#59 攻城戦
陣を敷いているうちに要塞へ出した使者が帰ってきた。予想通りバンラック要塞は第三王子の手に落ちており、俺達の訴えは全く聞いてもらえなかったようだ。
(……ってことは戦うしかないよな)
まあ、それは最初から分かっていたこと。後はやるだけだ!
「行くぞ! 一番乗りは我らだ! 遅れるなよ!」
「こちらも負けられん! 行くぞ!」
カートレット将軍の兵士達が次々に突進して行く。勿論、俺達シデン隊もだ。
(城壁に梯子をかけてそこから一気に侵入する……か)
城壁に立てかけられた梯子がスルスルと上へと伸びていく。強大な城壁の前では頼りなく見えるが、これを登って行くしかないのだ。
(敵の妨害を受けながら上まで上がる、か)
ゴリ押し感満載な作戦だが、城壁を壊す手段がないのならこれしかない。
(前みたいに〈するするするりん!〉を使えればよかったんだが……)
〈するするするりん!〉は残念ながら今は使えない。何故ならあれは使う度に辺境にいるワームワームの素材を補充しないといけないのだ。
「敵が来たぞ!」
「矢の準備を! 油もだ!」
こちらの動きを見た敵も動きが活発になる。多分壁を登ろうとする俺達に矢とか色んなものをぶっかけて落とそうとするんだろうな。
ガチャ!
そうこうしているうちに梯子がかかる……が、すぐに敵によって外されてしまった。向こうも壁に登らせるものかと必死なのだ。
「怯むな! 続けッ!」
梯子が次々に城壁にかかっていく。俺達のも上手くいったようだ。
「盾役から順に登れ!」
矢などを防ぐ盾を持った兵士を先頭に皆が登っていく。よし、俺も続くか!
「敵が登って来たぞ!」
「煮えたぎった油をたっぷりくれてやれ! 矢も添えてな!」
ドンドンドン!
腹に響くあの音はサラが改良した魔導砲だ! 相変わらずタイミングがバッチリだな!
「砲撃だと? 味方が壁に張り付いたこのタイミングでか!?」
その瞬間、突如俺達の背後から凄まじい風が吹き始めた!
「なっ!」
「これでは矢が当たりません!」
俺達に向かって放たれた矢は風により明後日の方向へと飛んでいく。さらには……
「ええい! なら、油だ! 早くやれ!」
「だ、駄目です! この風、普通の風じゃありません!」
サラの魔導砲で撃ち出されているのはクレアの魔法。矢などの遠距離からの攻撃を防ぐ防御魔法らしいが、油も遠距離攻撃とみなされたみたいだな。
「相手が怯んでる! 今だよ!」
ヘンリエッタさんが激を飛ばす。ああ、確かに今が攻め時だ!
ダッ! ダダダダダダダダッ!
俺は一気に階段を駆け上がる! よし、もうちょっとだ!
「シデン隊長! もうあんな所に!」
「隊長に遅れるな!」
皆の声援を受けながら梯子を登る。が、敵もいつまでも黙って見ていてはくれない。矢や油による妨害を諦めた敵は俺達が立てかけた梯子を手当たり次第に外し始めた!
ガタッ……
うわっ……俺の梯子もか!
ダッ!
俺は落とされる前に梯子を蹴って壁に向かって飛び、剣を突き刺した。
ザクッッッッ!
落ちるかどうかの瀬戸際だ。全力で突き刺した剣は城壁に深々と突き刺さった。
「このバンラック要塞に剣を突き刺すなんて……」
「けど、あいつはあそこから動けないはずだ!」
上の方から驚いた声と勝ち誇った声がする。確かに俺はもうかなり城壁を登っているから飛び降りるのはちょっと難しいが……
“大丈夫か、シデン! 今妾が……”
(大丈夫だよ、クレア。後はロッククライミングと同じ要領でいける)
”ろっく……なんじゃと?“
そうか、こっちだとロッククライミングとかしないのか。
(とは言っても手や足をかけるような場所は見当たらないな……)
ロッククライミングとは邪魔な岩壁を登る技のことだ。技といっても俺の場合はただ登るだけだけだ。
(まあ、使える窪みや突起がない岩壁なんてよくあるけどな)
ならどうするか……こうするんだ!
ドス!
俺は城壁を殴りつけた。
(あれ、思ったより柔らかいな)
これ、結構力加減が難しくて強すぎると岩の方が崩れちゃうんだよな。辺境で素振りをしたり、ツルハシを振ったりしてるうちに力がつきすぎちゃったんだろう。
(でも、コツは掴んだ。これなら……)
ドス! グイッ! ドス! グイッ!
穴を開けては手をかけて体を引き上げていく。一番下からやると日が暮れるが、この位置からならさほど時間はかからないぞ。
「あ、穴を開けて登ってくる……だと?」
「しかも、このバンラック城壁に素手で穴を開ける……あ、あり得ない!」
こっちじゃ岩を登る必要がないだろうしな。まあ、びっくりするのも無理はないか。
「よっと!」
俺が城壁を登り切ると、辺りにいた兵士達は悲鳴を上げて俺から遠ざかる。いや、そんなにびっくりしなくても……
(いや、そんなこと考えてる場合じゃない? 門を開けなきゃな)
そのためには敵を追い払わないとな!
「ひいっっ! ガハッ!」
「ぐふッ!」
とりあえず逃げる敵は放っておいて、向かってくる敵だけを倒していく。そうするうちに梯子がどんどんかかり、味方が下から登って来てくれた。




