#64 本音
「リア、俺はそんなに我慢しなくて良いと思う」
「え?」
「確かにリアの言うことは正しい。けど、考えて見てくれ。悪いのは王都にいるゲパルト王子なんだ」
どちらかしか選べない……人生にはそういう残酷な局面だってある。けど、これは親子の情を盾にとった人でなしの考えた企みだ。これも王族に生まれたものの運命だなんて物分りよく納得してやる必要なんてないんじゃないか?
「これは運命でもなんでもなく、所詮人間が考えた悪だくみだ。なら、今必要なのは受け入れることじゃなく、打ち破ることだと思う」
「打ち破る……ですか?」
リアが驚いた顔をする。まあ、そうだろうな。俺だって”何言ってるんだ!“と思わなくはない。でも……
(諦めるのはまだ早い……)
そう。少なくとも今はまだ諦める時じゃない。
「リア、君はここにいるみんなの旗印で、き希望でもある」
「ええ。だから私は皆と……」
「でも同時に君は俺達の仲間でもある」
「!!!」
リアがハッとした顔をした。今まで何か自分が大切なことを忘れていたことに気づいたかのように……
「君が本音で話してくれなきゃ皆も君に遠慮する。“リアは自分達のためを思って本当の気持ちを言ってない”ってな。そんな遠慮をし合う雰囲気じゃ勝てる戦も勝てないぞ」
長い間一緒に戦ったとはいえないが、ここにいる皆のことは俺なりに理解しているつもりだ。この軍の強さは皆の想いが一つに纏まっていることだ。だからこそ、他の軍では出来ないような奇跡が起こせるんだ。
「皆で考えて、どうしようもないなら諦めなきゃいけないかも知れない。けど俺達はまだどうすべきか考えてもないし、そもそも自分達の気持ちを話し合ってもない。それじゃ何をやっても上手くいかない……そんな気がしないか?」
「わ、私は……」
リアの瞳から涙が一筋流れ落ちた。
「私は最期に父に会いたいです……今すぐ王都に行きたいです!」
「そうだな。なら、どうしたら良いか皆で考えよう」
泣きじゃくるリアを慰めようと手を伸ばした手が宙を切る。何故なら既に彼女は俺の胸の中だったからだ。
「……よく言えたな、リア」
「うわぁぁぁん!」
まるで子どものように泣きじゃくるリアを俺は励ますように抱きしめていた……
*
「……事情は分かったけど」
その後、俺達はすぐにサラとクレアに見つかって釈明させられた。
「むむっ、妾には手も触れぬ癖にリアには……そなたやはり貧乳派なのか!」
何言ってんだ、クレア! ってかいくら何でもリアに失礼だろ!
(リアは結構──)
いや、待て。思い出しちゃ駄目だ!
「シデン、何考えてるの?」
ハッ!
「い、いや……どうやって王都に移動したら良いかをな」
「ふーん……」
サラの眼差しがこれまでにないくらいに鋭く、冷たい。まあ、俺が悪いんだよな……
「……私はむしろリアと王様が会った後の方が気になるな。会うためには奴らに従うしかないし」
「会った後……か」
会わせた後はもうリアは用済み……いや、邪魔だから抹殺という話になるかも知れないってことか。
(胸糞悪い話だな……)
勿論、会わせる気さえない可能性もあるが、その時はピンチが少し早まるだけ。国王に会えるにしろ、会えないにしろ敵の懐から脱出する手段が必要になるんだ。
「いくらシデンでも万単位の敵を一人で倒すのは無理だしね。まあ、休み休みなら大丈夫だろうけど」
「え?」
何言ってるんだ、サラ? 万単位なんて休み休みでも無理だぞ!
「忘れた? ヘーゼルクロウラーが大繁殖した時のこと。確か二〜三万匹はいたと思うけど」
ああ、あの気持ち悪い毛虫か……って今度の相手は人間だぞ?
「まあ、とにかく正面突破ってのは最後の手段だな」
「そうだね。それが良いと思う」
正面突破以外となると……姿をくらまして逃げるしかないか。
(けど、〈みえないもん!〉とか姿を見えなくする便利グッズはもう使い切ってるからな……辺境で魔物の素材を手に入れないと使えないな)
今から辺境に戻るのはどう考えても無理だ。つまり、今使える便利グッズで何とかするしかない。
「ふむ。リアが直接行かなくても良いなら代役を立てるという手もあるんじゃがな。”かげむしゃ“とか言うんじゃろ?」
「確かにな……」
だが、そんな都合の良い方法があるだろうか。会う瞬間だけ本物のリアがそこにいてそれまでは偽物のリアが俺達と一緒にいる。そんな都合の良い方法なんて……
(あ……)
待てよ。あの便利グッズを使えば……
「サラ、あれなら!」
「シデン、あの方法なら!」
俺とサラは同時に自分のアイデアを口にした!
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