#46 想定外
(魔導砲の射手プラシド視点)
自分の天幕でのんびりと魔導書を読んでいると、突然連絡が入った。
「プラシド様! 敵に動きが!」
あれから三日。そろそろ逃げ出す頃かと思ったが……
(玉砕覚悟の特攻でもする気になったか?)
どうせ連撃の隙を突いて……みたいな甘い考えで来るのだろうが、俺の魔法はそんな甘いもんじゃないぞ!
「何だ?」
「まだ距離がありますが、敵が一斉に並んでます!」
一斉に……? やはり特攻か。
(なら向かえ撃ってやらんとな)
無駄死にが望みならそうしてやるよ。まあ、一方的に敵を蹂躙するのは嫌いじゃない。
「今行く!」
俺は天幕を出ると最前線に配置された魔導砲へと向かう。そして……
(あいつら、何をしている?)
魔導砲に付属している遠くを見るための望遠鏡を覗いた先にあったのは壁のように並ぶ敵の兵。何かの陣形をとってる訳ではなく、本当にただ並んでいるだけだ。
ザッ!
突然兵士達の壁が二つに割れる。その真ん中に立っているのは一人の男。
(カートレット将軍じゃないな。誰だ?)
知らない顔だ。って言うか、一体何をするつもりなんだ?
ダッ!
男の姿が瞬時に消えた!
「プラシド様! 敵接近! ひ、一人です!」
おいおい、一人で向かってくるのかよ! 三日かかって思いついたのがこれかよ!
「慌てるな! 照準を!」
動揺する馬鹿な家臣共に指示を出し、俺は魔法の準備に入る。
「照準良し!」
「撃てます、プラシド様!」
よし、行けッ!
「〈フレイムノヴァ〉!」
ゴォォォ!
馬鹿な男に炎弾が真っ直ぐ飛んでいく。そして消し炭に──
ズバンッ……
音が聞こえる距離じゃない。が、俺の耳にはそんな音が聞こえた気がした。そして……
「は?」
俺の炎弾が……真っ二つだと?
「て、敵、更に接近!」
「プラシド様、次弾を!」
家臣の声に俺は我に返る。そうだ、次だ!
(あれはきっと見間違いだ! そうに違いない!)
魔法が剣で斬られるなんてあり得ない。ましてや俺の最高最強の魔法だぞ? 斬るどころか近づくことさえ出来るはずもない!
「照準良し!」
「撃てます、プラシド様!」
よし、今度こそ!
「”紅蓮の炎よ、焼き尽くせ! 〈フレイムノヴァ〉!“」
魔力を大量に注ぎ、詠唱で強化した俺の〈フレイムノヴァ〉の威力はさっきの二倍! これなら何の間違いも起こりえるはずがない!
ズバンッ!
……は?
(う、嘘だろ……)
信じられないことに俺の炎弾が真っ二つに……
ヒュゥゥゥン……
そして、両断された炎弾はあさっての方向へ飛んで行った……
(ば、馬鹿な。俺の魔法が……)
いや、待て。そもそも魔法を真っ二つってどういうことだ。あり得ないだろ、そんなこと!
「プ、プラシド様! 魔法が……」
分かってるよ! だが、どうするか……
「ど、どうしましょう!」
「う、うるさい! とにかく次だ! 奇跡は何度も起こらん!」
そうだ! もう一度……今度はありったけの魔力を込めれば!
「いえ、炎弾がこっちに……」
は?
ドッカーン!
半分にされた炎弾が俺達の陣地の真ん中に落ち、大爆破を起こした。
(あ、あり得ないだろ……)
敵が鬨の声を上げるのが聞こえ、家臣達が慌てふためく。あり得ない……こんなこと絶対にあり得ない……
*
(シデン視点)
ドッカーン!
敵陣に炎弾が落ちたのを見て、俺はほっとした。
(良し……大体はコントロール出来るようになったな)
クレアに協力してもらって特訓した甲斐があったよ。
(あれだけの威力の魔法だから魔穴を見つけるのも斬るのも苦戦するかと思ったんだけどな……)
だが、やってみるとかえって簡単だった。大量の魔力が込められているせいなのか、威力の高い魔法ほど魔穴は簡単に見つけやすく、脆かった。だから、二撃目は落ちる方向をコントロールすることさえ出来たのだ。
ドッカーン!
あ、もう片方も落ちたな。
「「「全軍突撃っっ!」」」
将軍達がこちらへ向かってくる音が聞こえる。計画通りだな。
「我らが剣聖の作ったチャンス、無駄にするな!」
「英雄シデンの突撃に遅れるな!」
シデン隊の副隊長やカートレット将軍の部下隊が声を枯らせて皆を鼓舞している。まあ、こう言うのは大げさすぎるくらいで丁度良いって分かってるけど、何か恥ずかしいな。
(……俺も敵陣へ向かうか)
皆が俺についてこようとしてるのに、ここで止まってる訳には行かないよな……
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




