#68 脱出
(シデン視点)
「では始めます」
魔道士がそう言って採血を始める。ただし、俺達の要求通り採血と同時に特効薬の投与を行うことになっている。
「王よ、薬です」
「……」
王は黙って薬の入った杯に口をつける。それはこちらの指定した通りクレアの役目だ。
「……」
「ゆっくりです……」
リアの血がまぜられて完成した薬とやらを魔道士から渡された俺はサラに渡す。それをサラは……
「おおっ! 手が動く!」
「はぁ?」
王が手を動かしながらそう言うと誰かがそう叫ぶ。これはあの魔道士の声か?
「足も! 声も出るではないか! これは一体……」
「あの魔道士の薬の効能でございます、王よ」
芝居気たっぷりにクレアが言うと、魔道士は悲鳴のような声を上げた!
「んな訳あるか!」
「……ってことは自分の企みだって認めるんだな?」
俺が詰め寄ると、魔道士は何がおかしいのか大声で笑い始めた。
「クックック……お前らこれで勝ったつもりか!」
取り繕った上辺を脱ぎ捨てた魔道士は邪悪な笑みを口元に浮かべた!
「こんなこと……この場にいる者を全員殺してしまえば済むことだ! 死ね!」
魔道士の杖先が光る! 魔法を使う気か!
「くらえ、〈サンダーボルト〉!」
雷の魔法が王に迫る! が……
バチッ!
雷が王に届く前に雷を俺の剣が切り裂く! ふぅ……間に合った。
「なっ……なにぃぃ!」
今だ!
ブン! シュッ!
俺は間髪入れず剣を振るうが、奴は一瞬でドアの方へと移動していた!
(瞬間移動……いや空間転移か。厄介だな)
けど、この距離ならまだ俺の間合いだ!
「くそっ、まるであいつの話と同じ……」
「逃がすか!」
俺は地面を蹴る。が、奴の姿は既に消えていた。
「すぐに兵が来る! 首を洗って待ってろ!」
声だけが辺りに響く。それと同時にたくさんの足音が部屋の外から聞こえてきた!
「とりあえずこの場を離れるぞ!」
「はい!」
肩を貸そうとしたリアは王に駆け寄ろうとする……が
バタッ
リアは数歩もいかないうちに躓いてしまった。大分血を取られたんだ……
「リア、無理するな。サラ、頼む!」
「分かった」
俺は王に肩を貸し、出口へと急ぐ。ここは最上階。下からは敵が押し寄せてくるから逃げ場は一つしかない。
「いたぞ! 王を連れ去る気だ!」
「反逆者め!」
けたたましい警笛が鳴り響き、重武装の騎士達が押し寄せてくる! くそっ、話を聞いてくれる雰囲気じゃないな……
「妾が敵を食い止める! 急いで行くのじゃ!」
言うが早いか、クレアの魔法が騎士達をなぎ倒す! 俺達は彼女の切り開いた活路を通って上へと向かった!
「見えました! あの先が最上階です!」
駆け上がった先には事前に調べた通り、最上階へと上がるための扉がある。
「俺が斬る!」
単なるドアなら片手で十分!
スパン!
あっさりと真っ二つになったドアを踏みしめて俺達は最上階にある庭園に足を踏み入れた。
「はあ、はあ、はあ……」
全力疾走で上まで駆け上がった俺達は全員が肩で息をしている。それは俺でさえ同じだ。
「王よ、こんな場所で申し訳ありませんが、とりあえず横に」
俺はベンチを勧めたが、王は首を横に振った。
「私よりもリアを休ませてやってくれ」
「父上、私は大丈夫です……」
「駄目だよ、リア。休んだほうがいいよ!」
サラが強い口調でそう言うのも無理はない。大量に身を失った後の全力疾走、流石のリアもかなり顔色が悪い。
「シデン、とりあえずバリケードを作ってきたぞ。少しは時間を稼げるはずじゃ」
「ありがとう、クレア」
戻って来たクレアにそう言って感謝する。ここまでは概ね作戦通り。だが……
(リアの消耗が予想以上に大きい……なるべく短い時間で済ませたつもりだったんだが)
ここへ来るまでの俺達の作戦では王を助けた後、用意していた便利グッズでリアを将軍の元へ送り届ける予定だった。で、残った俺達は混乱に乗じて脱出するつもりだったんだが……
(リアはもう動かさない方がいい。けど……)
リアに便利グッズを使ってしまえば、王様は俺達と脱出するしかない。だが、王様もついさっきまで寝てたんだ。無理はきかないはすだ……
「シデンさん、サラ。昨日話し合った通り父を将軍の元へ」
「「………」」
確かに昨日の晩、俺達は最初の予定を変更してリアじゃなくて王様を将軍の元に送ろうと話していた。王様は目立つ上に病み上がりだから俺達と共に行くには無理があると思ったからだ。でも……
「何か秘策があるならリアに使ってやってくれ。私なら大丈夫。こう見えて鍛えてあるからな」
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