2.ゼクスに抱く違和感。
「え、あれ……ここ、は?」
「あぁ、やっと起きたのか。ゼクス」
ひとまず配信を中止して。
鼻血を出しながら意識を失ったゼクスを実家まで運び、介抱すること小一時間。彼はどこか憑き物が落ちたような表情で目を覚まし、周囲をきょろきょろと確認していた。
しかし傍にいるのが俺だと分かると、途端に顔色を変える。
「な、なんや……介抱してくれたんは、オッサンかい!」
「はいはい。俺で悪かったな」
ケタケタと軽薄に笑い、ゼクスはこちらを小馬鹿にしてきた。
それを俺は適当にあしらいながら、訊ねる。
「体調は大丈夫そうか?」
「なに言うてんねん。オレはピンピンしとるで!」
すると彼は答えるが、しかし――。
「いいや、そういうのいいから」
「あ……?」
俺はそのノリにあえて乗らず、真っすぐにゼクスを見た。
どこか怪訝そうな表情を浮かべる彼に対して、告げる。
「そうやって、無理に振る舞わなくていいんだよ。……カメラは回ってない」
「なにが言いたいんや、オッサン! オレは別に、無理なんて――」
「――目、笑ってない」
「……え?」
ずっと抱いていた違和感の正体を。
「他の配信でもそうだよ。ゼクスの目は、ちっとも笑ってない」――と。
◆
――一方その頃、温泉回を見終えたリスナーたち。
『音声だけだったけど、何があったんだ?』
『ゼクスがどうのこうの言ってたけど、アイツなにかやったんか』
『見るからに軽薄そうな奴だったからな』
彼らは掲示板で、今日の配信について話していた。
その中で話題に上がるのはやはり、配信を中断することになった原因について。映像のないラジオ配信ではあったが、達治たちがバタバタとしている様子は確認できた。
それによって様々な憶測が飛び交っていたが、大半の意見はゼクスに関してだ。
『アイツ、見るからにチャラかったからな。もしかしたら、リョウちゃんたちに何かやったのかも』
『だとしたら、マジで許せないんだが?』
『俺のリョウちゃんに手を出したら、マジで処す』
そこに書かれている内容はやはり、彼の素行についてが多い。
しかし住人たちも、それとなく違和感を覚える者がいないわけではないらしい。
『でも、さ。言葉では説明が難しいんだけど――』
雑多な中には、こんなコメントもあった。
『初めて見たはずなのに、なぜかゼクスのこと知ってる気がするんだよな』
『分かる。知ってるというか、似た空気を感じるというか?』
『似た空気って、あのお調子者と俺らに接点なくね』
だが、どうにも核心には遠い。
そのため重要とは捉えられないが、それでも共感する者はいた。ゼクスという人物の為人、それについて考え始める住人たち。次第にスレの話題はそちらに移行して、しばらく経過したところで誰かがこんな書き込みをするのだった。
『そういや、前から疑問だったんだけど』
まるで関係のないような。
ただ、それにしては的を射た内容を。
『どうしてアクシズのメンバーで、ゼクスだけ【数字が飛んでる】んだ?』
何気なく投げられた疑問。
スレの住人たちはみな、首を傾げるのだった。
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