#69 父親
トン……
何を思ったのかクレアが王の体に軽く触れる。すると……
バタッ……
何と王が転倒してしまった!
「……はったりもそのくらいにしておくのじゃ。そなたの体がガタガタなのはこの場にいる皆が分かっておる」
「我ながら良い演技をしたと思ったのだがな」
クレアに手を貸されて王が立ち上がり、近くにあった椅子に座った。
「久しぶりにあった娘の前で格好をつけたい気持ちは分かる。じゃが、時と場合を考えて貰わぬとな」
「……肝に命じよう」
王はそう言って苦笑する……が途中で咳こんでしまう。やはりクレアの言う通り王は相当無理をしているみたいだ。
「皆さん、父を将軍の元へ。私はもう大丈夫です」
リアが起き上がると、強い意思をたたえた瞳を俺達に向ける。
(リアは王以上に限界だ。でも……)
そんな目をされちゃ、駄目なんて言えないじゃないか。
「……負けたよ、リア。お前は昔から言い出したら聞かないからな。私が将軍の元へ行くとしよう」
「良いのかの?」
「ああ。ところでどういった手段を用いて私を将軍のところまで送るつもりなのだ?」
サラが王様に用意していた便利グッズ〈へい、バトンタッチ!〉の使い方を説明する。これは起動すると遂になっている装置を持った人と入れ替わることが出来るのだ。
「……なるほど。身につけてこのボタンを押せば良いのか」
「はい」
「これほどの力を持つ魔道具が一体何処にあったのか……いや、今は止めておこう」
王は〈へい、バトンタッチ〉をサラから受け取ると、立ち上がった。
「リア、無茶はするなよ」
「お父様こそ! どうぞご自愛ください」
「ああ。娘に救われた命、無駄にはせぬよ」
リアが王を……いや、父を抱きしめる。九死に一生を得た父娘なのにまた離れ離れだなんて……
(……いや、必ず無事に再会させて見せる)
そうだ。王を連れて必ず将軍の元に戻るんだ!
「リア……美しくなったな。お前の母にそっくりだ」
「お父様……」
王が別れを惜しむようにリアの頭を軽く撫でる。
「窮地を乗り越え、よくぞここまで来たな。私はお前を誇りに思うぞ」
「シデンさんや将軍、力を貸してくれたみんなのおかげです……」
「リア、私の代わりに将軍にもよく礼を言っておいてくれよ」
その瞬間、王は〈へい、バトンタッチ!〉をリアに押し付け、起動スイッチを押した!
シュン!
瞬時にリアの姿が消えた!
「すまぬの。リアをここに残しておくわけにはいかぬのでな」
王はそう俺達に詫びた。
「良いのか?」
「娘の命と自分の命、どちらが優先されるかなど決まってる」
クレアの言葉に王は迷うことなく答える。そうか……そうだよな。
「そなたらには感謝しておる。さあ、私を奴らに突き出せ。そうすれば命までは取られないだろう」
な、何を!
「そんなことは出来ません! 王よ、貴方には必ず生きて再びリアに会って頂きます。感謝しておられるというのなら、それを私達との約束にして頂きたい!」
俺が頭を垂れながらそう嘆願すると、王は深く頷いた。
「分かった。死力を通して生き抜くと約束する」
王の言葉で俺の心は決まった。例え誰が相手でも王を守りきる!
「それじゃ、妾達も踏ん張らねばな。娘に王が張り倒される……それ以上に面白い見物は今まで見たことがないのでな」
クレアが軽口を叩きながらバリケードの方を向く。どうやらそろそろ破られそうだ。
「で、何か策はあるのか?」
「そうですね……とりあえず片っ端から敵を倒していきます」
「ほぅ……勇ましいな」
王の声に”こりゃ駄目だ“と言わんばかりの失望が混じる。まあ、確かにこんなのは作戦とは言えないよな……
「王よ、結果を判断するのはまだ早いぞ」
「何?」
「まあ、シデンの戦いを見ているが良い。妾も驚かされたのじゃ。そなたにも驚いて貰わねばな」
ドカッ!
瓦礫をどかす音と共に敵の騎士達が姿を見せる。いよいよ来たな!
「いたぞ!」
「陛下もここだ!」
騎士は素早く隊列を組んで戦闘態勢を整える。けど……
(それを待つ義理はないな!)
俺はものも言わずに突進すると、スピードを乗せた剣を横に振るった!
「うわっ!」
「ぎゃあ!」
「ぐはっ!」
不意を突かれた騎士達が倒れる。そいつらのことはクレアに任せ、俺は新たに上がって来ようとしている騎士達に向き合った!
「ここは誰が来ようとこの剣聖シデンが通さん!」
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