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#50 次のステップ

 サラが魔導砲の自爆を止めたことで俺達の士気は一気に高まった。さらに敵だった兵士達からも俺達についていきたいと言い出す兵士が大勢現れ、俺達はさらに大所帯になった。


(戦に負けただけでなく、味方に殺されるところだったんだもんな……)


 兵士のほとんどは半ば強制的に連れてこられた農民だ。こんなことをされてまで従おうとするはずがない。


(まあ、プラシドの家臣みたいに代々仕えている奴らは別だろうけど)


 だが、プラシドに対する愛想が尽きたのか、サラの腕に惚れ込んだのかは分からないが、時折プラシドの目を盗んであれこれと教えてくれているみたいだ。


(それは良いとしても……何でこうなるんだ?)


 恒例の朝の訓練はいつの間にかまた人数が増えており、もう当初の倍くらいになっているのだ。


「流石剣聖……まさか魔法まで斬るなんて」


「たった一人で魔導砲を攻略するなんてスゲェよな!」


「俺も強くなればサラ様みたいな女の子と……」


 プラシドの魔法を斬れたのはクレアとの特訓のおかげだし、魔導砲の攻略はカートレット将軍や皆にも助けられてるんだけど……いくら言っても訂正されないのだ。


(ってか、最後のは何なんだ?)


 サラは俺の頼れる仲間で家族だぞ?


「型に忠実に! 丁寧に振るんだよ!」


「隊長は順に見てくださる! 騒がず待て!」


 ヘンリエッタさんや副隊長達の声があちこちで飛ぶ。人数が増えすぎてもう俺一人じゃ回しきれなくなったので助けてもらってるのだ。


(えっと、最初の人は……)


 俺はゆっくりと素振りを見てから話しかけた。


「君は視野が広いみたいだな」


「そ、そうですか?」


「特に戦闘中はよく周りに注意を促したりしてくれてるんじゃないか?」


「そう言えば……」


 どうも思い当たる節があるらしい。なら、俺の助言も役に立つかもな。


「だが、剣はもう少し思いっきり振った方がいいな。振る瞬間は剣以外のものを頭から追い出すくらいが丁度良いかも知れない」


「なるほど! ありがとうございます!」


 この人は周りが見える分、色んなものが気になっちゃうみたいだな。良いことだけど、剣を振る瞬間だけは切り替えた方が良いな。


(えっと、次の人は……)


 そうやって順番に見ていくと……


 シュンッ! シュンッ!


 聞き覚えのある音……間違いないな。


「隊長、如何ですか?」


 そう聞いて来たのはリアだ。長い髪を隠すためなのか帽子を被り、皆と同じような質素な服を来ている。


(別にわざわざ訓練に紛れて来なくても良いのになあ……)


 だが、自分だけ特別扱いというのが不公平に感じるらしく、こうやって紛れ込んでくるらしい。近頃ではカートレット将軍も黙認してるとかしてないとか。


(えっと、それはともかくちゃんと見てあげないとな)


 良いことかどうかは分からないが、ここまで強い想いを持って来てくれてるんだ。期待には応えないとな。


(うん……迷いが出てるな)


 今までのリアは機械のように正確に剣を振るっていた。が、今は違う。模索するように色々と試し、考えている。だから、剣に迷いが出ているのだ。


(けど、悪いことじゃないな)


 実戦なら駄目かも知れないが、今は訓練だ。迷ったり、悩んだりするための時間だからな。


「俺の話を良く聞いてくれているのがよく分かるよ。飲み込みが早いな……」


「っ! ありがとうございます!」


 目深に被った帽子のせいで顔はあまり見えないが、それでも飛び上がらんばかりに喜ぶリアの顔が超絶に可愛いのは分かる。ああ、よく分かる……


(って、駄目だ! 訓練中だぞ!)


 いや、訓練中じゃなくてもマズイだろう。だって、向こうは一国の王女様なんだからな!


「だから、次のステップだ」

「次……」


 リアが期待と緊張で体を固くする。それだけ見ても彼女が凄く一生懸命やっているのが分かるな……


「次は剣を振った時の自分の感覚にも目を向けるんだ。こう振った時はこう、みたいな感じで」


「自分の感覚……やってみます!」


 言うが早いかリアは剣を振り始めた。もう少し説明しようかと思ったが、彼女があまりに真剣だったので止めた。きっとリアなら自分で気づくだろうし。

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