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#72 竜殺し

「「「「「なっ、何だこいつは!」」」」」


 皆が呆気にとられていると、竜は突然空に飛び上がった!


「に、逃げるのか?」

「くっ、見逃すしかないか……」


 空に浮かぶ竜を見ながら武器を構えた騎士達がそう呟く。確かにあんなに高い場所にいられたら為すすべがないが……


(……来るッ)


 何か根拠があるわけじゃない。が、俺のカンが“これで終わるわけがない”と言っている。


「サラ、シデン、気をつけるのじゃ」

「ああ」


 クレアに言われ改めて気を引き締める。やはりまだ終わらないよな。


「ガぁぁぁぁ!」


 竜が大砲のような咆哮! そして……


 ビィィィ!


 鼓膜を震わせるような音と共に光が走った!


 ドドドッカーン!


 王城の裏手にあった山が吹き飛んだ!


「な、なな、何だあのブレスは!」

「む、無茶苦茶だぁ!」


 歴戦の騎士達からも悲鳴が漏れる。確かに悪い夢でも見ているような気分だな。


(が、これは現実だ。何とかしないと……)


 今のブレスは外れたが、次は分からない。何とかするには空を飛ばなきゃだが……


「ひ、ひぃぃぃ! 何だ今のは!」


 一際大きな悲鳴に思わず振り返ると、そこには〈へい、バトンタッチ!〉で居場所をリアと入れ替わったプラシドがいた。


「あ、丁度良い。お主、あの魔法で攻撃してみるのじゃ」


「は、はぁぁ? 届くわけないだろ! どれだけ距離があると思ってるんだ!」


 確かにあの竜はかなり高い場所にいる。高すぎて正確には分からないが……軽く十キロは離れているだろうな。


「役に立たない奴じゃ……口ほどにもないのぅ」


「おい、俺様を誰だと思ってるんだ! 俺は誇り高きヴェルナール家の──」


 クレアはプラシドに背を向け、俺の方を向いた。


「シデン……もはや手は一つしかないのじゃ」

「……ああ」


 後ろでプラシドが”って聞けぇぇ!“とか叫んでいるが、今はマジで聞く暇が無い。スマンな。


(竜に戻ったクレアと戦う。もうそれしかない)


 が、残念ながら俺はまだ一度もまともに成功したことがない。ぶっつけ本番でやって果たして成功するのか……


「大丈夫だよ、シデン! シデンは本番に強いもの!」


 サラがそう言って手を握る。


「リアだってきっとそう言うよ! シデンなら大丈夫!」


 サラ……


「私はそなたのことをあまり知らんから、無責任に聞こえるかも知れん。が、そなたは……そなたの剣がここで終わるとは思えんのだ」


 王が腰に帯びていた剣を外し、俺の手に握らせた。


「私に今出来るのはこれくらいだ。が、恥とは思わぬぞ。何せこの後、竜殺しの二つ名と共に莫大な褒美を与えることが出来るのだからな」


 陛下……


「シデンは既に妾を倒しておるが……ま、細かいことは良いか」


 クレアとサラが王から渡された剣に触れる。するとまるで皆の想いが心の中に流れてくるような感じがしてくる……


「なら終わったら宴じゃな。リアに怒られる王を肴に皆で呑もうではないか!」


「それは怖い。が、それもまた一興だな」


 そうだ。リアと陛下をもう一度会わせてあげないと……


(これでお別れなんて寂し過ぎる……)


 そのためにはあの竜を叩き切らないと!


「私にも貴殿の勝利を祈らせてくれ!」

「戻ったら再戦だ!」


 倒れている騎士からも声が上がる。叩きのめした俺に声援を送ってくれるなんて……


「お主の剣ならあの竜も斬れる!」


「新たな竜殺しが生まれる瞬間を見せてくれ!」


 皆の声に後押しされて、俺はクレアと向き合う。今なら……今なら出来る気がする!


「クレア」「シデン」


 二人の声が重なる。俺達はまるで鏡合わせのようなタイミングで拳を突き出した。


「「勝つ」」


 その瞬間……


 

 

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