#29 結論
(シデン視点)
ガン! ガン! ガン!
俺の木刀と将軍の木刀の軌跡がどんどん近づくにつろ、木刀同士がぶつかる音は徐々に激しさを増していく。
「……まさか決闘中に”剣舞“を真似るとはな!」
木刀を振るいながら将軍は吠えるようにそう言う……が、口元は何故かニヤついてる。
「だが、にわか仕込の”剣舞“では儂は倒せんぞ!」
そう言うと一層の力を込めて木刀を繰り出してくる。
(これだけ激しくぶつかってるのに木刀の軌跡が乱れないなんて……)
凄い腕力だ。体力といい、腕力といい、この人本当に人間か?
(凄い……本当に凄い)
え、俺? 既に死にそうだ。弾かれることで乱れた姿勢を戻すには力がいるのは勿論だが、将軍と違って剣舞をする時の体捌きはまだ完璧じゃないから木刀に力が上手く込められないんだよ。
(けど、こんな凄い見本が目の前にいるんだ。幾らでも学べる!)
木刀の振り方だけじゃなく、将軍の体を全体にまで目を向ける。そうすれば、もっとこの技の本質が……
ガン!!! ガン!!!
少しずつ……少しずつだが、ぶつかる音が変わり、俺の木刀が将軍の木刀を押し始める。だが、本当に少しずつだ。まだまだ学ばなければ追いつけな──
バキン!
唐突に裂けるような音、それと共に将軍の木刀が折れ曲がる。だが、俺も急には止まれな……
ピタ……
ふぅぅ。何とか剣は将軍の喉元で止められた。でも、残念だな。もっと見ていたかったのに
「貴様……名をシデンと言ったか」
げ……もしかして俺、怒られるの!?
「え、はい」
木刀を下げることも忘れてそう答えると将軍の体が小刻みに震えはじめる。そして……
「がっはっはっは! 面白い、面白いわ、お主は!」
将軍は笑い声と共に俺の体をバシバシと叩き始めた。
「儂の“剣舞”を真似るばかりか、この短時間で上回るとは……貴様どうなっとるんだ? 本当に人間か?」
いや、それはこっちのセリフだ……というか、地味に痛い。
「審判、判定は?」
成り行きを呆然と見ていたヘンリエッタさんは将軍の声にハッとして、俺の勝ちを宣言した。
「凄いです! シデンさん!」
リアが駆け寄ってくる。しかも、彼女だけじゃない。
「す、凄い試合でした! 感激しました!」
「あの無敗のカートレット将軍に勝ってしまうなんて!」
カートレット将軍やリアについてきた兵士達も口々に褒めてくれる。いや、勝ちと言っても本当にギリギリだぜ?
※
カートレット将軍との決闘に勝ってからというもの、俺達の扱いは劇的に変化した。今まではリアを助けた功績はあるものの、得体の知れないよそ者という扱いだったのだが、何と言うか今や……
「やれやれ。私達は期待の星って感じだね」
夕食時にヘンリエッタさんがやや困り顔でそう言った。ちなみに酒宴とまではいかないが、出されている食事は砦に残されていた食料を奮発して少し贅沢な感じになっている。
「悪い気はしないけど、凄いのはシデンだからね……私達に期待されても応えられるかどうか」
そう言いながらもヘンリエッタさんは声をかけてくる兵士に手を振って応えている。ヘンリエッタさん曰く、士気を上げるためには大事なことなんだとか。
(ヘンリエッタさんだって最初から将軍に褒められていたし、十分凄いんじゃ……)
が、口に出すのは憚られる。まぐれとは言え、無敗のカートレット将軍に勝ってしまった俺がそんなことを言ったら嫌味にしかならないからな。
「凄い人気ですね」
リアが飲み物を持ってきてくれた。ちなまにサラもクレアもそれぞれ人だかりに囲まれている。元々二人共目立っていたんだが、今回の件でさらに人が集まってしまった感じだな。
「何ていうか……ちょっと居心地悪いな」
ボソッと本音をこぼすとリアはクスッと笑った。
「意外です。シデンさんは人に注目されるのに慣れてると思ってました」
何でた?
(リアってちょっと天然なとこあるよな)
まあ、それも可愛──いや、何考えてるんだ、オレは!
「辺境にはエリザベス婆ちゃんとサラしかいなかったからな」
でも、充実した生活だったと思う。やってることは毎日同じだが、手応えを感じながら自分の理想を目指していく生活……それがあるから今の俺がある。
(けど、世の中は広いな……)
ゴーレムにドラゴン、それに将軍の振るった超人的な剣術……今まで想像さえしなかったものが辺境の外にはある。
(……返事、しなきゃな)
別に今じゃなくても良いんだろうけど、もう心は決まってる。俺はもう少し世界を見てみたい。凄いもの、見たことがないものに出会いに行きたいんだ。
「リア、この間の話だけど……」
後になって考えると、この時から俺の人生は勝ち組へと明確にシフトしたのかもしれない。
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