#43 退避
ドッカーン!
炎弾が爆発して辺りに煙が立ち込める! しまった、遅かった!
「隊長、引いてください! 自分達が盾になります」
「もう少し距離を取ればいくら何でもして届かなくなるはずです!」
そう叫ぶのはさっき将軍のところから来てくれた兵士だ。持ってる盾から煙が上がってるところを見ると、あの魔法を受け止めてくれたのか。
「ぐわっ……」
「がふっ……」
が、周りには攻撃の余波を食らった兵士達が悲鳴を上げている。とにかく退避しないと!
「皆、距離を取るぞ! 負傷者には手を貸してやれ!」
俺はそう言うとケガをした兵士を担ぐと、走り出した!
(が、背中がガラ空きだな……)
言われた通り逃げるしかない。が、十中八九敵は追撃してくる。今できる最善の行動は次弾が来る前に射程距離の外へ逃れることだけ……
(全員の退避、間に合ってくれ……!)
が、俺の祈りも虚しく……
ゴォォォ!!!
さっきの炎弾! くそっ、もう来たのか!
ドッカーン!
再び炎弾が破片を撒き散らしながら爆発! そして、それはシデン隊の皆に降りかか──
ゴゥゥゥ!
突然俺達の後方から強烈な風が!
(炎弾の破片が飛ばされていく!)
これなら……
「くっ、全部は無理か!」
クレアが悔しそうに歯ぎしりをする。そうか、さっきの風は……
「大丈夫! “いたいのすいこんじゃう〜”」
サラはそう言うと、大きな袋に長い管がついたような魔道具を取り出した。あれは確か……
ブゥゥゥゥン!
”いたいのすいこんじゃう〜“が唸りを上げて皆の上に降りかかろうとしていた炎弾の破片を吸い込んでいく。ナイスだ、サラ!
(これなら何とか逃げ切れるか……)
それにしても恐ろしい魔法だ。あれを破るにはどうしたら……
*
「痛タタタ……」
「大丈夫ですか?」
安全な場所まで引いた後、サラは怪我を負った兵士の手当てを始めた。
(誰も死ななくて良かった……)
飛んできたのは炎弾の破片だったこともあって死人は出なかった。が、火傷を負った兵士は二十一人。しかも、かなり酷い。
(俺もサラみたいに手当てをしたいけど)
俺も手伝おうとしたが、ヘンリエッタさんに止められた。で、代わりに声をかけるように勧められたのだが……
(そんなことで良いのかな……)
俺が声をかけたところで痛みが引くわけでもないんだけどな……
「良く頑張った。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます! 隊長! すぐに怪我を治します!」
あれ……さっきまで痛がっていたのに……
「生きていてくれて良かった。ゆっくり怪我を治してくれ」
本当に命があって良かった。けど、火傷もしんどいと思うし、こんなこと言われてもあれかなぁ……
「まだ何の戦果も上げていない俺にそんな言葉を……こんな怪我なんかすぐに治してお役に立って見せます!」
あれれ……? 喜んでる?
(うーむ、一体どう言う事だろう……)
怪我をした兵士達を寝かせている天幕から出た俺がそんなことを思いながら首を傾げていると、ヘンリエッタさんが苦笑しながら近づいてきた。
「何で皆が元気になったのか分からないかい?」
「そうですね……俺は大したことを出来たとは思わないのですが」
大体見方によっては俺のせいで怪我をしたとも言えるのだ。何せ俺に言われた通りに進んでいてあんな攻撃を受けたんだからな。
(なのにそんな俺から声をかけられて喜ぶ……何でだ?)
うーむ、よく分からない。
「それはあんたが皆にとっては憧れだからさ、シデン」
憧れ……?
「皆、あんたの剣や強さに憧れているんだよ。だから、声をかけられただけでも嬉しいんだ」
強さか。まあ、確かに辺境で鍛えられたとは思うが……
「あんたについていけば自分も強くなれるかも知れない、そう思うから皆あんたについてくるんだよ」
自分も強くなれるかも、か。
(そう言われると、分からないでもないか)
昔、剣を習っていた頃、師匠や先輩は俺の憧れだった。俺は師匠みたいに強く、先輩のように上手くなりたくて毎日稽古をしたっけな。
(……ってことは皆には師匠や先輩達のように接してやれば良いってことか)
かつて自分がしてもらったように……そんなことが出来るかどうかは分からないが、まずはやってみないとな!
「憧れられるほどかどうかは分からないが……要は皆を鍛えてやれば良いんだな」
「……まあ、そうだね。とりあえずは」
俺の言葉に苦笑いをしながらヘンリエッタさんは頷いた。うーん、何かちょっと違うのかな?
「おっと、忘れるところだった。カートレット将軍が呼んでるよ。ついてきてくれないかい?」
軍議だな。よし、皆のためにもあの魔法攻撃を破る方法を考えないとな!
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