#47 真実
俺が小走りで近づくと敵軍の兵士達から悲鳴が上がった。
(えらく怖がられているな……)
最前列の兵士なんて後退ろうとして後ろの兵士にこづかれ、口論をする始末だ。うーん、別に取って食おうなんて思ってる訳じゃないんだが……
「て、敵はたった一人! 突……撃だ!」
部隊長らしい兵士がそう発破をかけるが、声が震えてる。どうやらあの魔法を斬りながらここまで来たのが相当なインパクトだったみたいだな。
(けど、これは戦いだ。手を抜くわけには行かないよな)
俺は少し速力を上げ、剣を上げた!
「ぎゃああ! あの剣士が来るぞ!」
「駄目だ! あんな奴に勝てるわけがない!」
俺が剣を振り上げたのを見ただけで、悲鳴を上げながら兵士達が逃げまどう。まだ俺は彼らに剣を振ってもいないのに前線は崩壊し始めている……
(無駄に血を流すこともないか……)
敵とはいえ、逃げる背を斬りつけるのは気が引けるしな。
「武器を捨てて降伏すれば命までは取らないぞ!」
俺がそう叫ぶと……
ガランガラン……ガランガラン……
辺りに剣を投げ捨てる音が木霊する。そして、剣を捨てた兵士達はまるで許しを乞うように額を地面につけ、手を掲げた。
(お、おお……ここまでしなくても良いんだけどな)
どんだけビビられてるんだよ、俺は。ちょっと引くぞ……
「おい、武器を捨てれば生かしてもらえるらしいぞ!」
「早く剣を捨てろ! 死にたいのか!」
武器を捨て、頭を垂れる兵士達がどんどん増えていく。それを見て慌てたのが、さっきまで発破をかけていた分隊長達だ。
「おい、戦わんか! 敵の言葉に惑わされるな! おい!」
そう言いながら地に伏せる兵士を蹴り飛ばすが、誰も言うことを聞かない。そのうち、一人、また一人と発破をかける声が減っていった。
(もしかして、空から見れば将棋倒しみたいな光景かもしれないな……)
幾らなんでもこれは……と思いつつもとりあえず敵の本陣がありそうな方向へ向かって歩いていると……
「おおっ……これは!」
「敵が既に降伏してるだと!」
カートレット将軍と後に続く騎士達が俺に追いついてきたみたいだな。
「がっははっは! 戦わずして勝利するか! 流石シデン! 面白い漢よの!」
カートレット将軍が上機嫌でそう言いながら背中をバンバンと叩く。やっぱり地味に痛い。
(けど良かった。どうしたら良いか分からなかったからな……)
俺が叩かれている間に将軍についてきた騎士達が手際良く敵軍の兵士達を武装解除し、ひとまとめにしていってくれている。
(ふぅ……これで一件落着かな)
この時点では俺はそんなふうに気楽に考えていたのだが……
*
事件は次の日の朝に起こった。
「お前はッ!」
朝食の時間に突然ある天幕から大声が上がったのだ。
(サラが行ってる方向だな!)
俺が急いで駆けつけると、そこには呆然としたサラと興奮する一人の男がいた。
(あいつは確かプラシドとかいう魔法使いだったか?)
確かあの炎弾を出していた魔法使いだと聞いたが……一体何なんだ?
「何故生きてるんだ! お前は一族を追放されたはず!」
「え? 追放……?」
突然訳の分からない言いがかりをつけられたサラは流石に混乱している。そりゃそうだろう。俺だって訳が分からない。が……
「おい。事情は分からないが静かにしろ。サラ、こっちに」
俺が声をかけると大声を上げていたプラシドはビクッと震え、縮こまる。その隙にサラは俺の方へと移動した。
「あんた、自分が捕虜だってこと忘れちゃいないよね?」
駆けつけていたヘンリエッタさんがにらみつけると、プラシドはさらに震え上がった。
「ひ、ひぃぃ……だってコイツは誇りあるヴェルナール家を追放され、処分されたはずなのに!」
追放? 処分?
(サラは辺境に来る前のことは覚えてないっていったが……)
俺とサラが出会ったのは十年くらい前。まだ彼女が七〜八歳くらいの頃だ。着の身着のままで辺境を彷徨っているところを俺が見つけて連れてきたのだ。
(辺境に一人でいた時点で何かあるとは思っていたけど……)
まさかこんなところでサラの過去が明らかになるなんて……
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