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#48 私は私

 とりあえずその場はヘンリエッタさんが治めてくれて、俺達は各々の仕事に戻ることになったんだけど……


(……ショックだよな)


 俺はヘンリエッタさんからショックを受けているであろうサラのことを任されたのだが、一体何を話したら良いのか……


(……と言ってもいつまでも何も話さない訳にも行かないよな)


 俺がそう決心したその時……


「あ〜、びっくりした!」


 ……え?


「突然私が生まれた家が分かったんだもん。シデンもびっくりしたでしょ?」


「あ、ああ……」


 確かにそれはそうなんだが……


「……ショックだよな」


 記憶を失っていた昔の話を突然されただけでも驚きなのに、語られた過去は生まれた家を追放されたという衝撃的なもの。ショックを受けて当然だろう。


「それがね……そうでもないの」


 え? そうなの……


「確かにびっくりはしたんだけど……今は”へぇ〜、そうだったんだ“って感じでどうでも良いって言うか」


「……そうなのか」


 そう語るサラの横顔は普段通りのごく自然な表情だ。勿論、言葉通り何のショックも受けていないとは思わない。が、少なくとも俺が想像していたような状態ではないようだ。


「うん。だって、私がその……ヴェルナール家を追放されていたって私は私だし。過去がどうであれ、今の私が変わる訳じゃない。シデンもそう思うでしょ?」


「ああ、勿論だ」


 きっとエリザベス婆ちゃんもそう言うに違いない。過去に何があっても、未来に何があってサラはサラ。それは間違いない。


「だから、まあ別にそんな大した事じゃないって言うか。有名な家っぽいからちょっとびっくりだけど」


 サラには辺境に来るまでの記憶がない。だから、いわゆる一般常識はエリザベス婆ちゃんや俺から聞いたものだけだ。だから、あまり実感がないかも知れないが、ヴェルナール家と言えば子どもでも知っているような大貴族だ。


(基本的には“有名“なんてレベルじゃないが……まあ、どうでも良いな)


 どちらにせよ、サラはサラであることには変わりない。サラは俺とエリザベス婆ちゃんの大事な家族で、便利グッズの開発者で、今は頼れる相棒なんだ。


「それに追放された理由は何となく分かるし。魔法で有名な一族なら尚更だよね」


 何気なくサラはそう呟いた。彼女の言う“理由”は些細なことだ。珍しいことだが、平民の家なら別にそれが人生を左右することは滅多にないだろう。だが……


(魔法で有名な家に魔力がない子が生まれたら、確かにそういうこともあるかもな)


 誤解しないで欲しいが、俺は望まれた力を持たなかったからという理由で子どもを捨てるなんて最低だと思ってる。が、俺もいい年だから良くも悪くも色んな考え方があることを知っているつもりだ。


(魔法で有名な一族に生まれたのなら……それは欠点だと言われてしまうのかもな)


 誰にだって向き不向きはある。本来ならそれだけのことなのだが……


(けど、サラにとって魔力が無いというのは辺境に来た後にもネックになったっけな)


 エリザベス婆ちゃんの魔法で命を取り留めたサラは魔法に憧れて魔法の訓練を始めたのだが……そこど自分に魔力がないことに気がついた。


(……でも、サラは諦めなかった)


 努力に努力を重ねて魔法の力を再現できるような道具、便利グッズを生み出したのだ。だから、俺はサラに魔力が無いというのはむしろ誇るべきことだと思ってる。


「あ、そうだ。新しい便利グッズのアイデアがあるから時間がある時に聞いてくれる?」


「ああ、勿論だ」


 いつも通り楽しそうにアイデアを話し出すサラを見て、俺はこの話はこれで終わるものだと思っていたのだが……



 それから恒例の訓練──ちなみに昨日の捕虜達も一部参加してシデン達はさらに増えた──を終えた俺は再び軍議のために呼び出された。


(出発の段取りでも決まったのかな……?)


 のんきにそんなことを考えながら将軍の天幕に向かった俺を待っていたのは勝利の後とは思えないほど困った顔をした将軍だった。


「……来たか、シデン」

「はい。ただ今参上しました」


 雰囲気が重い……何かあったことだけは分かるが、一体何が……


「実はな、シデン……」


 カートレット将軍が重々しく口を開いた……



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