#25 気持ち
「将軍、これには訳が……それにまずは王都に戻る算段をつけないと」
「むっ……確かに」
カートレット将軍の表情は一転し、思案げになる。この人にとって最優先なのはリアなんだろうな。
「皆で一旦砦に行きましょう。今までの経過も共有したいですし」
「……そうですな。ここまでの護衛に対する褒美も渡さねばなりませんしな」
そう言いつつもカートレット将軍は俺を睨んでくる。うーん、これは大分怒ってるな……
※
そんなこんなで予想外のトラブルとなった訳だが、砦についてからは特に何も起こらなかった。
(というより、俺達に構ってる暇がないのかも知れないが)
リアはずっと将軍と何処かの部屋で話をしている。ちなみに、俺達はめいめいに部屋を与えられ、今は待機中だ。
(それにしてもクレアがあんなことを言い出すなんてな)
クレアは”人間の常識を学んでくるのじゃ“などと言ってサラのところへ行っている。何でもドラゴンにも“郷に入れば郷に従え”みたいな掟があるらしい。
(供え物に手を出されて怒ったのもその掟と関係があるのかな……)
俺こそもっとドラゴンの……クレアのことを知らなきゃ行けないのかも知れない。
トントン
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。
「シデンさん、今ちょっとよろしいですか」
「いいよ」
返事をして現れたのはリアなのだが……
(!!!)
リアはいつの間にかドレスアップしていた。元々ずば抜けて整った容姿をしているリアだが、こうしているともはや現実味がないというか、何と言うか。
(……もう動く彫刻みたいだな)
表情がないとかそう言うネガティブな意味合いではなく……今まで俺達と一緒にいたリアと同一人物には思えない。
「……ちょっとびっくりしてもらえましたか?」
「ああ。似合ってるよ」
「ありがとうございます。こう言う格好は動きづらいのであまり好きではないんですが、将軍に言われて仕方なく……」
そう言って肩を竦める仕草はまさしく俺達が知るリア。そう、外見が多少変わってもリアはリアだもんな。
「でもシデンさんに褒めてもらえたなら苦労のかいもありました」
……!!!
(か、可愛い)
いや、落ちつけ俺!
(全く……こんなオッサンにそんな可愛い笑顔を向けるもんじゃないぞ)
リアのことだからその辺りのことは何も考えてないと思うが……まあ、もう少し自分の魅力を自覚した方がいいな。
「どうかしましたか、シデンさん?」
「いや、何でもない」
どちらかというとどうかしたのはリアの方だけど……
「改めてですが、ここまで送り届けていただきありがとうございました。王都に帰るまでまだまだ油断は出来ませんが、将軍とも合流出来ました」
道中聞いた話によれば、リアにとって将軍は単なる仲間や後ろ盾ではなく、幼い時から家族のように世話になった信頼出来る存在らしい。そんな身内同然の人と合流出来たんだから精神的にも楽になるよな。
「力になれて良かったよ。俺も助けた相手が道中殺られたとなれば寝覚めが悪いからな」
「ふふふ、シデンさんらしいですね」
リアが俺の言葉を聞いてクスクス笑う。女の子のクスクス笑いほどおじさんと縁遠いものはないが、リアのそれは全く嫌な感じがない。
「ところで、これからのことなんですが」
これから……そうか。元々俺とサラはリアを将軍の元に連れて行くために旅に出たんだった。
(……ってことはここで終わりか)
その瞬間、俺が感じたのは何と言う感情なのだろう。色々な思いが混ぜこぜになった不思議な感情……だが、一言で言えばそれは
(なんか寂しいな)
何が寂しいのかは分からない。が、リアと旅をして色々な人と出会ったり、色んな出来事があったりしたことを俺は楽しんでいたらしい。
(必死にやってただけだけど……振り返ると悪くなかったな)
辺境での暮らしも悪くなかった。が、今となってはあまり目新しさはない。もうこんな年齢だがら、別にそれでいいと思っていたが……
「将軍と合流できたとはいえ、本当に大変なのはこれからです。私を殺そうとした犯人はまだ分かっていませんし、あそこまで手の込んだことをした相手が簡単に諦めるとは思えません」
確かに……
(それに相手もそろそろ失敗に気づく頃だろう)
部下からの連絡がないこと、将軍のこれからの動き……相手がリアが生きていることに気づくための情報は山程ある。
「ですから、シデンさん達にもう少し助けて頂くことは出来ないでしょうか」
「!!!」
な、何だって!?
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