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#30 火急

(???視点)


「……とこのように第一王女派の取り込みは順調です」


「ふん、まあ当然だろうな。死人の味方をしても何の得もないからな!」


 第三王子ゲバルトはふんぞり返ってそう言うが、こいつ自身は別に何もしていない。まあ、お飾りなんだからそんなもんだが……


(いや、それよりも……)


 馬鹿を馬鹿にする前にしなければ行けないことがある。今日こそは是が非でもうんと言って貰わないとな。


「ところでアイゼリア王女の生死の確認の件ですが……」


 今最優先なのは第一王女暗殺の成功を確認することだ。辺境へ送り込んだところまでは確認できているが、実行を任せた奴らが帰って来てないのだ。


(まさか失敗したのか?……いや、そんなはずは)


 女一人が三人の騎士を相手に出来るはずがない。しかも奴らを率いる男爵には銃を持たせてある。助けの来ない辺境に送り込めた以上、失敗なんて有り得ない。


(……辺境は遠いからな。そのせいだろう)


 さっき“第一王女派の取り込みは順調だ”と言ったが、その効率は生死が確認できているか否かで全く異なってくる。それに他にもちゃんと確認しておきたい理由があるのだが……


「くどい! 生きてるはずがないだろ!」


 くそっ……駄目か


「何故男爵の帰りを待てないんだ。時間がかかるに決まってるだろ!」


 こいつ、事の重大さが分かってるのか? 第一王女暗殺なんてのは失敗したら一巻の終わりなんだ。その成否の確認は最優先事項に決まっているだろうが!


「それよりも女だ。もっとマシなのはいないのか!」


 ……全く。この一大事に呑気なことだよ。


(ま、そのお陰で楽に計画を進められるってところはあるが)


 仕方ない。本当は戦う前に士気を下げてやりたかったがな。


(カートレット将軍がもう反乱を鎮圧するとはな。あれほど入念に仕込んだというのに……)


 あと半月は保つと思ったんだが、早すぎだ。将軍には全てが終わるまで王都に帰って来て貰うわけには行かないからな。


(とにかく誰かを向かわせないとな)


 王国随一の戦闘集団とはいえ、まだ戦った直後だ。そこに旗印である第一王女が行方不明と来ては士気も上がらないはず。


(なら、数で押せばいいか……)


 馬鹿王子が自分のタイプについてぐちぐちと話している間、俺は脳内でこれからの計画を綿密に練り始めた。


(シデン視点)

 ダラク山脈を越えた俺達は一息つく間もなく行軍している。というのも……


「やれやれ、何でこう人間という奴はせかせかしておるのじゃ? 山を越えたら一息つけばいいものを……」


「将軍の説明聞いてなかったんですか? あと、くっつき過ぎです!」


 サラはそう言うと便利グッズの一つ、“こっちにお〜いで!”で俺の背中にくっついていたクレアを引き剥がした。


(サラも大分クレアの扱いに慣れてきたな……)


 畏まる必要はないと本人が言っているとはいえ、クレアはドラゴン、それも最も格の高い古龍だ。だからこちらも恐る恐るという感じにならざるを得ないのが普通なんだが……


「しばらく行くと丘があるんです。追手が来る前に丘をおさえたいんです」


「ふむ……?」


 クレアは今一つ理解出来ていないようだ。まあ、ドラゴンにはよくわからない話かもしれないな。


「王都から来る追手と戦う時に丘の上に陣取れれば、有利に戦えます。逆に向こうに丘の上を取られれば苦戦は免れません」


 高い場所の方が矢が遠くまで飛ぶから攻撃には有利。逆に高い場所を攻める場合、上から落ちて来る矢などに耐えながら登って行かなければならない。どちらが良いかなんて決まりきっている。


「今、カートレット将軍の先行隊が丘を抑えにかかっていますが、私達も出来るだけ……」


 ドッカーン!!!


 腹に響くようなこの音……大砲か!?


「なんじゃ?」

「丘の方からです!」


 轟音は数発で止まった。が、嫌な予感しかしないな……


「おかしい……王都から来たにしては早すぎる。それに大砲なんて持って来たならもっと時間がかかったはずなのに……」


「待ち伏せしてたのかな?」


 サラがそう言うと、リアは少し首を傾げた。


「ないとは言えないけど、将軍がこんなに早く反乱を鎮圧して戻ってくるなんて誰も思ってないはず。待ち伏せには早すぎると思うけど」


 リアがそう言うが早いか、伝令兵が俺達に将軍が来てほしいと言っていると伝えに来た。一体何が起こったんだ!?


 


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