#45 誤解
(シデン視点)
カートレット将軍の天幕に行くと、すぐに軍議が始まった。
「奴らまさか魔導砲まで持ち出してくるとは……」
「しかし、あんなに重いものをどうやって!」
「ヴェルナール家が小型化を目指して研究していると聞いたことがある。まさか成功しているとは思わなかったが……」
カートレット将軍の部下達があれこれと喋るのを聞いて、俺も何となく状況を理解した。
(つまりあの攻撃は特別な魔道具を使った攻撃なのか……)
つまり、魔道具を壊せばもう撃てなくなるってことか。なるほど。
「そう言えば、クレア殿は魔法で二撃目を防いでくれたらしいな。感謝する」
「勝手にやったことだから気にすることはないのじゃ。それにサラの力もあったしの」
俺の隣にいたクレアにカートレット将軍が頭を下げる。ちなみにこの場にいる人は皆、クレアの正体を知っている。
「では、例えばだが……同じことをまたしてもらうわけにはいかないだろうか。無論、サラ嬢にも協力して貰わねばならんが」
「同じ魔法を使うのは構わぬが、多分防ぎきれぬぞ。この姿で使える魔法じゃと直撃までは防ぎきれぬな」
「……」
「勿論、元の姿に戻れば容易いが、それはそれで困るじゃろ?」
確かにそれはそうだろう。突然こんなところに龍が……しかもダラク山脈に住んでいた古龍が現れたとなったら大混乱だろう。
「そ、そうだな。うーむ……」
「あの魔法、人間にしては中々のものじゃ。まともに食らえば妾とて多少のダメージを受けるじゃろう。防御するのは難しいのではないか?」
古龍であるクレアにさえ手傷を負わせる攻撃か……確かに防御するのは難しいだろうな。
「防御が駄目なら回避するしか……」
「論外だ! 見えない距離から飛んでくる魔法をかわすなんて!」
カートレット将軍の部下達の言うことは最もだ。見えない距離から飛んで来られたらどうしようも……
「いや、見えたとしても魔法をかわすなんて無理に決まってる!」
うん? 見えたら……か
(あ、見えたらどうにかなるか)
そう言えば、ヘンリエッタさんの村を勝手に占領していた奴らのおかげで魔法を叩き切るコツを掴んだっけ。同じことがあの魔法にも出来るかもな……
(あ、でも叩き斬っても皆を巻き込んじゃうか)
走りながら斬れば、俺は斬った瞬間に移動しているから多分無事だ。けど、あの魔法はクレアでさえ防御しきれない。ついてきたみんなが危ないな……
「しかし、防御も無理、回避も無理では打てる手がないではないか!」
いや待て待て。別に皆についてきて貰う必要はないじゃないか。皆に避難しておいて貰って、俺が一人で魔導砲とやらを壊せば良いんだ!
「こうなれば被害は覚悟で突っ込むしか。一発で全滅せぬよう分散すれば……」
だが、斬った後に何処に飛んでいくかまではコントロール出来ないかもな。前回は斬ることしか考えてなかったからそんなこと試してないし……
「しかしあの魔法、二撃目が来るのもかなり早かった。無闇に突っ込んだら全滅しかねん……」
一か八かで試してみるか? しかし、自分はともかく仲間の命を賭けるにはあまりにも不確定要素が多過ぎる……
「ならどうするというのだ! このままここでじっとしてると言うのか!」
俺が突っ込む。飛んできた魔法は斬る。ここまでは良いよな。
「そんなこと言ってない! 単にやり方を考えろというんだ! そのための軍議だろ!」
が、問題はその後だ。何処に飛んでいくか分からないあの炎弾に皆を巻き込まないためにはどうしたら良いのか……
「シデンはどう思う?」
はっ! カートレット将軍!
(しまった。俺、一人で考え込んでいたせいでまだ何も喋ってないや!)
何か喋らないと! ええっと……
「いや、皆を巻き込まないようにするにはどうしたら良いかと……」
「「「「「「「「「は?」」」」」」」」
あ、あれ? 何か変なこと言ったかな?
「いや、あの炎弾を斬ったら何処に飛んでいくか分からなくて……」
俺がさらに説明をするが、皆の表情の曇りは増してゆく……
「は? 斬る?」
「炎弾を……何だって?」
や、ヤバい。呆れられた。そりゃそうだよな。味方を巻き込まないようになんてのは当たり前の話だ。
(辺境では、いつも一人で戦ってたから……なんて言い訳にはならないよな)
ましてや今の俺は仮にも隊長なんだ。ああ、穴があったら入りたい……
「……申し訳ないのですが、飛ばす方法をコントロールするなんて試したことがなくて」
「え……?」
「は?」
皆がポカンと口を開ける。ううう……何と言ったら良いのか……
「シデン……」
「は、はい。将軍……」
カートレット将軍の声は何かを押し殺したようだ。ヤバい、これは怒られるのか?
「……最初から話してくれ。お主は一体何を考えていたのだ?」
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