#27 急襲
「心を同調……」
聞き慣れない言葉だが、そう言えば昔、屋敷に住んでいた馬番から聞いたことがある。本当の意味で馬に乗るためには心を一つにする必要があると。
(父上も”人馬一体“とか何とか言ってたな)
ドラゴンの場合も似たものか? いや、空を飛ぶなら余計そうかも知れないな。
「心を合わせると言っても妾にはどうすればいいか分からぬ。何せ人を背に乗せるのは初めてじゃからな」
そうか。クレアなりに試行錯誤してるんだな。
「じゃからせめて体をくっつけて試しているのじゃ」
言わんとすることは分からないではないが、ちょっと方法が雑というか短絡的過ぎやしないか?
「シデンももっと協力せい! む……そう言えば妾だけが服を脱いでいてはいかんのかも」
は……?
「それにくっつけるのが胸だけというのがいかんのかも知れん。もっとがっつりくっつけば……あ、こら! 待つのじゃ!」
何やら良く分からないことを言いながらも近づいてくるクレアに得体の知れない悪寒を感じ、俺はとりあえずその場を全力で離脱した!
※
「随分お疲れだね、シデン」
「ヘンリエッタさん……」
クレアから逃げ回った結果、いつの間にか砦に戻っていた俺はヘンリエッタさんとばったりと出くわした。
「まあ、シデンは王女救出の第一功労者だしね。人気者は大変だ」
「いや、そう言うのじゃないから」
ヘンリエッタさんはニヤニヤ笑ってそうからかってくるが……本当にそう言うのじゃない。
「ヘンリエッタさんこそカートレット将軍から大歓迎だったじゃないですか」
ヘンリエッタさんからダルニシ平原に怪しげな研究所が建てられ、そしてそれを破壊したことを伝えられた将軍は手を叩いて称賛した。何でもこの話は何故か王都には全く届いておらず、放っておけばマルボレク要塞から王都に繋がる道が敵の手に渡っていたかもしれないというのだ。
(敵が外国と手を組むことまで考えていたらと思うとゾッとするな)
外国の侵入を許さぬ壁であるはずのマルボレク要塞は素通りされ、難所のダレク山脈も砦で休みながら進軍出来るのではもはや王都は丸裸も同然だ。
「そう言えばカートレット将軍が探し──」
ヘンリエッタさんが何かを言いかけたその時、かき消すような大声が辺りに響いた!
「ここにおったか!」
振り向くと完全武装のカートレット将軍がこちらへかけてくるのが見えた。
「よもや逃げたかと思ったが……見つけられてよかったぞ」
逃げた……? 何の話だ?
「カートレット将軍、一体何事でしょうか」
ヘンリエッタさんが驚いた──というよりやや引き気味の顔だ。ま、まあ俺だって似たようなものだろう。
「シデン、儂と決闘じゃ! 貴様の化けの皮を剥がしてやる!」
決闘?
(一体どうなってるんだ、これ?)
全く分からない。分からないけど、何だか断れない雰囲気だな。
「どうした、剣をとれ!」
え……真剣でやる気じゃないよな?
(ていうか、俺は剣が折れたままだ)
新しい剣を手に入れなきゃいけなかったが、バタバタしていてそんな時間がなかったのだ。
「将軍――! お待ち下さい――!」
遠くから騎馬が三騎走ってくる。そのうち一騎はみるみる間に近づいてきた。
「将……軍! せめて……こち……らで……」
気の毒くらい息を切らした騎士が差し出したのは二本の木刀。わざわざこれを?
「……確かに真剣はやりすぎか。分かった」
いやいや、そういう問題じゃないから。そもそも何で決闘なんてしなきゃなんないんだよ。
「ほら、好きな方を選べ。決闘の作法は知っておるだろ」
将軍がそう言うと、騎士が俺の前に木刀を出す。うーん、もうやることは決まっちゃってるんだ。
(……仕方ない、か)
全くもって腑に落ちない流れだが、抗えない流れに逆らっても仕方ない。ここは諦めてやるしかないか。
「……立会人は私が」
「良かろう」「よろしくお願いします」
ヘンリエッタさんの申し出をカートレット将軍と木刀をもってきた騎士が了承する。これで後は……何だっけか
(決闘はともかく、こう言う人と試合をするのは大分久しぶりだな)
辺境に行く前だから、子どもの頃以来だな。
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