質な石炭や掘りやすい炭鉱を求めて、やむを得ず戦争を起こすという可能性が考えられるだろう。
日本の領土面積と同等の面積を侵略したと仮定する。よっぽどの外れを引かない限りは、ちゃんとした地質調査をしないで戦争を行ったとしても炭鉱を有している土地にぶち当たる可能性は有るだろう。それに石炭のある土地というのはある程度、見える形(古期造山帯など)で地形的な特徴が現れる場合が多いらしい為、戦争を起こす前に航空機を使って土地の山脈の写真や地形データーを調べておき、そのデーターを地質学者に分析してもらえば、あてずっぽうに戦争を仕掛けて得られる石炭よりも、より多くの石炭や、場合によっては良質な石炭を得られる可能性が高まるだろう。
恐らくだが、あてずっぽうの侵略よりも、航空機による偵察資料を基にした地質学者による分析を経てから侵攻する地域を決定する方が現実味があると言えるかもしれない。
日本国内の炭鉱は採掘するのに非常にコストがかかるが、もしも良質な石炭や、掘りやすい炭鉱を発見しそれが使えれば、日本経済にとって非常にプラス要素となる。
以前、南アフリカ参考になる説・エネルギー面でも紹介した南アフリカの様に、コストを掛けずに利用できる豊富な石炭や良質な石炭や掘りやすい炭鉱があれば、異世界転移した日本も石炭から人造石油を精製して本格的に日本全国規模で利用するという道も開けてくるかもしれない。
日本国内の炭鉱は採掘コストが非常にかかる。この為、日本国内の炭鉱で採れる石炭を使って作った人造石油は公的機関など国内の極一部での利用ならばまだしも、日本全国に行き渡るレベルにまで大量生産するには、採掘コストとプラスして、人造石油精製プラントなどのコストもプラスして考えると、とんでもない生産コストがかかる可能性が大きい為、日本政府や産業界からすれば、より安価な石炭を求めて異世界の地の炭鉱に活路を見出す可能性があるかもしれない。
人造石油の生産コスト次第では、少なくとも一般社会の自動車などの燃料は人造石油ではなく、石炭自動車が普及する可能性もある(国内の炭鉱は掘るのも大変なのに、そこからさらに人造石油に加工するとさらにコストがデカすぎる可能性があるから)。南アフリカのアパルトヘイト政権が人造石油を一般社会にまで普及させる事ができていたのは、良質な石炭、掘りやすい炭鉱、豊富な石炭が南アフリカにはあったからだ。だが、日本にはその様な恵まれた良い炭鉱は無い。
確かに人造石油にわざわざ加工しなくても石炭で自動車を走らせる事はできる。だが、ガソリン車に比べると石炭自動車はパワーが低い。第二次世界大戦前や最中の記録ではあるが、当時日本で運用されていた木炭自動車はエンジン始動に10分、日燃式ガス発生炉というエンジンを搭載した木炭自動車(石炭自動車)の性能は、荷重2トンのトラックで、平均時速23km、最高時速50km、石炭1kg辺り1.25km走行だったという。なお、当時の木炭自動車は坂を上がるのが大変だったり、登れなかったり事態頻発。
これは第二次世界大戦頃の木炭自動車の性能である為、現代であればより性能の良い石炭自動車を作れるだろうが、いずれにしても、ガソリン自動車よりはその性能は大きく下回るだろう。これは明らかに経済面からしてみれば、ガソリン自動車に比べてマイナス要素でしかない。輸送能力や迅速な荷物の移動がガソリン自動車に比べて問題が多いからだ。
となると、産業界からすれば石油や人造石油を求める声が多くなるだろう。しかし、石油は発見にまでは時間がかかる可能性がある。人造石油も国内から採れる石炭ではコストがかかり過ぎる。
石油は探査の問題から、すぐには無理かもしれないが、石炭の方は、国内の石炭がダメならば異世界の地の石炭を掘れば良いじゃないか!聞けば他の資源に比べて見つかる可能性が高いらしいじゃないか!と、この様になる可能性は充分に無いとは言い切れず、あってもおかしくはないと言えるだろう。
人造石油にする事が目的じゃなくても、良質な石炭や、掘りやすい石炭が欲しくてという可能性も充分にあるだろう。良質な石炭であれば、石炭自動車の燃費効率を上げる事ができる。掘りやすい石炭があれば、国内に流通する石炭の値段を下げる事ができる。国内で産出される石炭は採掘コストが高いからだ。
石炭を巡って日本が戦争を起こす可能性は、転移初期においても、転移中期においても、長期的に見ても、石油資源が足りない場合には完全に無いとは断言はできないだろう。少なくともここまで見てきた資源の中では今の所、一番高い。
・リン鉱石を巡る戦争
次はリン鉱石。正直言って日本にとっては下手をすれば石油よりもピンチな化学肥料の材料になるリン鉱石。こちらを巡って日本が異世界の国に対して戦争をしかける可能性はあるだろうか。
結論から言うと、五分五分と言ったところだろう。地球において、自然界に存在するリン鉱石は化石質鉱床、グアノ鉱床、火成鉱床の3種類に分類される。この内、化石質鉱床、火成鉱床の2つは地下に埋蔵された資源としてのリン鉱石であり、発見の難易度は上記の鉱石資源の発掘難易度に近い高難易度クエストと言える。
2023年、ノルウェーの採掘会社の調査により、リン鉱石の世界最大の輸出国である中国の埋蔵量を上回る、どころか世界最大の埋蔵量を誇る西サハラの埋蔵量をぶっちぎりで上回る約700億トンの埋蔵量がノルウェーの地下に眠っている事が分かった(これの何がすごいってこのノルウェーの発見前まで、世界全体のリン鉱石の推定埋蔵量が710億トンであった事からノルウェーでの発見で、一気に世界全体の推定埋蔵量が2倍になった)。元々、2018年にはリン鉱石の発見が確認されていたそうなのだが、これがまさかこんな値になるとはノルウェー人は夢にも思わなかっただろう。
しかし、である。これは異世界転移した日本を考える上では、日本にとっては恐らくは悪夢とも呼べる事なのである。
どういう事なのか。それは、ノルウェーは元々、石油や天然ガスなど鉱物資源を含めて地下資源が有名な地下資源大国なのだが、ノルウェーはそれ故に、長年に渡って地下資源の探査も進めてきた。しかし、そのノルウェーがここまで巨大なリン鉱石の鉱床がすぐ足の下に存在していたにも関わらず、発見は2018年、推定埋蔵量の割り出しが2023年になるまで時間がかかったのである。ちなみに商業用採掘施設の稼働は2028年の予定。
これは全ての地下資源の発見に共通して言える事だが、地下資源の発見が難易度が高い事であるという事を明白に物語っているよい例なのである。
この例を見ても地下資源である化石質鉱床と火成鉱床の2つの発見難易度は高いと予測できるだろう。発見難易度が高いという事はこれを原因として戦争が起こる可能性は低く見積もれるだろう。異世界の国の文明度が地球における中世から古代の水準である場合、こうした地下深くに眠る資源を利用しているという可能性は大幅に低いと見て良いだろうし、発見されていない可能性が高いからだ。発見されていないという事は日本にとって見ても何処にあるか分からない為、戦争の起こしようが無い。あてずっぽうの戦争をする訳にはいかない。調査をしようにも、相手国の許可が必要だ。そして許可が得られる場合は相手国と日本の関係は恐らくはそこまで悪くはない可能性がある。ある程度の関係がある国との間で一方的な戦争を起こす可能性は低い。
一方でグアノ鉱床に関しては化石質鉱床と火成鉱床の2つに比べれば、戦争を起こす可能性はあると言えるだろう。というのもグアノ鉱床は他2つに比べれば発見の難易度が低いからだ。
地球においてグアノ鉱床は地上部に露出している物が多いのである。そして、発見場所にも島嶼部や沿岸部、洞窟といった特徴がある。この内、洞窟で発見される物はバットグアノと呼びその名の通りコウモリのフンが化石化してリン鉱石となった物だが、洞窟で発見されるリン鉱石は量が少ない為、異世界に転移した日本から見れば、これだけを目当てに戦争をする可能性は低いだろう。戦争になるとすれば、恐らくは可能性が高いのは島嶼部や沿岸部にある物だ。
グアノ鉱床は鳥やアザラシのフンが化石化した物であるが、それ故に先ほども言った様に地上部に露出している物が多い。また、元が鳥やアザラシのフンである事からも分かる通り、海鳥などの鳥やアザラシの住処となっている可能性もある。島嶼部や沿岸部でグアノ鉱床が多く見つかるのも鳥が集まって暮らしているからだ。
島嶼部や沿岸部でよく見つかるという事を考慮すると、これはつまり、発見場所が他の資源に比べて目に見える形で表れていると言える。また、場合によっては海鳥やアザラシ(異世界と言う事を考えるとアザラシ型の何らかの生物)の生息状況も指標になり得る。調査活動も簡単で、大規模なボーリング調査などをしなくても人を送ればグアノ鉱床がある事が分かる(ただし正しい埋蔵量を算出するにはボーリング調査等が必要)。
実際、ボーリング機器がまだ未発達であった1802年から当時の欧米諸国はグアノ鉱床を求めて島嶼部を積極的に植民地にした歴史がある。アメリカなんかはグアノ島法と呼ばれる法律を1856年(日本はこの時、江戸時代)制定し、「あらゆる島、岩、珊瑚礁に堆積するグアノを合衆国市民が発見した際は、他国政府による法的管理(実効支配)下になく、他国政府の市民に占領されておらず、平和裡に占有してその島、岩、珊瑚礁を占領した時はいつでも、アメリカ大統領の裁量でアメリカが領有したと判断して差し支えない」という内容の法律まで制定した事は有名な話だ。これらの様な事ができたのはグアノ鉱床が比較的発見しやすい資源であったからに他ならない(ただしその代償として多くの埋蔵地はすぐに掘りつくされた)。
この様に19世紀の人間にもここまで容易に発見する事ができる事から、現代日本も同じ様に発見する事は恐らくは容易だろう。なんなら、恐らくは当時よりも技術が進んでいる為、より容易にできると言う可能性もある。
しかし、発見しやすい資源だとは言っても上陸して調査するという事はそれなりにその島を有している国と友好関係があるのではないか?と思われるかもしれないが、グアノ鉱床の場合にはそうとは限らないのだ。
例えば、グアノ鉱床は発見が容易である為、大規模な探査機材などが必要ではない。この為、例えば日本と大した関係の無い異世界の国であっても日本から非公式(公的な往来ではなく、民間の扱いで)にその国に渡航し島嶼部や沿岸部に行き、調査を行う事がやろうと思えばできる。それ以外にも、中世や古代レベルの文明が相手である事を考えると、沿岸部の警備能力が必ずしも徹底されていない可能性がある為、人口が少なかったり、明らかな無人島であれば、調査が可能な可能性がある。特に異世界の国から見て本土から離れている島程、徹底的な管理ができていない可能性があるだろう。
また、これは正直言って、現代人の思考の問題であるとも言えるが、例え住民が大勢いたとしても、とある先入観から、日本政府や国民が国家とは見なさない状況が発生する可能性もある。どういう事かというと、現代人の多くは先住民族という言葉を聞いてイメージするのは、半裸であったり全裸の人々がボディペイントをしていたり弓矢や槍を持っている姿を恐らくは想像する人が多いだろう。こういう姿の人々が異世界の島々に居た場合どうするのか。地球において、こうした様な文化の住民が島嶼部では数多く確認されている傾向がある為、異世界においてもその様な状況になっている可能性は否定できない。
もしかしたら、それを見つけた日本は国家というイメージを抱かず、現地の先住民族程度の感想を抱きそのまま調査を行い始めるかもしれない。
例えば、映画アバターを見て劇中に登場するナヴィ人(惑星パンドラに住む人型知的生命体)をよく先住民と紹介していたり認識したりしている人々が居る(私もその一人)が、改めて考えると、これはおかしい話で、あれはもう既にナヴィ人の国と言って過言は無いのではないだろうか。ナヴィ人は独自の掟があるが、これはある種、法律であると言えるし、住民も居るし、領土(部族の支配地域)を持ち、他の部族とも外交とも言える様な交渉などを行っている。これは地球における国家の三要素(主権、領土、国民)を持っている。にも拘らずアバターに登場する地球人はこれらを明らかに国家としては扱ってはおらず、迷惑な "先住民族" として扱っているのだ。
これは、私の私見であるが、これは現代人の国家に対する固定概念によってこの様に見せてしまっているのではないかと思っている。というのも、現代人は現代人が想像する "先住民的ではない場所" を国家として認識しているのではないだろうか。この、 "先住民的でない場所" の線引きは非常に難しい為、明確な線引きをここで行う事はできないが(例えば、中・南米文明は住民は裸であったりボディペイントをしている住民が存在したとされるが、彼らの事を国家とみなさない事はできないだろう。ピラミッドや多くの建造物の存在から、国家と目に見える形で分かる。一方で北センチネル島はどう見えるだろうか?ただの先住民族であると認識している人は多いのではないだろうか)。
例えば、北センチネル島という世界一危険な島と呼ばれる島があるが、この島は世界的にはインドの領土とされているものの、北センチネル島の住民からしたら、インドなんて国は知らないし、なんなら、俺たちは北センチネル族だ!と反論するだろう。北センチネル島は彼らの観点から見れば独立国家と言って過言は無い。しかし、現代人は彼ら存在を完全を無視している。これは現代人の価値観と彼らの価値観が完全に噛み合っていないからだ。
これを考えるともしかしたら、異世界に転移した日本も、無意識のうちに現地住民達は自分達の事を国家やそれに準じる集団だと思っていても、日本政府はこの現地住民の事をただの "先住民族" だと考えて、ずかずかと足を踏み入れる可能性もあるかもしれない。もっとも、これはグアノ鉱床だけの問題ではなく、あらゆる土地で言える事だが……(気がついたらアバターの人類になってましたがあり得るかもしれない説!)。
と、この様に、グアノ鉱床を巡っては資源が見つかりやすい為、必ずしも、日本と関係のある国から許可を貰って調査を行う必要は無いのだ。
また、石炭と同じ様に無差別な戦争を仕掛ける可能性が出てくるだろう。前述した様にグアノ鉱床は島嶼部や沿岸部に集中していやすいという特徴がある。異世界においても地球と同じであるならば、島嶼部を手あたり次第に占領して調査してグアノ鉱床の獲得を狙うという可能性が出てくるだろう。ちょうど19世紀の欧米列強の様にだ。
また、地球におけるグアノ鉱床の事を考えると、占領する必要のある島は巨大な島(例えば北海道位大きい島だとか、ルソン島みたいな島)である必要は無く小さな島々を占領するだけで目標は達成できるかもしれない。
というのもリン鉱石で財を成したナウルの様に、かつて地球においてリン鉱石を産出した島の多くは小さな島である事が多かったからだ。小さな島で事足りるのであれば、小さな島で済ませておく方が重大な国際問題にはなりにくいとも言えるだろう。
例えば、これは実際にもしも起きたら、ろくでもない例え話だが、中国がフィリピンの小さな島を占領した場合とミンダナオ島を占領した場合、どちらが政治的な妥協点を得られやすいか。間違いなく小さい島の方であろう。大きい島を相手国から奪った場合、相手国からは小さい島を取った場合よりも強烈な反発が発生する事は容易に予想がつく。その後の関係改善に悪影響を与えるだろう。
ちょうど、第二次世界大戦中に日本がオランダ統治下のインドネシアを占領し植民地支配から解放した結果、オランダでの反日感情が強烈な物となり、ほんの20数年くらい前までそれが続いていたのも良い例だろう。オランダの場合、第二次世界大戦が終わって26年が経過した段階の1971年に昭和天皇がオランダを訪問した際には街の至る所で「裕仁は犯罪者」という落書きが発生し、卵が投げつけられるという事案も発生。1986年、第二次世界大戦が終わって41年が経過しても、オランダのベアトリクス女王の訪日計画が世論の反発を受けて中止になっている。
オランダの例を見ても分かる様に取り過ぎは将来に長期に渡って禍根を残す。
もちろん、どうせ戦争になるなら、島だけ攻めるのではなく、相手国の本土も蹂躙してしまえば良いではないかという考えもあるだろう。確かに相手の文明水準が中世から古代程度である場合は日本の軍事技術的には可能だ。しかし、占領統治のコストを考えれば考えものである。例えばある国の領土の一部である島にはグアノ鉱床はあるが、本土に目を向けて見ると資源が何にもないとか、資源は有っても埋蔵量が少なかったり、採掘コストが見合わない土地であった場合、本土まで攻めていくのは日本にとって金や資源の浪費でしかない。あくまで島の占領にとどめておくべき事案もある。
また、仮に島嶼部のグアノ鉱床を日本が必要とする採掘量に達するまで無差別に島々の占領を行う場合、下手をすれば島を元々所有していた複数の国家と多方面戦争となる可能性があるが、全ての敵国の本土まで出向くとなると、外征のコストや、制圧するコストや、占領統治するコストを考えると、コストがかかり過ぎる可能性がある。この為、全体的なコスト面から見て相手国の本土まで攻め込むのは問題があると言える。もちろん相手国に有用な資源があれば別であるが……(資源があれば獲得しようという風になってもおかしくない)。
では、島嶼部や沿岸部の占領で得られるグアノ鉱床の資源量は如何程のものなのだろうか。日本が戦争をするメリットがあるほど取れるのか考えてみよう。一見すると、小さな島で採れる資源量など、たかが知れている、日本の需要を満たせる程の量がある訳が無いとも思えるかもしれない。しかし、ナウルの例を見ると一概に無いとは言えないのだ。むしろ、多くの島嶼部を占領し幾つかの島からグアノ鉱床が発見された場合には、十分な量のリン鉱石が獲得できるかもしれない。
ナウル共和国のリン鉱石の年間輸出量は1960年代から1990年代に資源が枯渇状態へと陥るまで(現在は新たな鉱床が発見され採掘事業は再び好転)、年間で100万トン近い量が産出され、産出量は増加し最盛期の期間の内、1973年、1974年には年間の輸出量が239万トンにも達した。
このナウルの年間輸出量の値は日本が必要とするリン鉱石の総需要量が年間616万トンとされる事から、日本の需要量に当てはめると約3分の1に値する数値である(注意!異世界転移後に食糧の増産を行う場合、このリン鉱石の需要量はこの年間616万トンよりも大幅に増加する可能性あり)。
また、ナウルの総埋蔵量としては第二次世界大戦中に日本軍が調べた推定埋蔵量によると1億トンあったとされる。第二次世界大戦中の調べ故にこの値の正確性がどこまで正しいのかは不明だが、仮にこれが正しい場合、ナウルだけで16年間は日本のリン鉱石の需要を満たす事ができる計算である。
この様に、地球においてもナウルという例が存在する為、たかが小さな島の資源量などと侮る事はできないのだ。
ナウルの様な島が異世界になかったとしても、地球においてはナウル程ではないものの、年間数十万トンのリン鉱石を産出する島々はあちこちにあった。塵も積もれば山となるで幾つもこの様な島を有していれば日本のリン鉱石の需要をある程度の長い期間、満たす事ができるだろう。
これらの事から、島嶼部や沿岸部のグアノ鉱床を巡って日本が獲得を目指して戦争を起こすという可能性は十分にあり得ると言えるだろう。
リン鉱石の部分は少し長くなってしまったが、まとめると、化石質鉱床と火成鉱床のリン鉱石が欲しくて戦争を起こす可能性は低いが、グアノ鉱床のリン鉱石に関してはこれが欲しくて戦争を起こす可能性はあるという事になる。
・食料を巡る戦争
次は食料。食糧自給率が低い日本にとっては食料は喉から手が出る程、欲しい物だろう。さて、ではこの食料を巡って日本が食料目当てに戦争を起こす可能性を考えてみよう。
これは正直言うと微妙なところだ。あり得るかもしれないし、あり得ないかもしれない。これは異世界側の国の農業生産量次第だろう。
異世界の文明度が地球における中世から古代程度である場合、食料の生産能力は殆どの国が日本が求める需要に一切満たさない可能性が出てくる。というのも、地球において農業革命(農業技術の革新や農業経営の革新)が起こる以前は自分の国の国民を食べさせるだけで精一杯という国が圧倒的多数だったのだ。また、そもそも生産できる食料に限界があり、人口が少ない国が圧倒的だった。
例えば現代のイギリスの人口は1900年時点で4000万人に達したが、農業革命前の1750年の人口は僅か600万人だった。しかし、これが農業革命が起こると人口爆発が発生し1800年には900万人、1850年には1800万人に達するという僅か100年で人口が2倍になった。
もしも異世界の農業技術が少なくとも地球における19世紀頃の農業革命の水準に達していない場合、その人口は農業革命前の地球の状態に近い可能性があるだろう。そして、人口が少なければ当然の事ながら、生産される食料は少ない。逆に生産される食料が少ないから人口が少ないのだ。この程度の食料生産能力では日本の需要を満たす事など難しい場合が殆どだろう。
よって食料を目当てに戦争を起こす事は何のメリットにもならない可能性があるのだ。
とはいえ、完全に食料を目当てに戦争を起こさない可能性が無い訳では無い。それは古代においても当時としては莫大な食料を海外へと輸出していた事例もあるからだ。
ローマ帝国はエジプトやアフリカの地域から莫大な量の食料を輸入していた。当時、詳細に一体どれだけの量が輸入されていたのかは現代に記録が残っていない、もしくは発見されていない為、分からないが、この点に関して西洋史研究者の藤澤明寛研究員によると、首都ローマを中心とした首都圏に対して、年間、エジプトから1800万モディウス(モディウスはローマの単位。1モディウス=約0.8kg)、アフリカから2700万モディウス、合計で4500万モディウスの穀物が輸入されていた可能性があるという。
※藤澤明寛「ローマ帝国下の穀物供給 Cura annonae について-」を参照。
この4500万モディウスという数字はトンに変換すると36万トンとなる。日本の農林水産省によると2020年、日本人1人辺りで消費された米の量は50.8kg。この50.8kgという数字を1000万人辺りで計算すると日本人1000万人辺りが年間必要としている米の量は50.8万トンとなる。従って36万トンとは大体、日本人1000万人に当たりの72%(720万人)を満たすだけの供給量となる。
日本人全体として見れば小さな数字だが、720万人と言えば、千葉県の全てを賄う事ができる。千葉県では例えとして想像がつきづらいかもしれないが、この値(720万人)は都道府県人口ランキングの下位から数えると、鳥取県、島根県、高知県、徳島県、福井県、山梨県、佐賀県、和歌山県、香川県の9県分の人口を賄えるだけの量である。
また、エジプトやアフリカ以外にも歴史的に遥かに多くの食料を生産した地域は存在した。それがインド(現在のパキスタンやバングラディシュも含む)や中国、そして日本である。
1700年、インドのムガル帝国の人口は1億5千万人に達した。中国の清も同じく1億5千万人に達している。なお、豆知識として、これ以降は中国の人口は清王朝政権下で18世紀後半の時点で3億人を突破しているが、実は1700年より以前はインドの方が人口が多かったとされている。倍近い人口の差があった時期もあるとされる。
日本における江戸時代の人口推移は3100万人から3300万人台であったとされる。
アジアは世界史的に人口が非常に多い地域だった。これは中世の欧州の人口を基準に考えればとんでもない人口を抱えていた事が良く分かるだろう。欧州において人口100万人級の都市はローマ帝国の滅亡後は消失し、1801年のロンドンで86万4845人、パリで54万6856人であったが、日本の江戸の人口は18世紀初頭(1700年~)の時点で100万人を越えていたとされており、この都市人口はこの期間(江戸時代の間)の中国の北京や広州の人口に匹敵、もしくは世界最大の人口を有していた可能性があるという。この江戸の記録は19世紀にロンドンが急速に発展するまで、抜かれる事は無かった。
この欧州とアジアの人口差の原因は食べていたのが米であったりしたのが影響したと言われる。米は面積当たりの生産量が極めて高い穀物として有名なのだ。
江戸時代の記録によると1886年の米と甘藷(芋)の穀物の生産量は6766万石(1石=約150kg)。これをトンに換算すると12,206,401.85トン(約12206万トン)となる。
江戸時代の人々は1人辺り、1年で1.8石を食べたと言われているので、約324kgを食べていた計算になる。これは現代日本人と比較すると、とんでもなく米を食べていた計算となる。実際、農林水産省によると1人が1年間に食べる米の量は年々低下しており、1962年には118.3kg、1970年は95.1kgの米を食べていたが、2020年現在は50.8kgである。これは日本人の食事の多様化が主な原因であるとされる(今は米の消費が減り代わりに肉類の消費が増加)。
さて、である。これは単純計算の上、もし本当にやったら色々と社会的にも栄養学的にも様々な問題がでてきそうではあるが、もしも、江戸時代の日本人の米の穀物消費量を私達と同じ50.8kgにまで制限した場合、1年間で240,283,500.984人が1年間食べられる量の穀物を確保する事ができる。これは中国やインドにも似た様な事が言えるだろう(ただし飢饉とかが発生していない時代に限る)。
もちろん、当時の人々はおかずが少なく、栄養状態が悪いと推測される人々が多い為、足りない栄養を穀物で補っていた為、これをもしも、やったら餓死者や栄養失調者続出各地で暴動多発不可避だが、50.8kg制限で無くても、幾らか数値に調整を加える事は容易にできる。なにせ240,283,500.984人だ。例え半分にしてもかなりの余剰穀物を生み出す事ができる(約324kgを半分の量に)。
さらに、これらの地域(エジプトやアフリカの様な食糧輸出地域やアジア)は土地が豊である為、占領後により効率の良い農業法を教える事により、より多くの生産性が得られる可能性がある。そうなれば、中期的に見て、より多くの食料を得られる可能性もあるだろう。
これらを考えると、日本が転移した異世界にローマ帝国に食糧を供給していたエジプトやアフリカの様な食糧輸出地域や、地球におけるアジアの様に米もしくは米と同等に生産性の高い穀物を育てている地域が存在している場合には、これらの穀物を狙って日本が戦争を起こす可能性は無いとは言えないだろう。
しかし、食糧には食糧特有の問題が存在している。それは、当然、日本が異世界の食料生産国を侵略した場合、侵略後にその国の全土から食料を集め、日本へと輸出をする体制を整えなければならない訳だが、これは非常に超超超ハイメガ級高難易度クエストだ。
というのも、異世界の文明水準が中世から古代レベルである場合、交通インフラが殆ど整備されていない可能性が高く、また、当然の事ながら、大量輸送が可能な船が発着する港も無い可能性が高い。となると、日本は占領後、この国で全土に行き渡る程の長大な道路交通網や港湾施設を最低限は整備しなければならない可能性があるのだ。
流石に鉱山や油田の開発は死ぬ気で頑張って行う事ができたとしても、ここまでの大公共事業を行うだけの余力は異世界転移日本には無いだろう。やるにしても果たして何年、いや、十年、二十年以上はかかるかもしれない(プロジェクトの長期化)。食糧を目当てに戦争を起こすという事はそれだけ、切羽詰まった状況が考えられるが、いざ、戦争を行いましょう!戦争には勝てます!でも、日本が必要としている食料の輸出体制の完成には何年も先になりそうです!では話にならないとして、バカなこと言ってないで別の案を考えろ!となる可能性がある。
もっとも、切羽詰まっている状況であるならば、やらないよりマシという判断も当然あり得る為、この開発事情を込みで考えると日本が穀物を狙って戦争を起こす可能性は、まぁまぁと言った所だろう。正直、難しい所だ。
と、ここまで資源ごとに見てきた訳だが、次は日本の国力的に資源を目当てにした戦争を引き起こす可能性があるのかについても見て行こう。
中世から古代程度の文明度の勢力を相手に日本が戦争で勝利を収める事は容易いだろう(空飛ぶ島とかでない限り)。ブラジルレベルで惑星の真反対にあるようなら兵站でかなりきついかもしれないが、それでも殆どの地域で軍事的に日本が戦争に負けるシナリオは殆ど無いと言える。
しかし、問題は戦後である。戦後、資源目当てに獲得したその領土を現実的に開発するだけの国力を異世界転移で疲弊した日本ができるだろうか。もしも開発能力を捻出できなければ、戦争を起こして土地を獲得しても開発能力が無いのだから意味が無い訳だ。戦争を起こした分、ただ日本の資源とリソースを無駄遣いしたと言えるだろう。
この点については、大きく分けて2つのパターンと3つの時期で話が結構変わってくると思われる。
2つのパターンとは、日本経済に必要な最低限度の資源を奇跡的に早期に見つけ出す事ができたパターンと、見つけ出せなかったパターンだ。
日本経済に必要な最低限度の資源を奇跡的に早期に見つけ出す事ができたパターンの日本は、見つけ出せなかったパターンの日本に比べて月と鼈レベルで国力を大幅に維持できる可能性がある(維持とは言え、転移前よりは劣る)。この為、日本経済に必要な最低限度の資源を奇跡的に早期に見つけ出す事ができたパターンの日本は戦争後の開発パワーもかなりある為、戦争を起こす事は充分に可能であると言える。
※日本経済に必要な最低限度の資源を奇跡的に早期に見つけ出す事ができたパターンの日本に該当するグラフは経済成長モデルで言うとこの二つが該当するだろう。このグラフの詳細は異世界転移後の日本の経済成長モデルのコラム?エッセイ?を参照。
その一方で、日本経済に必要な最低限度の資源を見つけ出せなかったパターンだが、こちらは3つの時期に分かれる。それは転移初期、中期、長期の3つだ。なお、転移初期は備蓄石油が枯渇するまでの期間。中期は備蓄石油の枯渇から十年間以上の間。長期は転移から20年から30年後。
この場合に日本が戦争を起こすとするならば、転移初期、中期後半、長期の何れかの期間だろう。
というのも、転移初期はまだ備蓄石油など、国内にはまだ多くの輸入資源の在庫がある。この間はこれらの備蓄資源を使えば、幅広い事ができる為、この期間であるならば、戦争後に開発を行う事自体は不可能ではないだろう(不可能では無いが、かなり上手く政府が死ぬ気で調整+最優先化+場合によっては妥協(設備の性能の水準を下げて設備の生産をしやすい形にするなど)しないと、確実にプロジェクトが長期化する恐れ有り。何故なら海外(地球)が消滅している為、資材や部品集めなどで、企業任せの状態では企業に負担がかかり過ぎプロジェクトが大きく遅延する可能性などがある為。このプロジェクトの遅延をどれだけ軽減できるかが非常に重要となる(遅延の軽減は出来てもプロジェクトが遅延すること自体は、もしかしたら、どうしても避けられないかもしれない)。※なお、これは、あくまで日本国内向けの資源開発の話であり、これができるからと言って異世界の国にインフラを輸出できる程の余力が日本にあるという事ではない)。つまりは国力がまだ温存されているからだ。
一方で、中期前半は戦争を起こす可能性は低いと言えるだろう。中世や古代程度の文明度の勢力を相手に対して軍事力的には問題ないかも知れないが、戦後に開発を行う事は非常に難しいと言わざるを得ない。というのも、備蓄石油を使いつくし、転移によって悪化していた経済や産業の状態はより悪化、国内が大きく混乱に見舞われると予想される時期だからだ。戦争をしている余裕ははっきり言って余り無い。
一方で、中期後半は戦争を起こせる可能性は五分五分と言ったところだろう。少なくとも中期前半がほぼ無理であった状況下に比べれば遥かに高い。中期後半は備蓄石油の枯渇や経済や産業の悪化に伴う混乱に一定の落ち着き(それ以上落ちなくなった)を持ったと予想される時期だ。産業体制も備蓄石油に依存しない新たな体制に再構築されている可能性が高い(経済が底をつくと言う事は、あとは上がるだけという事)。日本経済が備蓄石油が枯渇した状態に最適化された状態であると言える。この状態は、ある意味、安定期もしくは緩やかな回復期であると言える。この時であるならば、備蓄石油に依存しない新たな体制下の産業によって中期前半よりは、日本の産業体制は強いと言えるだろう。この時期であれば、転移初期に比べれば遥かに難易度が高い事には変わりはないが、やりようによっては開発は恐らく可能だろう。
一方で長期は、中期後半以上に日本の産業や経済は回復していると予想できる為、戦後の開発はそれだけできる可能性が高くなっているという事である。つまり、それだけ戦争をやろうと思ったら現実的にできるという事だが、可能性的には転移初期のレベルに一歩及ばないか、もしくは及ぶレベルで戦争に踏み切る事はやろうと思えば可能だろう。
※日本経済に必要な最低限度の資源を見つけ出せなかったパターンの日本に該当するグラフは経済成長モデルで言うとこの二つが該当するだろう。このグラフの詳細は異世界転移後の日本の経済成長モデルのコラム?エッセイ?を参照。
※上記グラフ見比べ。
この開発能力を含む国力の話は北朝鮮をイメージしてもらえれば非常に分かりやすいだろう。北朝鮮は、1980年代には韓国を越える程の経済力を有していたが、ソ連が崩壊すると北朝鮮の経済や産業は破綻してどん底へと落ちた。しかし、それから時代が経ち、北朝鮮の産業体制は極貧なりにも金正日時代に比べて確実に成長している。国産兵器の開発と配備の他、準国産スマートフォンの普及(2023年時点で平壌で70%~80%、地方で30%以上の普及率。補足として平壌の人口は約250万人~300万人、北朝鮮の総人口は2548万人)、イントラネットの整備(北朝鮮版インターネット)、テレビの全国普及、大規模建設事業によって形成された都市群など、これらはソ連崩壊直後の時期の北朝鮮に比べると、確実にそれだけ様々な生産体制が徐々に整い、強化された事を意味している。ようは北朝鮮の経済はトップの方針を達成する為に試行錯誤を行い、経済制裁の状況に最適化された産業体制を構築したのだ(もっとも北朝鮮の場合は人権をことごとく無視した非常に強引な手法によって)。
どんなに経済が苦しくなっても無政府状態にならない限りは、国の産業はその国の状態に即した形態へと最適化される。その最適化が完了するまでは大混乱であろうが、最適化後は、最適化前に比べれば少しづつではあるが産業の状況はよくなるのだ。
異世界転移しても日本は北朝鮮よりも遥かに恵まれた状態である。まず、人口が1億人を越えている。元から持つ科学技術の水準も地球国家ランキングで上から数える程高い。生産設備も北朝鮮よりも遥かに多くある。自動車などの乗り物類も北朝鮮を遥かに超える数がある。全国に広がる鉄道網。全国に広がる道路網。発電所も数的には日本全国に電力を行き渡せるだけある(ただし、転移初期は燃料問題から計画停電不可避。とはいえそれでも北朝鮮の極貧な電力事情に比べたら砂粒と銀河レベルの差がある。もちろん銀河レベルが日本)。電力が使えるという事は電車も問題なく運行できる事から輸送能力も高い。地下資源には恵まれていないが森林資源に恵まれている(北朝鮮は森林資源に恵まれていない。森林資源は石炭自動車の燃料など様々な使い道がある)。石油と天然ガスが少しだけ採れる。食料自給率も米に限ればギリギリ100%(問題は肥料)。転移時点の物が溢れている(転移前に生産され販売された様々な製品類が国内には溢れている)。農業用インフラもすでに各地に存在(農業用水路等)。他etc……。
非常に優れたポテンシャルだ。
それでいて北朝鮮の場合は国民を飢えさせて、本来は国民生活に向けるべき国のエネルギー(国のパワー!)を核兵器やミサイルの開発に全振りして邁進しているが、日本の場合は別にそんな無駄なエネルギーの消費法をしなくて良い。日本の場合は北朝鮮とは違い、エネルギーを全力で国民の方へと振り分ける事ができる。国民にそれだけエネルギーを振り分ける事ができるという事はそれだけ、国民生活が良くなるという事だ。
国民生活が良くなるとは、それすなわち国民生活に関わる産業(食料生産、インフラ事業、IT他)が盛り上がり(回復)を見せているという事である。
北朝鮮のポテンシャルですら20年以上をかければ、これだけ国力の増強を図れるのである。北朝鮮よりも遥かに高いポテンシャルを持つ日本であれば、北朝鮮と同じ時間があれば北朝鮮以上の国力の増強を図れる事が可能だろう(政治家や経済界がちゃんと仕事をすれば)。
もちろん、北朝鮮は経済制裁を受けているとはいえ、中国やロシアなどから秘密裏に支援を受けている状況と完全に他の地球国家とやり取りできない日本とでは状況に違いはあるだろうが、日本は技術的に一部先端技術(半導体など)以外の技術は既に製造技術を所持している為、この点は誤差程度に考える事ができるだろう。どういう事かと言うと、北朝鮮は技術力を手に入れようとあの手この手で経済制裁を回避して精密工作機械などを入手して使ったり、なんとかそれを複製できないかと色々試行錯誤を重ねている訳だが、仮に北朝鮮が、日本並の技術力を有していれば、別に無理して輸入しなくても、時間が経てばある程度の生産設備を自力で整える事はできるだろう。
これがかなり前にエネルギー面で私が言った北朝鮮よりは遥かにマシな生活が出来きて、あとは戦時中の日本よりはマシという状況の片鱗だ。
ま、まぁ、日本経済に必要な最低限度の資源を見つけられないパターンの日本でも転移によって衰退した国力を中期から長期的に見れば緩やかな回復傾向に入らせる事は可能だけど、それでも転移前の水準に比べたら遥かに遥かに低い水準の次元の話なんですよねねね……。
もっとも、必要最低限度の資源を見つけられた日本も、国力は明らかに転移前よりかなり低下している訳ですが(それでも必要最低限度の資源を見つけられなかった日本よりは天国と地獄レベルで遥かにマシ)。
☆ここまで書いた感想
ここまで書いた感想なんですが、なんか今回考えた物の内、石炭、リン鉱石、食料で戦争を起こしている姿を少し想像してみたんですが、惑星侵略という言葉が脳裏に浮かびましたね。恐らくですが、異世界の地理構成が地球における地理構成と似た様な感じの場合で、その状況で侵略を進めていった場合、 "最終的" には日本の支配下にある地域の世界地図における分布は、かつてのポルトガル海上帝国やオランダ海上帝国の様に世界各地にとびとびで支配地域が分散してある様な状況になると思うんですよね。何でかって言うと、資源がありそうな場所を狙って捕食している可能性が高い訳ですから、日本は資源不足や資金不足で無駄な支配地域の拡大はできないと予想されるので、必要最低限の侵略となると、こんな感じの地図の状況になると思うんですよね。でも、異世界で資源目当ての戦争をしてこんな感じの地図になってる状況ってなんだか、異星に降り立った宇宙人が資源目当てに戦争をしている様な感じに見えてきました。すっごくSF感があります。




