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#41 試食

「む、むむむッ!」


 猛将の名を欲しいままにするカートレット将軍が今、迷っている。それは誰の目にも明らかだ。


(まあ、無理もないよな……)


 唸る将軍の前にあるのはサラ特製の魔物料理。今回は近くにいたホーンラビットという魔物を俺が狩り、サラに調理してもらった。見た目がウサギに近いから抵抗が少ないかなと思ったんだが……


(美味いんだけど、一口目がな……)


 ちなみに見た目はめちゃくちゃ美味しそうなシチューだ。が、調理過程は全て見せているので将軍達はこの美味しそうな料理の中に魔物の肉が入っていることを知っている。


「すっごく美味しんですよ、ほら」


 ゴクッ……


 俺は皆の前で一口飲んで見せた。正直辺境にいた上位種のギガホーンラビットの肉の方が美味いんだけど、ホーンラビットも十分美味い。一口で我慢するのが辛いくらいだ。


「むむむッ!」


 シチューが俺の喉を通るのを凝視するカートレット将軍に俺とサラは苦笑する。まあ、魔物を調理して食べるなんて普通考えもしないよな。


「……えっと、やっぱりやめておきますか?」


 カートレット将軍とその部下達の視線を浴びながら、結局シチューを全て飲んでしまった俺は皆の顔を見ながらそう言った。皆、興味半分、怖さ半分といった感じだな。


(後はきっかけだけ……って感じか)


 飛ぶしかない崖。さあ、いつ飛び降りるか……といったところだろうか。


(まあ、別に無理に食べる必要はないしな)


 ここは他に食べ物が手に入らない辺境とは違う。抵抗のあるものを無理に食べる必要なんてないのだ。


 カチャ……


 そう思って俺が皿を引こうと立ち上がろうとした瞬間、カートレット将軍のスプーンが音を立てた!


 ザッ! バクッ! ゴクッ!


 風のようにスプーンが動き、目にも止まらぬ速さでにスープが将軍の口へと運ばれ、喉へと押し込まれる。そして……


「っっっっっっっ!」


 言葉にならない叫び声を上げながらカートレット将軍は立ち上がる!


「将軍ッ!」

「まさか!」


 そんな尋常ならざる部下達も血相を変える。が、次に出た一言は……


「美味いッ! 美味い美味い美味い美味いぃぃぃ!」


 そう叫ぶとカートレット将軍は瞬く間に皿を空にしてお代わりを要求した。


「本当に美味いのか……?」

「しかし、将軍が……」


 将軍がまるで数日間絶食していたかのような勢いでシチューに取りかかるのを見て、その場にいた部下達も恐る恐るスプーンを持つ。すると……


「「「「「ッッッッッッッッッ!」」」」」


 今まで味わったことのない美味しさに全員が棒立ちになる。そして、すぐに激しくスプーンが辺りに響き始めた……



「何をしてるんですか?」


 一段落した後、魔道具と魔物食を利用した兵站について相談し始めたサラと別れて書き物をしているとリアが声をかけてきた。


「ああ。エリザベス婆ちゃんに手紙を書こうと思って」


「辺境におられるエリザベス様にですか……?」


 俺は首を傾げるリアを見て、俺は彼女にまだ話してないことがあるのを思い出した。


「サラの便利グッズを使えば、簡単さ」


 俺は懐から封筒を出して見せた。


「これはある魔物の羽で作った魔道具で目印まで飛んで行ってくれるんだ」


「す、凄い……なら遠いところにいる人にも一瞬で連絡出来ますね」


「相手がこれを持ってないと駄目だけどな」


 俺はそう言うとハンカチのようなものを取り出してリアに見せた。これは婆ちゃんの封筒を呼び寄せるための魔道具“お手紙ちょ〜だい”だ。これは封筒の材料になった魔物の番の羽から作ったもの。詳しくは知らないが、互いを引き寄せる性質があるからこう言うことが出来るらしい。


(久々に父さんにも手紙を書いておくかな……)


 実はちょっとした伝手で婆ちゃんが持ってる“お手紙ちょ〜だい”と同じものを父さんに送っているのだ。流石の俺でも実家の皆が無事だと知っていなければ辺境でのんびりなんて出来なかっただろうな。




いつも読んで頂きありがとうございます!

次話も頑張って書くのでよろしくお願いします! 

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