#21 決闘
駆けつけた俺達の目の前にあったのはあちこちから煙が立ち上る砦。もう中には人もあまり残っていないのか、人の気配もほとんど無い。
(逃げたのかな? いや……)
ヘンリエッタさんの話ではダラク山脈では幾つもの砦が道中にあり、それらは何らかの魔法で行き来出来るようになっているって話だった。だから、次の砦に行った可能性の方が高いな。
(待て待て、それよりも!)
何でこうなったか、だ!
「この砦は敵が来る可能性が一番高いから特に頑強だと聞いたんだけどね……」
ヘンリエッタさんの言う通り、砦は規模も造りも立派なものだ。それがここまで壊されるとは、まさか……
「人間技じゃないよ、シデン!」
「ああ」
だが、魔物でもここまでのことをやってのける力を持つ奴は中々いない。一体どんな奴なのか……
ドッカーン!
砦が再度爆発する! と、その時、爆炎から起き上がる影がちらりと見えた。
(翼……それに尻尾)
見えたのはそれだけ。やはり魔物か。
ビュッ!
影が空へと上がり、風切り音がする。これは気づかれたか!?
(サラ!)
”分かった!“
さっきつけていた念じただけで会話できる便利グッズを使って、サラに皆と隠れるように指示をする。
(くっ……こいつはまさか)
サラが皆と隠れるのと、それが姿を見せたのはほぼ同時。だが、現れた魔物……いや、存在はあまりにも想定外過ぎた。
(ドラゴンか!)
魔物の見本市みたいな辺境でさえ俺はドラゴンを見かけたことはない。何故ならドラゴンは魔力の吹き溜まる場所──いわゆる聖地に住む生き物。どこにでもいるような存在じゃないのだ。
(……しかもコイツは並じゃない)
ドラゴンのことはよく分からないが、そんな気がする。とにかく気を引き締めないと!
“まだ人間が残っていたか”
なっ、喋れるのか!
”妾との約定は破られた! 覚悟してもらうぞ、人間!“
ブン!
大気を横殴りにするような勢いで振られる尻尾を回避する。初手から後ろに下がるしかないってのは久しぶりだな。
(しかも、何て速さだよ……)
今まで魔物とはかなり戦ってきたつもりだが、こんなに速い奴はいなかったぞ。
“ほぅ……他の人間とは違うようじゃな。じゃがっ!”
ドラゴン立ち上がり、翼を数回振る。ぐっ……何て風圧!
(来る!)
だが、これはただの予備動作! 本命は……
“食らえ!”
ゴォォォ!
炎のブレスが辺りを焼きながら俺に迫る。くそ、攻撃範囲が広いな!
(逃げ場を無くす作戦か……頭いいな)
魔物らしくない……いや、ドラゴンは魔物じゃなかったか。
ダッ!
俺は覚悟を決め、ドラゴンの方へ突っ込んだ。懐に飛び込めばブレスは届かない。それに……
(剣士だし、どの道近づかなきゃな)
ブレスを紙一重で避けながら剣を突き出す。が……
ザグザグ……ボキッ!
あ、剣が!?
(しまった!)
俺の剣はドラゴンの鱗を少し裂いただけで折れてしまった。
”フハハハ! ブレスを避けた時は驚いたが……残念だったな! 我が鱗を裂くとはさぞかし名のある剣なのだろうが、それが限界であろう!“
いや、使い古した銅の剣だけど……
“シデン、受け取って!”
サラの合図と共に剣が足元に投げこまれる。これはヘンリエッタさんの剣か。
”ほう……仲間がいるのか。なのに一対一を選ぶとは中々の気骨じゃ“
いや、完全にこっちの都合だし、なんならサラの援護を期待してるけど。
“凡百の無礼な人間と同じ扱いをして済まなかったな、勇者。そなたは妾の前に立つだけの資格を持った人間じゃ”
いやいや、評価高すぎでしょ。俺はただのしがないオッサンだよ!
“決闘じゃ、勇者! その剣で我が角を折ってみよ! さすれば妾はそなたに従おう!“
オイオイ、何か話が大きくなってないか!?
(けど、倒さないと先には進めないか……)
倒すよりも角を折る方がマシだろう。多分だけど。
“行くぞ、勇者よ!”
俺が剣を握った瞬間、ドラゴンは動き出した。多分それを待っていたんだろう。決闘って言ってたしな。
ブン!
再び尻尾の攻撃! しかし、さっきよりも更に早く、動きがコンパクトだ。
ダッ!
俺は再び懐に飛び込む。ワンパターンかも知れないが、これしか俺には活路を開く方法がないのだ。
”恐れず飛び込むとは流石!“
言いながらもドラゴンは鉤爪を振るってくる。それをかわしながら俺はあることに気づいた。
(力任せじゃなく、俺の動ける範囲を削りに来てるな)
俺にある唯一有利な点は小回りがきくこと。それがなくなって正面衝突するしか無くなれば、図体の大きいドラゴンが勝つに決まってる。
(こいつは魔物だと考えて戦わない方がいいな)
むしろ人間だと考えた方が良い。まあ、対人戦の経験は辺境に行くまでしかないからあんまり多い訳じゃないが……
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