#76 新たな出会い。そして……
それから俺達は逃げた黒い兜の騎士を探したが、痕跡さえ見つからなかった。
「見張りはどうした! 寝ていたのか!」
「いえ! 交代の時にほんの二〜三分目を離したようですが……」
つまり二〜三分の間に逃げた……いや、黒い兜の騎士は意識がなかったはず。だから、奴を連れ出した誰かがいるはずだ。
「例の魔道士か……厄介だな」
将軍が唸り声を上げる。もし、これが奴の仕業なら俺達が寝ている間に殺すことだって出来かねない。
「将軍。転移魔法といってもこれほど短時間で移動するためには陣などの仕掛けが必要です。そうしたものが城内に残ってないか探しましょう」
「頼む。私から王にも人材を貸してくださるように嘆願しよう」
サラはクレアと共に作業に取り掛かった。実は彼女はいち早く転移用の魔法陣が残っている可能性には気づいていて、捜索をしていたようなのだが、流石に城内全体を確認することはまだ出来ていなかったのだ。
「念の為に付近も捜索だ」
「「「「「「はっ!」」」」」」
散らばる騎士達に俺も続く。まだ遠くには行っていない可能性もあるからな。
*
(……ここにもいないか)
俺達は魔道士が逃げた可能性がある場所──例えば森のように俺達の目から場所や川の近くのように用意があればすぐに移動できる場所──を分担して探していた。が、俺の方はどうやら外れのよう……
(っ!)
こちらをうかがう微かな気配……まさかこいつは!
「……済まない。警戒させるつもりはなかったんだが」
そう言って茂みから一人の男が出てくる。彼が手を上げているのを見て、俺もまた剣から手を離した。
「こんなところで何をしていたんだ?」
「君こそ……と言いたいところだが、私は散歩だ。元々山育ちでね。たまにこんな森を歩きたくなるんだ」
街で暮らす人には分からないかも知れないが、俺には男の言うことがよく分かった。街は便利だが、音が多すぎる。たまには静かな自然が懐かしくなるのだ。
「……なるほどな」
「理解出来るということは君も山育ちなのかな」
「そう言えると思う」
俺が辺境で暮らし始めたのはそれなりの年齢になってからだが、辺境で暮らした年月の方が長いからな。
「道理で気配の消し方が上手いわけだ。正直キツネか何かかと思って近寄ったんだよ」
……そう言う訳か。
「あなたも上手い。ついさっきまで気がつかなかった」
「ははは、私は気づかれるとは思っていなかったんだけどね。まあ、引き分けということにしておこうか」
男が出した手を握り、握手する。変わってはいるが、悪い人ではなさそうだ。
「私は。君は……」
「シデンだ」
「そうか。シデン、君に会えて良かったよ。ではまた!」
そう言うとは手を振りながら去っていく。
(“ではまた”って……また会うことはなさそうだが)
通りすがりの人とまた会う機会なんてあるだろうか。
(あ、社交辞令って奴か)
街で住む時のルールって奴だ。何だ、山育ちって言ってたけど、結構街での生活に慣れていそうだな。
*
「はっ! はっ! はっ!」
色々あったが、シデン隊の皆の要望もあって稽古を再開することになった。
(気になることは色々あるけど……訓練もきっちりしないとな)
日々の備えがいざという時に生きてくるんだからな。まあ、流石にこんな大規模な戦いはもうないだろうけど……
(辺境を出て数ヶ月……色々あったなあ)
この数ヶ月は驚くことばかりだったが、エリザベス婆ちゃんはどうしてるかな。
(って言うか、父さんにも顔を見せないとな)
辺境を出てからバタバタしていて暇がなかったが、せっかく戻ってこられたんだから顔くらい見せないと。
(それから辺境に戻っ……いや、でもあの魔道士のことも気になるな)
一件落着と言いたいところだが、リアの命を狙っていた魔道士のゆくえはまだ分からない。あきらめるならまだ良いが、何かまた企んでくるかも……
(まあ、俺がいたところで大したことが出来るわけじゃないが……)
そんなことを考えながらも兵士達の太刀筋を見て、助言をしていく。うん、みんなちゃんと良くなっているな。
「ありがとうございます、隊長!」
「明日もよろしくお願いします!」
そんな言葉を聞いていると、俺は多くの人に必要とされている……そんな錯覚を覚えてしまうが、それは思い上がりだ。俺は一介の剣士でしかないからな。
「隊長、どうですか?」
えっ、リア。またか……
(王都に戻っても訓練続けるんだ……)
俺が変装したリアに助言をしようとしたその時、慌てた様子で兵士がこちらへ走って来た。
「シデン隊長! シデン隊長はおられますか!」
この時、俺はまだ気づいていなかった。この兵士が持ってきた知らせが新たな戦いへと繋がっていくことを……
一区切りがついたのでこの辺りで一旦お休みを頂きます! 続きの構想が纏まったらまた書きたいのでその時はまたよろしくお願いしますm(_ _)m
シデン 何か計画通りみたいなリアルが忙しくてスト
ックが尽きただけだろ。
くっ……うるさいぞ! でもまあ僕の執筆時間って通勤時間しかないしな。誰か僕の一日を二十五時間にしてくれないものか……




